ポーランドと韓国 | Marc のぷーたろー日記

ポーランドと韓国

'98年に仕事でポーランドの首都ワルシャワに 2ヶ月半ほど住んでいたことがあります。実はそれから遡ること 4年前、'94年に初めてポーランドに行った際に、わずか 1週間の滞在だったにもかかわらず、ポーランドの素晴らしさに感激して、いつかもう一度ポーランドに行きたいと思っていたのです。そしてたまたま偶然ポーランドでの仕事のチャンスを見付け、半ば強引にその仕事を GET したのでした。

ポーランドの素晴らしさは、何と言ってもまずは街並の美しさです。特に中世の街並が特徴的です。西ヨーロッパとは明らかに違う色彩で装飾されており、何と「パステルカラー」。厳密に言うと「パステルカラー」をちょっとくすませた色で建物の壁が塗られているのです。ピンク、緑、オレンジなど日本人の感覚では「おとぎの国」のような色の建物たち。一目で気に入ってしまいました。

そしてもう一つの素晴らしさは、ポーランドの人々。いつもしかめっ面しているのでちょっと怖そうですが、そこは農耕民族、しかもヨーロッパの田舎。皆素朴で優しい人たちばかり。さすがにワルシャワ中心部は普通の都会なので東京と違いはありませんが、地元の人が行くような食堂やスーパーのオバちゃんたちはとにかく気のいい人たちばかり。拙い僕の (英語まじりの) ポーランド語を一生懸命理解しようとしてくれるのが本当に嬉しかった (^^)

そんなポーランドで 2ヶ月半暮らした中で、ポーランド人の気質というものについて随分学ぶことができました。そしてその気質を形成するのに大きく影響したであろう歴史的、地理的背景なども。そして今、韓国について学んでいる中で韓国とポーランドにはかなりの類似点があることに気が付いたのです。僕の気付いた範囲で挙げてみます。

地理的に大国に挟まれていることから来る自国の文化への強い誇り。
ポーランドはロシアとドイツ、韓国 (朝鮮半島) は中国と日本という大国に挟まれています。そのため歴史的に常に両大国からの侵略の脅威に常にさらされている状態でした。実際に地図上から国が無くなった時期もありました。当然、その時期には言葉をはじめとした固有の文化を否定されたりしていたわけですが、それでも彼らは自分たちの文化を絶やすことなく、守り続けてきました。それ故に自国の文化に対する誇りがとても強いのです。特に言語へのこだわりはかなりのものがあると思われます。ポーランド語は世界的にみてもかなり難解な言語の 1つですが、韓国語も同様に難解だと思います。そしてポーランド人も韓国人も自国の言語が (自国民にとっても) 難解であることをよく自覚しているので、外国人が (たとえ挨拶に毛の生えた程度でも) しゃべると、ビックリするくらい驚き、感激してくれるのです。ポーランド滞在中は、ちょっとした日常会話くらいはできたのですが、僕が少しでもしゃべると「こいつはポーランド語がしゃべれる、スゴい!」と感動して、一気に次々と話されてしまって、逆に困ったこともありました (^^;;;

基本的にのんびりしているのに何故かせっかち。
ポーランド人も韓国人も時間にはルーズです。むしろ日本人がきっちりし過ぎているのかも知れませんが、約束の時間に 30分遅れるのは当たり前。ドイツ人も日本人と同じ気質なので、ポーランドで働くドイツ人はかなりイライラするみたいです。同様に韓国で働く日本人が一番イライラするのもこの点のようです。
韓国については分かりませんが、ポーランドの場合、そののんびりした国民性のためにロシアに滅ぼされたということが指摘されています。このあたりは池田理代子さんの漫画「天の涯(はて)まで」をご覧いただけるとよく分かると思います。ポーランドの悲劇についてかなりしっかり描かれています。
天の涯(はて)まで―ポーランド秘史 (1)
天の涯(はて)まで―ポーランド秘史 (2)
その一方でびっくりするほどせっかちです。韓国人のせっかちさも有名ですが、ポーランド人も負けていません。ポーランドの地下鉄では駅のホームの端に次の電車が来るまでのカウントダウンが表示されていたり、信号待ちでイライラして、信号無視をするのは当たり前。とにかく「待たされる」ことが嫌いみたいです。「時間にルーズなのにせっかち」というポーランド人と韓国人の気質は僕には全く理解できません。

酒好き。
ポーランドも韓国もどちらも寒い国です。日本で言うと北海道くらいのイメージでしょうか。でも雪はあまり積もりません。こんな気候が似ているせいか、お酒も似ています。韓国と言えば「焼酎」ですが、ポーランドは「ウォッカ」。庶民的な安いものから高級なものまでブランドは豊富です。特にポーランドの名物と言えば、ジュブルと呼ばれる長寿の野牛が好んで食べると言うジュブル草で香り付けをしてあるウォッカ「ジュブロッカ (ジュブルフカ)」が有名です。とにかくウォッカは、韓国の「焼酎」同様、「蒸留酒」でアルコール度数が高く「暖を取る」目的もあるようです。またポーランド人も韓国人も「酒が呑めなきゃ一人前の男とは言えない」んだそうです (^^;;; そして日本酒のようにチビチビ呑んでもダメ。小さいコップ (カップ) で一気呑みが基本。更に進めば小瓶で一気呑みも当たり前。とにかくポーランド人にしろ韓国人にしろ、お酒の席で「呑める」ことを示すと一気に親しくなれるところは全く一緒ですね。因みに僕は日本人としてはかなり強い方なので、ポーランドでも苦労せずに地元の人たちと仲良くなれました (^^)v

逞しいオバちゃんたち。
韓国のアジュンマたちの逞しさは有名ですが、実はポーランドは「かかあ天下」で有名な国らしいです。東ヨーロッパでは、理想の逞しい母親のたとえとして「ポーランドの母親」という言葉があると聞いたことがあります。ポーランドでは昔から「夫は怠け者。家計を支え、家族を養うのは妻」なんだそうです。そんな強く逞しい妻に尻を叩かれて、ようやく夫が働く、ということらしいです。確かに街中の商店や食堂など昔からありそうなお店で働いているのはオバちゃんたち。歴史的にそういう文化なんですね。


このようによく似ているポーランドと韓国ですが、次にポーランドと韓国の関係についても紹介しておきます。僕がポーランドに滞在していたときによく目にしていたのは韓国の自動車会社の工場、しかもかなり大規模な工場でした。ヨーロッパ市場の拠点として人件費の安いポーランドに目をつけたようです。その関係でポーランド、特にワルシャワには韓国人が多く住んでおり、韓国人が経営する本格的な韓国料理屋さんがかなり多くありました。何度かそういった韓国料理屋にも行きましたが、既にポーランド社会に韓国コミュニティが出来上がっている雰囲気がありましたね。またポーランドと韓国の間のビザなし渡航が可能になったのは日本よりも早かったようです。

では現地ポーランドの人たちの韓国や韓国人に対する印象はどうなのでしょうか? 僕が滞在していた '98年当時の印象はあまり良くなかったようです。外国での韓国人のマナーの悪さはよく指摘されていますが、ポーランドでも同じだったようです。確かに街中でも我が物顔で歩いている韓国人をよく見かけましたが、あれは同じアジア人としてはかなり恥ずかしいものがありました… そんなこともあって当時、僕も韓国人に対してはあまりいい印象を持っていませんでした。

しかし今、韓国エンタメをきっかけに韓国に興味を持っている自分を改めて見てみると、僕が好きなもの、興味を抱くものには共通点があるんですね (^^)