8月の上旬、自宅待機というのをしていた。
妖精に……いや、陽性になったからである。
周りの人たちがことごとく感染していたので、なんら不思議はない。もしかしたら無症状で感染していたかもしれない。だが心のどこかで「わたしは罹らないんじゃないか」と思っていた節はある。
しかしどうにも喉に違和感が出た。
熱は7度3分くらいをさまよっている。
そして直前に接した友人が陽性だったと連絡が入ったので、翌日駅前のPCR検査場に足を運んだ。次の日に結果は出た。陽性。
自主的に自宅療養すればいいのかと思ったが、正式な医療機関の診断がないと万が一何かあった時に大変だと言う友人のアドバイスを聞き、近所の発熱外来を受け付けている病院を探す。が、どこも「熱が出たんですが…」と言った途端、「もう予約がいっぱいで」「かかりつけ以外の方はお断りしていて」「今受け入れてなくて」と即座に断られた。病院側の状況も把握しているので、責める気にはなれない。だが、心は少しずつ折れていく…
なんでもそうだと思うけれど、「断られる」って言うのは、たとえ自分に非がないとしても、ダメージを受ける。それが1度ならず、2度3度となってくるともう、
「え、わたしって必要とされていない人間?」
「もしや全世界に嫌われてるんじゃ…」
「自分だけ取り残されているかも」
こういう思いがじわりじわりと脳内を侵食してくる。
そして同時に「もうどうでもいいや」が充満してくる。
次かけて断られたら、既定の日数自宅待機することにしようと、半ば投げやりな気持ちでいた。
ふと最初の方にかけた病院で対応してくれた方の声を思い出した。かかりつけしか対応していないと断れたのだが、たしか切り際に
「もしどうしてもどこの予約も取れなかったら、またかけて下さい」
と言っていたので、思い切ってかけてみた。
最初は「あぁ…そうですか、うーん……」とちょっとだけ面倒そうだったけれど、伝家の宝刀『泣き落とし』作戦を敢行。
「もうどこも断られてしまって…こちらしかなくてぇ…。朝かけたときにどこもなければと仰って下さったのでぇ…」
ライトな脅迫にも聞こえる「だって言ったじゃない!」をアピールした結果、翌日のお昼に受け入れてもらうことができた。本当に有り難かった。命を救ってもらったくらいのテンションで「ありがとうございますぅぅ」と電話口でお辞儀していた。
翌日、人目を避けるように、まるで指名手配犯のようにコソコソと病院へ向かった。最初のPCRからは4日経っていて熱はないが喉の違和感は続いていた。
日差しの強い、暑い日だった。歩いて2分ほどの近い病院で助かった。その病院は昼休憩の時間に発熱外来を受け付けていた。入口の外に置かれた椅子に座って待っていると、防護服を着た先生が現れて、PCR検査用の綿棒を渡される。唾液採取が終わると問診。今の症状は軽いので、そのまま自宅待機を命じられる。お支払いをして終わり。全部外。汗ダラダラのわたしに先生は「暑いのにゴメンね」と言ってくれたが、こちらこそゴメンねの気持ち。
次は薬局へ行って処方箋をもらい(これも外で対応)、静かに家に帰る。
病院での検査も陽性だったと分かり、症状が発症した日から10日間の待機となった。これで晴れて、日々発表される陽性者の仲間入りである。街中のPCR検査の意味はないとは言わないが、陽性だった場合は再度病院で検査せねばオフィシャルな陽性として扱ってもらえない。ただ病院はひっ迫していて予約は取りづらい。今はオンライン登録ができる(無症状や軽症の場合)が、8月上旬は年齢制限があり、まだ無理だった。
毎日先生が電話をしてくれて、体温と症状の確認をしてくれた。熱はほとんどなく、咳が少し出ているくらいだったが、電話確認は有り難かった。
いわゆる「倦怠感」というやつはあったが、それが引きこもり生活が生み出したものなのか、コロナという病気のせいなのか分からない。自宅に待機しなければならないという状態が、病人の気持ちにさせているような気もした。軽症だったからそう思うのかもしれないけれど、自宅療養は自分のためだけではなく、どちらかと言うと周りの人のためであった。
リモートなどで仕事はしていたし、外に出ないこと以外はいつもと変わらない。いくつか現場に行けなかったけれど、リモートで対応してもらえた。(仕事が少ないってのもあるが…)影響はほぼなかった。
Netflixでペーパーハウスを制覇し、見たかった映画を見て、大好きな宅配ピザは2回注文した。
文字にすると最高の時間だったではないか。
妖精が降りてきていたのかもしれない。
※感染を聞いた友達が陽性を打ち間違えた(トップ画)
でも、待機があけて、外に出た日。
高島 麻利央@Oh_Marioooどんなに暑くても外の世界ってすばらしいな…
2022年08月11日 09:31
今の仕事的に引きこもってパソコンに向かうことが多めだけど、外の空気を吸わねばなぁと思う夏の終わり。
そして改めて、医療従事者の皆さんに深く感謝を申し上げます。