「世界の中心で、愛をさけぶ」('04) ※ドラマ版
- ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 世界の中心で、愛をさけぶ DVD-BOX
山田孝之さん、綾瀬はるかさん主演の傑作ラブストーリーです。
→ Wikipedia「世界の中心で、愛をさけぶ」
→ ザテレビジョン第42回ドラマアカデミー賞
何となく今「マイブーム」が山田くんなのと、「白夜行」('06) であまりに悲しすぎる山田くんとはるかちゃんを観たので、少しでも明るく幸せな 2人の姿が観たくて、3年ぶりに全話を観直してみました。
このドラマは、放送当時、録画したものを何度も観ましたし、またドラマで第1話から最終回まで全話で「号泣」してしまったのは、これが初めての経験でした。それだけに思い入れが強く、語りたいことは山のようにあります。
しかし、この 3年ほどは、DVD-BOX の特典映像を観るくらいで、ドラマ本編を観ることはほとんどなかったのですが、今回改めて観て、その色褪せない魅力に感動を新たにしました。
この作品が日本のみならず、海外でも高い評価を得ているのは、やはり脚本の森下佳子さんによる、原作とも映画とも異なるオリジナルストーリーにあるのではないかと思います。
もちろん、映像の美しさ、演出の繊細さ、俳優陣の渾身の演技が素晴らしいのは言うまでもないのですが、今回改めて少し冷静な視点で観て、このドラマの非常によく練られた脚本と物語全体の構成に「感服」したのです。
原作は読んでいないので聞きかじりの話になりますが、「世界の中心で、愛をさけぶ」という小説は、もともと作者の片山恭一さんが考えていたタイトルが「恋するソクラテス」であったことが示すように、本来は哲学的なテーマを扱った作品と言われています。
タイトルが「世界の中心で、愛をさけぶ」となったことで、単純な「難病を扱った悲恋モノ」のイメージになってしまい、映画版 もそのイメージで大ヒットしたように思います。またこのドラマに対しても、観ていない方は同じようなイメージを抱いているのではないかと思います。
ところがドラマ版は、脚本の森下さんによるオリジナルの世界観で、「生きるということは?」、そして「死ぬということは?」といったテーマが、主人公をはじめとする登場人物たちのセリフの中で、かなり真正面から描かれているのです。
また、このテーマは、朔太郎 (山田孝之くん) と亜紀 (綾瀬はるかさん) が惹かれあうきっかけとなるのが「葬式」であることや、朔太郎の祖父 (仲代達矢さん) の遺骨にまつわるエピソードなど、物語が常に「死」というものに覆われているところにも象徴的に現れています。
更に、朔太郎が亜紀の死後、17年もの長きに渡って亜紀の骨を持ち歩いていた理由が、誰もが考える「亜紀 (が生きていたこと、共に過ごした日々) を忘れないため」ではないことが、徐々に明らかになっていく展開は、謎解きのミステリーのような構成の巧みさがありますし、同時に森下さんの死生観が端的に現れているように感じます。
このように今回改めてこのドラマの素晴らしさを再確認することができましたが、同時に放送当時に感じていた「違和感」も再確認してしまいました…。
役者たちの熱演ぶりが高評価の本作ですが、必要以上に「力が入りすぎている」場面があったことも事実です。
主演の山田くんにもそういう部分がありましたが、それ以上に僕が最後まで馴染めなかったベテラン(?)女優さんがいて、そこは今回改めて観ても、「もうちょっと何とかならなかったのかなぁ…」と残念でなりません。
それでも役者さんたちのレベルは極めて高く、派手さはありませんが、手堅いキャスティングだったと思います。
主演の山田くんとはるかちゃんの文字通り「魂の入った」熱演には何度も胸を打たれましたし、また主人公それぞれの父親を演じた三浦友和さんと高橋克実さんの控えめな演技も強く印象に残りました。
亜紀の父親を演じた三浦友和さんの、頑固で上昇志向の強い「立派な男」が娘の難病に動揺する姿は静かでいながら生々しく、一方、朔太郎の父親を演じた高橋克実さんの、のんきで冴えないようでいながら常に息子を温かく、そして力強く見守る姿は深く心に沁みました。
また父親だけでなく、母親の描き分けも的確で、まさにこの両親だからこういう息子、娘に育つんだなと思わせる説得力がありました。
そして今回改めて発見したのは、山田くんの両親役を高橋克実さんと大島さと子さんが演じたのはベストキャスティングだなぁということ。というのは、山田くんの、丸顔でもっさりとした素朴な雰囲気は高橋さんとそっくりだし、また濃くてはっきりした顔立ちは大島さんとそっくり。高橋さんと大島さんの間に息子がいたら、本当に山田くんのような子が生まれそうな感じがするんです。できればまたこの 3人で親子役を演じて欲しいくらい (^^)
