「ジェニファ 涙石の恋」('03) | Marc のぷーたろー日記

「ジェニファ 涙石の恋」('03)

涙石の恋 ジェニファ
¥3,938
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ジェニファー・ホームズさん、山田孝之さん主演の日米合作による童話のようなラブストーリーです。共演は浅見れいなさん、高橋ひとみさん、遠藤憲一さん他。音楽は韓国で人気の倉本裕基さん。ストーリーは、日本に留学経験のある主演のジェニファー・ホームズさんの実体験が原案になっているそうです。
この映画は 2003年6月から7月にかけて撮影され、2004年6月に公開されたのですが、撮影から公開までの間で、山田孝之君がドラマ「ウォーターボーイズ」('03) などでブレイクしたこともあって、当初の予定を変更して、公開時は「山田孝之主演」をかなり前面に出した形で宣伝されたようです。
Wikipedia「ジェニファ 涙石の恋」

まず、感想を一言。



ひっじょーにもったいない作品でした。



映画初主演となる山田孝之君の演技は良いのに、それが全く活かされていないし、また脇のキャストも充実しているのに、映画全体がちぐはぐで中途半端。作り手側が何を描きたかったのかが分からないのです。

主演のジェニファーの実体験を基にしたファンタジー映画を撮りたかったのは分かりますが、日米のスタッフ間の意思の疎通が上手くいかなかったのか、焦点が完璧にぼやけてしまっていますし、そもそも脚本が全く練られていないのがありあり。特にファンタジー部分の設定は手を抜いたとしか思えません。

例えば、ジェニファ (ジェニファー) の童話のような設定は矛盾だらけで意味不明。また隆志 (山田君) の物語は暗く切なく表現されているのに、合間に挿入される他のシーンが極端に明るくコミカルなため、ギャップがありすぎて、単一の作品としてのまとまりが全くない。

そして、いくら「ジェニファーありき」の映画とは言え、ジェニファ役にジェニファーが全く合っていないのが致命的。年齢から言っても 20歳をとうに過ぎている白人女性には無茶な役で、もっと幼い容姿で、しかも神秘的な雰囲気と無邪気さを併せ持った「少女」でなければ、この役に説得力はありません。

特に気になったのはキスシーン。ジェニファーが「大人の容姿」であるために、クライマックスでの山田君とのキスシーンが (いくら激しいディープキスとは言え) エロすぎて「年増女が少年を食ってる」ように見え、一瞬「この映画はホラー映画か?!」と思ってしまったくらい (^^;;;

このヒロインは、白人女性である必要はなくて、例えば蒼井優ちゃんあたりが演じていたら、しっくり来ると思うんです。

とは言うものの、山田君のファンならば観て損のない映画だとは思います。

山田君は、初主演ドラマ「ウォーターボーイズ」('03) と掛け持ちでの撮影だったようですが、「ウォーターボーイズ」での爽やかで健康的な役柄とは真逆の、暗い過去を背負って心を閉ざした少年役は本当にピッタリ。絶望的な孤独感の表現は見事で、このダメダメな映画がかろうじて「映画」として成立しているのは 100% 山田君の説得力のある演技のおかげと言っても過言ではありません。

ただ、残念なのは脚本の拙さ。いくら山田君の声が良くてナレーションが上手いとは言っても、山田君によるナレーションが必要以上に説明し過ぎ。また、隆志があっさりとジェニファに自分の過去を語るのも不自然。結局、そのような「説明過多」のせいで、せっかくの山田君の抑えた演技、しゃべらない演技、表情だけの演技が活きて来ないんです。ホント、もったいない…。

ところで、この映画を観るまで、山田君の本格的なメロ演技は「世界の中心で、愛をさけぶ」('04) が初めてだと思っていたのですが、その 1年も前に、こんな純愛映画の主人公を演じていて、しかも「白夜行」('06)「手紙」('06) で見せた「重い十字架を背負った」役もこの映画で既に経験済みだったとは…。

撮影当時 19歳の山田君に、後の当たり役とイメージの重なる役を演じさせたという点では、三枝健起監督の目は確かだったようです。ここだけは評価できます(苦笑)

とにかく「俳優・山田孝之」のファンならば、山田君の演技の変遷、成長を知る上で、観て損のない映画だと思います (^^)v