※以下の写真撮影は内覧会で許可頂いております。

明日から開幕する展覧会の内覧会に行って来ました。

写真に写るのはスコットランド国立美術館群 総館長 ジョン・レイトン卿で、次の巡回先で今回も多数出品されてる、イギリス絵画コレクションが豊富な郡山市立美術館より富岡学芸員とお二人で、出品解説をして頂きました。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)名前長いです。
生きた時代はイギリスでは産業革命の時代、日本は江戸時代後半。これはポイントですね。実は写真の技術が開発されつつありながら、まだまだ普及する前で、このような写実に価値があった時代であった事が、後からご紹介するような実に細かく描かれた作品から伝わるようでした。

ラストの作品以外は全てターナー作品で構成されており、水彩、油彩、版画作品約120点の展示になります。

第1章 地誌的風景画
まず、画家の地位は、富豪のパトロンのリクエストに応えた制作により確立します。
イギリスはウェットな土地柄で、遠くにミストがかかるような光景が見られます。
単なる記録ではなく、雰囲気を掴み、びっくりさせるような仕上げ、見る人々を絵画の奥にある所に引きずり込みます。


《フォントヒル・アベイの東塔、真昼》1811展示 エディンバラ、スコット国立美術館群
この左の作品はその例の一つ。奥にタワーのような建物がパトロンの邸宅、しかしあまりに奇抜で、建築後日も浅いうちに、崩壊してしまったんだとか。
さて、その後パトロンはどうされたのか気になります。

これら二点に今回の展覧会の出品作品の特徴が表れているので、じっくりとご覧下さい。

《ソマーヒル、トンブリッジ》1811展示
エディンバラ、スコット国立美術館群
労働に重きをおいて、働く人々の姿を描いています。この作品には、羊、羊飼い、そして車の車輪の修理場が描かれています。

《カンバーランド州のゴールダー・ブリッジ》1810展示 郡山市立美術館
手前のダイナミックな近景と、遠くがボケて、邸宅が霞んでおり、知らぬ間き絵の奥に引き込まれてゆくと言われています。
実はこの三点に今回の展覧会のエッセンスが集約されているようです。
ターナーと言えば、ぼやっとしたあの空気を描いた様な作品は、晩年のもので、若き頃の野心溢れる作品を前半ではお楽しみ下さい。

今回は版画も多く、実に綿密過ぎます。
ターナーは版画は自ら彫られたり、刷られず、彫り師と刷り師の手によるものが多いとのこと。
よく見ると絵ターナー、版画作成○○○と小さく記されたものがありました。
気難し屋のターナー、出来た彫り師や刷り師により、よりターナーらしさを出す










第2章 海景-海洋国家に生きて
イギリスは日本と並び海洋国家です。海を多く描いていますが、ここにあるのは、油彩は期待通りで、むしろ版画とその下絵が目につきました。












ここ、海戦のリアルな描写と、想像図
驚きはこれ版画の下絵なんですが、全てターナーはフルカラーで描いています。



第3章 イタリア-古代への憧れ
やはり、イタリアかあと、イギリス人らしく彼もグランド・ツアーで1819年、40代で旅をしています。
彼は旅好きで、やはり北方のイギリスには無いイタリアの南欧の明るい光から、作品も明るい色調が見られます。


また、イタリアに行く前後で画風が変わります(調べると他にも都合5回ほど変わったようですが)初めてイタリアに行ったときは、光が通るような水彩画を描いたのですが、その作品は1月だけしか展示されないようです。
何故ならば1月は日差しが強くなくて、絵にも影響が無いからだと。なので、ターナーみたけれゃ、1月に来て下さいとその作品所蔵の美術館のPR。




ここから小さめの作品が続きます。








第4章 山岳-あらたな景観美をさがして

《スノードン山、残照》1789-1799年 エディンバラ、スコットランド国立美術館群
ウェールズの風景を、イングランド出身のターナーが描き、スコットランドの美術館にある、とちょっとややこしい作品です(笑)
ドラマチックな前景に、スノードン山はミストがかかったような自然の崇高さと壮大な光景。
水彩画のテクニックの幅広さがなせる技、更には親指の爪を伸ばし、爪で水彩の表面を削り、白い部分を作っています。冒険していますと。

冒険と言えばターナーはスケッチは屋外、色を付けるのは屋内、夏場は旅をして冬場にアトリエで創作、が彼のスタイルでした。
旅は作品制作に重要でした。


ターナーの描いた山岳の写真










どちらかと言うと、あのぼんやりした空気感を描いた晩年の作品より、よくぞここまで細かく描いた、と思えるフルカラーの鉛筆画下絵の方が印象的でした。ほーんとここまでよくやるよ、とため息が出ます。これらは是非実物で(作品が小さくて写真では良さが見えないです。) 
少しアップにしてみました。



これが版画師の名前。
横にはターナーの名前と印刷所か出版社?のロゴマークの刻印もありました。

晩年の作品は、さらっと描いてますが、空気感が出てきます。

明治以降の日本人画家が水彩画を学ぶに、は、水彩画はこんな風に描くんだとこぞって手本にしてました。

ラスト作品は、今回唯一ターナーの肖像です。
ウィリアム・アラン
《ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー》
この小さくて頭でっかちなのが、ターナー。
愛すべき存在だったのかなあと。

「イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(うた)」
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
2018年4月24日~7月1日