
僕の母は、さつま揚げが好物。
だから沢山のさつま揚げと、沢山の小松菜を炒め煮にした。
あとは、きんぴらごぼう。
簡単な惣菜を作り、タッパーにつめる。
さあ、実家へ向かおう!
そうなれば、良いのだけれど、現実はそうもいかない。
惣菜や、着替えを車に積み、夜勤に向かう。
朝、夜勤が明けた足で、実家に向かう。
実家までは、5時間ほどの道のりだ。
✤
実家の父が乗っている車が故障していると、母との電話で知った。
10日に電話したのだか、出なかったので、後日話した際に聞いたのだった。
え!?いつ??
いつから、動かなくなってたの?
10の時点では、すでに車は動かさなく、両親は生活の足を無くしていた。
スーパーまでの1.3キロを歩き、買い物して、荷物を引き、また戻ってくる。
その距離は、札幌駅の南口広場から歩き出して、大通りを過ぎて、ススキノのランマドーク“ココノすすきの”までと同じ。
札幌駅からすすきのまで買い物に行き、また札幌駅に戻ってくる計算になる。
✤
隣町にいる兄にも、知らせず。
僕にも知らせず。
両親は、交代で買い物に出かけていた。
✤
実家へ行けるとしたら、(夜勤が明ける)火曜の朝に向かい、
水曜の夜勤の前に、戻る。この日しかなかった。
✤
仕事とはいえ、他人様の世話ばかり焼いて、
そうした事情を知らずにいたこと、知らずにやり過ごしてしまったことを申し訳無く思った。
「知らなくて、ごめん」としかいえなかった。
「あんたたち、忙しくしてるから…いいんだよ」と母は言った。
よけいに、返す言葉が無かった。
✤
好きなものを作ってきたよ、と渡して見せた。
父はきんぴらごぼう、母はさつま揚げが好物なのだ。
「こういうのが、食べたかった」
そう、母が言った。
沢山、食べてください。
父と母と飲んだのは、久しぶりのことだった。
’
