新エリア稼働1週間前、
マニュアルの進み具合をチェックする為にクマ子からデータを受け取った俺。
開いてみたが、渡した時とほぼ同じ状態だった為、
渡されたデータが間違っていたのだと思い、翌日クマ子に確認をした。
「クマ子さん、昨日頂いたデータなんですが、
おそらく間違って違うデータを受け取ったかも知れないんですが、
ちょっと確認してもらっていいですか?」
クマ子は目を泳がせ、明らかに動揺した。
俺はパソコンでクマ子から受け取ったデータを開いた。
「これ、私が渡した時とほぼ同じ状態なんですよ…。
おそらくこのUSBでは無いですよね?」
そしてクマ子を振り返った。
クマ子は顔面蒼白になっていた。
「いえ、それで合ってます…。」
え??ウソだろ?
しばし沈黙。
俺は言葉が出てこない。
「ん?って言いますと、この2か所だけ書き込みがある部分が更新された部分ですか?」
しかも、その2か所は物品の名前と値段が書いてあるだけである。
エリア立ち上げの際に必要な物品は少なく見積もっても200は超える。
それが、立ち上げ1週間前の時点で2。
エリア運営についてのマニュアル至っては、1文字も書かれていないではないか!
「すいません、パソコンが苦手でして…。」
そうクマ子は言って照れた様に笑った。
「……。」
俺は文字通り、頭を抱えてしまった。
どうしよう。稼働まであと1週間しかない。
何故早い段階で、無理やりにでもチェックしなかったんだろう。
何故クマ子がパソコンに向かっている姿を見なかったことに、
もっとおかしいと感じなったのだろう。
後悔、後悔、後悔…
その文字がグルグル頭を回っている。
「クマ子さん、これ、パソコン苦手でって言うレベルでは無いですよ。」
「え?」
え?じゃねーよ!!
俺はこの時ほんの少しだけクマ子に殺意を覚えてしまった。
「これ、どうするんですか?稼働まであと1週間もないんですよ?」
クマ子はその時初めて事の重大さに気づいた様だった。
「どうしましょう。私、もともと物事を組み立てるのが苦手で…。」
「今更そんなこと言わないでくださいよ。私は手伝いますと言ったじゃないですか。
なんでもっと早く言ってくれなかったんですか?」
沈黙。
この時はまだよくわからなかったが、クマ子は都合が悪くなると、
ひたすら沈黙を貫く癖がある。
「もういいです。私が全部作りますから、クマ子さんは私が欲しい情報を持ってきてくれれば
それでいいです。」
結局、新エリアの内情がわからないまま、
担当者ではない俺が、マニュアルから立ち上げ準備を全て
行うことになった。
その一件で、俺はクマ子が人と違うことにやっと気付いたのである。
つづく。