とあるファストフード店で作業していたら、後ろの席でアルバイトの面接が始まった。

おそらく店長と、高校生の女の子。

いわゆる『面接』っぽい質問を女の子に投げかける店長。

通勤手段や時間、何日シフトに入れるか、など。当たり前と言われれば当たり前の、ごく普通の、面接。女の子はすごくしっかりしていて、ハキハキと受け答えをしている。

――なんでうちで働こうと思ったの?

店長が尋ねた。この駅なら、スーパーやコンビニやその他たくさんバイトできるところはあるよね、と。

――○○(その店)は私にとって身近なお店ですし、働いている方も・・・

耳をそばだてて聞いていたわけじゃないので、細かくは覚えていないが、他社との比較をし、その店を持ちあげつつの、完璧な理由を述べていて、「この子、すげー!」と感心した。それからこんな質問もあった。

――今までで一番頑張ったことは何ですか。

えー、それ就活で聞かれるヤツやん!バイトでも聞くんだ。それ聞かれたらわたしなんて答えよう!?またしても女の子は高校で頑張ったことを完璧に答えていた(ちゃんと聞いてないけど)。

まぁそっかーと思う一方で、それらを聞いてどうすんだ?とも思った。

正直、時給がいいから、とか、家が近いから、とか、条件が合う、とか、まかないが出る、とかが本心だと思う。もしかしたら、他で落ちて仕方なく、みたいなこともあるだろう。本音よりも建前で話すのが面接なのだ。
女の子も準備していたのか、面接慣れしているのか、天性の対応力なのかは分からないが、建前の割合の方が多いと見えた。

私もそのような面接は掃いて捨てるほどやってきたし、聞かれる側のときは何も思わずにきちんと答えていた。もちろん大人だから、高校生よりも適当に話を省略したり盛ったり、ちょっと笑いを交えたりしながら話したとは思うけれど。ただ、バイトであれ社員であれ、いまだにそのような古風な面接が行われているという事実に、面白味と違和感を持った。

10分くらい雑談すれば、だいたい分かるんじゃね?

そう思った。いや、極論、分からなくてもいいのだ。「めっちゃ良い子や」と思った子がその会社と合うかは分からないし、長く続くかも分からない。そもそも学生だとしたら大抵はリミットがある。会社にしても、終身雇用を希望する人が減り、転職やフリーランスが当たり前になった世の中で、面接だけはずっとその方法が変わらない気がしている(知らないだけ?)。

彼女に向けられた質問たちは、面接する側の、しなくてはならない、仕事をしているだけ、である気がした。要は、マニュアルを、こなしているだけ。だから、違和感があったのだ。

「今から面接します!よろしくお願いします」

って言って以降、周りが《あ、あの人たち面接してる》って気付かれないくらい、世間話や他愛もない会話で盛り上がるだけで(別に盛り上がらなくてもいいし)、いいんじゃない?

そんな面接が見てみたい。
そんな面接なら、耳をそばだてて聞くよ。
店長やるなぁ~とか思いながら。