「そのときは彼によろしく」('07) | Marc のぷーたろー日記

「そのときは彼によろしく」('07)

東宝
そのときは彼によろしく スタンダード・エディション

「いま、会いにゆきます」で知られる作家・市川拓司さんによる恋愛小説を、山田孝之さんと長澤まさみさんの主演で映画化した作品です。共演は塚本高史さん、国仲涼子さん、小日向文世さん、和久井映見さん他。監督は本作が映画第一作目となる平川雄一朗さん。
平川雄一朗さんはドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」('04)「白夜行」('06) などの演出家として知られています。因みに映画 2作目は、先日公開された劇団ひとりさん原作の「陰日向に咲く」です。
平川監督、山田孝之くん主演、更に主題歌が柴咲コウさんという組み合わせはドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」('04)「白夜行」('06) に続いて 3作目。そんなこともあってちょっと期待して観ました。

感想を一言で言えば、



とにかく美しい映画



良くも悪くも感受性の強い平川監督らしい作品です。美しい自然を瑞々しく映した映像と情感あふれる繊細な演出がとても印象的。

主演の長澤まさみちゃんと山田孝之くんも、2人がそれぞれ最も得意(?)とする役なので、新鮮味は全くないですが、安心して観られます。

芯がしっかりして、ちょっと小悪魔的な魅力のある女の子と、純朴で優しいけれど、ちょっと鈍臭い男の子は、まさに 2人の出世作である「世界の中心で、愛をさけぶ」で演じた役のイメージそのまま。映画版のアキとドラマ版のサクを組ませたような感じです。

また、長澤まさみちゃんは身長が高いので、小柄な山田くんと並ぶと、まさに「男の子を振り回している女の子」って感じですし (^^)v
でも抱き合うシーンでまさみちゃんが思いっきり膝を曲げていたのはちょっと気の毒でした (^^;;;
ただ、他人に勧められるほどの映画かと言われると、ちょっと悩みます。

基本的に現実感の全くない「ファンタジー」なので、まずその世界観になじめる人でなければ、視聴は辛いと思います。しかし、そのような世界観になじめる人でも、この映画の「限度を超えた虚構性」に違和感を感じる人は少なくないのではないかと思います。特に最後の「オチ」はいくら何でもありえない。それまでは、ところどころ山田くんの「泣き」の演技で涙腺をかなり刺激されましたが、あのオチですっかり醒めてしまいました…。展開自体は「アリ」だと思いますが、同じ展開でも、もう少し違う見せ方はあるだろうに…。また、エンディングにかかる柴咲コウさんによる主題歌「Prism」も曲調が作品世界に合っていないために、より一層シラケたムードに…。

それに、本来重要な役回りのはずの佑司 (塚本高史さん) の位置づけが中途半端で、極端に言えば、いなくても物語として成立していたんじゃないかというくらい。それに塚本高史さんのきつめの顔立ちは役のイメージに全然合っていないし…。

他にも、この映画で違和感を感じたのは、「ちゅらさん」で山田くんの姉を演じていた国仲涼子さんが、山田くん演じる智史に想いを寄せている美咲を演じていたこと。国仲涼子さんは実年齢よりも若く見えるので、山田くんと並んでもビジュアル面で違和感があるわけではないのですが、どうしても姉と弟のイメージが拭えなくて…。これはもうちょっとキャスティングを考えても良かったんじゃないかなぁと思います。どうしても国仲涼子さんでなくてはいけない役というわけではないし。

そして (些末なことではあるのですが) 気になったのは、この映画が長澤まさみちゃん主演でその相手役が山田くんという宣伝のされ方をしていること。実際に映画を観れば分かりますが、主演は誰がどう観ても山田くんであり、長澤まさみちゃんはその相手役。もともと長澤まさみちゃんありきの企画で、興行的な狙いもあって彼女を前面に出したんでしょうが、エンドクレジットでも長澤まさみちゃんの方が先に名前が表示されるのにはかなり違和感がありました。ま、こんなことはよくある話ではあるんですけどね…。

いろいろと不満な点はありますが、美しい映像と音楽、山田くんの演技、これだけでも観る価値はあると思います。ただ、ストーリーに起伏が少ないので途中で寝ちゃう人も多いかもしれませんが (^^;;;

どちらかというと熱演型の山田くんが、この映画では全体的に抑えめの演技で、それによって終盤の「泣き」のシーンが活きてくるんですが、その「泣き」の巧さは流石です。やっぱり山田くんの「純愛演技」は何度観ても僕のツボにはまりますグッド!

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