他にも 17年後の朔太郎を演じた緒形直人さんの演技にも注目です。
よく観ると、普段の緒形さんの演技スタイルとは全く違うんです。明らかに山田くんの演技を意識したものになっていて、しゃべり方から声のトーン、仕草や表情など、山田くんの朔太郎をきちんと「踏襲」しているんです。素朴な雰囲気が似ているとは言え、顔立ちが全く異なる緒形さんと山田くん。確かに最後まで「違和感」があったことは事実ですが、それでも 17年の年月を経た同一人物に何となく見えてしまうのは、明らかに緒形さんの努力の賜物だと思います。
最後に、主演の山田くんとはるかちゃんについて。
改めてこの 2人は、近年まれに見る「ベストコンビ」だと思いました。見た目は全然似てないし、真逆なタイプ。野暮ったくて垢抜けない山田くんと、清潔感あふれ、聖母や女神のような神々しい美しさをたたえたはるかちゃん。でも、この「真逆」な感じが「いいハーモニー」を生んでいて、これほど「純愛」を説得力を持って演じられるコンビは他にいないんじゃないかと思うんです。山田くんもはるかちゃんも、昔は珍しくなかったのでしょうが、今の同年代の俳優の中では、もはやほとんど見かけることがなくなった、クラシカルな雰囲気がありますからね。
それに、山田くんもはるかちゃんも別の役者さんを相手にラブストーリーを演じていますし、もちろんそれも悪くはないんですが、やはり「しっくりくる」のは山田くんとはるかちゃんのコンビ。「白夜行」('06) が (ドラマファンを中心に) 評価されているのも、山田くんとはるかちゃんのコンビによるところが大きいと思います。
ところで、「白夜行」では 2人の幸せなシーンが、エンディング映像でしか観られませんでしたが、「世界の中心で、愛をさけぶ」の前半第5話までは、観ている方が恥ずかしくなってしまうような、可愛らしくて微笑ましい姿が満載。あまりの愛くるしさに自然に頬が緩みます (^^)
のんきな、でも意外にしっかりしているサクちゃんと、しっかり者の、でも意外に抜けているアキちゃん。本当に可愛らしい 2人で、そんな 2人の対照的なキャラクターが、無人島でのエピソードに如実に示されています。
甲斐甲斐しく料理を手際よく用意するサクちゃんと、料理は全くダメのアキちゃん。夢は「アキとずっと一緒にいること」なんて言っちゃうのんきなサクちゃんと、絵本を作るために世界を飛び回ることが夢というしっかり者のアキちゃん。きっと結婚したら、アキちゃんがバリバリ働いて、サクちゃんは「主夫」になるんだろうなぁと簡単に想像できてしまう、そんな幸せいっぱいの 2人。
でも同時に、その後を知っているだけに 2人の幸せな姿が明るく幸せであればあるほどに切なくなってくる…。今回の視聴では、終盤の悲しいシーンよりも、むしろ前半の幸せなシーンの方で、知らず知らずのうちに涙が流れていることが多かったのです。
「世界の中心で、愛をさけぶ」、「白夜行」 と 2作続けて悲しい物語だっただけに、次は山田くんとはるかちゃんが幸せなハッピーエンドを迎えるような物語が観たいです。
例えば、韓国映画の「猟奇的な彼女」('01)を 2人で演じて欲しいなぁって思うんです。
この 4月から草なぎ剛さんと田中麗奈さん主演でドラマ化されることになっていますが、何となく山田くんとはるかちゃんの方が合っているような気がするんです。山田くんは元々ドン臭い男の子役は得意だし、はるかちゃんも「白夜行」での悪女役がはまっていましたし、彼女なら「ぶっ殺す!」というセリフもチャーミングに見えると思うし♪
とにかく、「猟奇的な彼女」そのままとは言いませんが、こんな感じのラブコメディを山田くんとはるかちゃんで作ってくれないかなぁ (^o^)
あまりに語りたいことが多すぎて、取り留めのない「感想」になってしまいました (^^;;;
このドラマは、とてもとても悲しい物語でしたが、爽やかな終わり方とラストシーンの息を呑む美しさなど、僕にとって一生忘れることのできない作品です。
このドラマの、少々感傷的に過ぎる部分や主人公の自己満足的な姿は、女性よりは男性のほうが共感できるような気がします。特に 1980年代に 10代を過ごした男性なら、何かしら感じるところがあると思います。まだご覧になっていない 30代から 40代の男性には是非ともお薦めしたいドラマです (^^)
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