「イノセンス」('04) | Marc のぷーたろー日記

「イノセンス」('04)

ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
イノセンス スタンダード版

海外でも大ヒットした映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」('95) の続編であり、また第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にも出品された、押井守監督のアニメーション映画です。

Wikipedia「イノセンス」

公開当時、そのあまりの難解さから賛否両論、というよりもむしろ一般の評価では否定的なものの方が多かった作品で、かなりの予算で制作されたにもかかわらず、興行的には決して成功したとは言えない作品です。

以前から「難解だ」ということばかり聞いていたこともあり、これまであまり食指は動かなかったのですが、「たまには難解なものも観てみるか」ということで、ちょっと気合を入れて観てみました。

気合を入れて観たので、視聴後は少々疲れましたが、そんなに難解じゃないじゃんというのが素直な感想。

確かに哲学的で抽象的・観念的なセリフが多く、演出上も「分かりづらい」表現が多いことは事実ですが、それは物語世界を表現するための「修飾」に過ぎず、作品のテーマ自体は、押井監督が、映画「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」('84) 以降、一貫して描き続けてきた「夢 (=虚構) と現実のあいまいさ = 生きていること、存在のあいまいさ」であり、そのテーマをかなりストレートに表現している作品だと思います。

Wikipedia「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」

少なくとも「天使のたまご」('86) よりは遥かに分かりやすいでしょう。

Wikipedia「天使のたまご」

「天使のたまご」は芸術性だけが評価され、娯楽性は全くないと言われていますが、僕は押井監督作品の中では比較的好きな作品で、何度も観返しているくらい (^^)v

そんなこともあり、「イノセンス」は難解で観念的な映画ではなく、むしろ「SF」「アクション」「刑事モノ」といった娯楽映画の要素がふんだんに盛り込まれたエンタテイメント性の高い映画だと感じました。

押井監督独特のセリフと演出のために、実際以上に難解な映画と誤解されているような気がします。

登場人物たちが語る、観念的で哲学的なセリフは、もちろん噛み締めればテーマとの関連性が分かるのでしょうが、最初にこの映画を観るときには、聞き流してしまってもストーリーを追う上では全く問題ありません。

あの独特のセリフたちは、2度 3度観てはじめて理解できるものなので、初見から理解しようとすれば、わけが分からなくなってしまうのも当然だと思います。押井監督作品はそもそも「何度も観てもらう」ことを前提に作られているので、1回目の見方と 2回目以降の見方というものがあるのです。

この映画を観て「わけ分かんねぇ~!!」と感じた人も、表面的な難解さ (セリフ、演出) に惑わされることなく、純粋にストーリーに集中して観れば、この映画の面白さが分かるのではないかと思います。
でも、そもそもそういう「努力」を観る側に要求する時点で、監督の「ひとりよがり」とも言えますけどね (^^;;;
それに内容は理解しなくても、圧倒的な映像の迫力だけでも観る価値はあると思います。まさに「動く絵画」とも言うべきシーンの数々に息を呑むことしばしば。

でもその割に、セル画で描かれた人物はちょっと安っぽかったかな…。

これについては監督は「あえてそうした」と語っているようですけど (^^;;;