「春が来れば」('04) | Marc のぷーたろー日記

「春が来れば」('04)

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
春が来れば デラックス・コレクターズ・エディション

チェ・ミンシクさん主演のハートフルな物語です。

輝国山人の韓国映画「春が来れば」

全編通して、何らドラマティックな出来事も感情が大いに高ぶるようなエピソードもなく、観る前は「スウィングガールズ」('04) や「フラガール」('06) のような爽快なクライマックスを想定していたのですが、それすら全くなく、終わり方も驚くほどあっさりとしています。しかし、いかにも「感動的」と言えるようなシーンを一切排除したことで、感激の涙はありませんでしたが、かえってしみじみと心に沁みて来るものがあり、観ているときよりも、観終わった後にじわじわ来る感じがありました。

エキセントリックな役が多いチェ・ミンシクさんの平凡な男役は、はじめのうち違和感を感じましたが、そこは演技派だけあって、抑えた演技の自然さにすぐに馴染むことができました。

ただ役の設定から言うと、本当はもっと若い俳優さんの方が合っていると思うんですが、もし他の役者さんが演じていたら、この独特の世界観は出せなかったのではないかと考えると、やはりこのキャスティングで良かったんだなぁと思えてきます。

そして、この映画は脇役もとても充実しています。

「台風太陽」('05) でカリスマスケーター・モギを演じたキム・ガンウさんが一転して、純朴な田舎の青年を好演しています。

また、「ファッション70's」('05) でドンヨン (チュ・ジンモさん) の父を重厚感たっぷりに演じていたチェ・イルファさんが炭鉱で働く父親役で出演しています。登場シーンはとても少ないのですが、存在感たっぷりでかなり印象に強く残りました。

他にも「殺人の追憶」('03) や「大統領の理髪師」('04)「グエムル 漢江の怪物」('06) で強い印象を残していた名子役イ・ジェウン君をはじめ、その祖母役のキム・ヨンオクさん、主人公の母親役のユン・ヨジョンさん、主人公のかつての恋人役のキム・ホジョンさん、親友ギョンス役のチャン・ヒョンソンさんなども、派手さはありませんが手堅い演技で魅せてくれます。

「どきどきわくわく」といった面白さはありませんが、ゆったりとのんびりした穏やかで優しい気分に浸りたいときにお薦めしたい映画です。