公安・外事警察ものは作家やジャーナリストが取材をもとに書いた小説やノンフィクションをよく読んできた。

 

だから、ベースの部分は知っていることが多かったが、元公安警察官が書いているということに意味がある。

 

そこにはこんな狙いがあるのだろう。

 

<私が現職のときにはスパイの手口を民間人に伝えるなど考えられないことであった。なぜなら、スパイの手の内をオープンにしてしまうと、逆にスパイ側に対策を取られてしまう可能性があるからだ。しかし、これだけスパイ活動が活発になると、公安警察のマンパワーにも限りがある。(略)民間人自身にスパイに関しての知識や情報を知ってもらうために、警察も手の内を明かすようになってきている。>

 

おそらく著者の勝丸氏は、当局からそういった役割を求められているのだろう。

 

公安として、国民に知ってほしいことを代弁者としてメディアで伝えるために、最新の情報も提供されているのではないか。

 

そして、その究極の目的がスパイ活動防止法の制定だ。

 

<先進国でスパイ活動防止法がないのは実際、日本だけだ。例えば、日本では企業の情報をプリントアウトしたり、USBに入れたりして持ち出した場合、窃盗罪や横領罪などの現行犯に近い形で捕まえないと、スパイ行為を取り締まることができない。>

 

本書の読者の多くは、法律の制定に反対しないだろう。

 

また、JR大塚駅がスパイが尾行の点検・消毒に使う駅だとか、対象者の先を歩く尾行といったドラマや映画でぜひ使ってほしいネタが満載。

 

インテリジェンス小説が好きな人間にも、もちろんお勧めの内容だ。