
学生の頃、学校にはまだ学食がなく、少し歩いてコンビニで買うか、弁当屋さんで買うかでした。
実家暮らしの者を別にすると、寮から通っている僕のような者は、あまり選択肢がなかった。
当時、深夜のコンビニでアルバイトをしている者がいて、廃棄扱いの弁当やおにぎりを持参している者もいました。
僕はというと、(人気の)弁当屋さんやコンビニを利用しつつ、喫茶店に行っていました。
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校舎を出て、イサム・ノグチの滑り台を横目に、
大通公園を横断し、喫茶店へ向かいました。
喫茶店は、僕のような学生はおらず、ほぼサラリーマンでした。
店内はジャズが流れる、いわゆる“純喫茶”。
大人達に混ざり、日替わりランチを頼むのが常でした。
日替わりランチは、たいていがパスタ。
そしてサラダとコーヒー付き。
ナポリタンやミートソースの時もありました。
しかし、“日替わり”とは名ばかりで、“気まぐれ”で作られたようなメニューがありました。

何だ、これは!!ナポリタンのような色はしていても、まるで違うぞ。
炒り卵が見えるし、これはキムチじゃないか!?
そして、魚肉ソーセージ!!
ひと口食べてみると、ピリ辛のケチャップ味!!
なにーー!!
なかなか、うまいぞ!!
予想もしない美味しさでした。
具材は、魚肉ソーセージは必ず入っていましたが、
加えてベーコンの時があったり、粗挽きソーセージの時があったり、豚肉の時がありました。
いつしか、「今日は、アレかなぁ」と、愉しみに思うようになりました。
それはメニュー表はない“メニュー”で、
まさに“気まぐれの日替わり”でした。
何故なら、いつ出会うかわからないからです。
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それから20歳を過ぎて、一人暮らしをするようになった頃。
その味を再現してみたい気持ちになり、自分でも作るようになりました。
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数年が経ち、その店が閉店したことを知りました。
自分が気づいた時には、無くなっていたというわけです。

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気まぐれで出てくる、日替わりのメニューだから、
名前もなかったはず。
だから、“キム・トマ”。そう、呼び名をつけておこうと思います。
