もし有事が起きれば、専守防衛では3か月も日本を守ることはできないと、ウクライナ戦争で多くの人は理解できたはずだ。
そして、敵基地攻撃力を持ったとしても大した抑止力にならないんだと、本書を読めば理解できる。
元陸上自衛官で、”オフホワイトハッカー”としてサイバーの最前線にいる田中悠斗氏は”Attackology(攻撃学)”という造語を用いて、攻撃者の視点を知ることが防御のために必要なことだと説く。
<防御が必ず負けるのは、運用が悪いからでも、倫理が欠如しているからでもない。構造的に、勝ちようがないからである>とし、<防御は必ず「事後対応である」><攻撃者の自由度は防御者を常に上回る><防御は常に「想定」に縛られる>という3つの理由を挙げる。
考えれば当たり前なことだが、このことを戦後日本は無視して、専守防衛を唱えてきた。
しかも、現代はAIの進化によって<戦場は、人間の内部に移動した。人間の「認知」>に変化している。
認知戦が何より怖いのは<認知攻撃を受けたことに気づけない>こと。
また、<認知攻撃が強力なのは、不可逆点を作りやすいからである。一度形成された信念は、 ・確証バイアス ・同調圧力 ・認知的不協和 によって自己維持される。つまり、攻撃者がいなくても続く>という。
エコーチェンバーやフィルターバブルの問題は、AI時代にもっと極端になり、日本に限らず世界中で分断が進むだろう。
そこで田中氏は<不確実性が最大化するAI時代において、回復可能性(Recoverability)を社会に埋め込むための実践的指針>として<認知に多様性を制度的に守る>ために、多様なメディア・ジャーナリズムへの支援を挙げている。
逆に言えば、”オールドメディア”と公共放送や新聞ジャーナリズムが揶揄される現代は、認知戦が行いやすいということだ。
右も左も”陰謀”を語るが、それすら認知戦の餌食であることを知るべきだ。

