俺は、主にクマ子には新しいエリアの準備と、マニュアル作成をお願いしていた。
正式に新エリアが稼働するまでに1ヶ月を切っていた。
早急に準備を進める必要が合った為、
クマ子にはPCを1台与え、マニュアルのひな形を渡し、
スムーズにマニュアル作成が出来る様、環境を整えた。
新しいエリアは建物は完成しているが、
稼働はしていない為、現場では特にやることは無い。
しかし、クマ子は1日中エリア内に入っていて、
パソコンを使用する気配は無かった。
そのままあっという間に半月が経過した。
俺は少し不安になり、クマ子に状況確認をした。
「クマ子さん、こちらのパソコンを使われていない様ですが、
パソコンは新しいエリアの方の事務室にもありますか?」
「はい。」
「そちらでマニュアル作りはされていますよね?」
「はぁ。一応やっていますけど、パソコンが苦手でなかなか捗らないですね。。。」
クマ子はパソコンが苦手だった。
打ち込む速度が遅く、今まではパソコンの作業は他の社員にお願いすることも多く、
クマ子自身がパソコンを使っている姿は滅多に見る事が無かった。
「もし、打ち込みに時間が掛かってしまうのであれば、
手書きでまとめてもらえば、私が打ち込みますので言って下さいね。」
俺は、一応クマ子がマニュアル作りを進めていることを知り、
安堵したが、このままのペースでは間に合わない気がして助け舟を出した。
「ありがとうございます。でも、自分でやりますので、大丈夫です。」
とクマ子は言った。
クマ子は部下ではあるが、先輩である。
本人が大丈夫と言うのにそれ以上踏み込むことは当時の俺には出来なかった。
1週間後、大体の流れは出来ていると思い、
クマ子に声を掛ける。
「準備の進み具合はどうですか?」
「まずまずですね。新しい物品を購入してもらって、
今はそれを設置する作業を行っています。」
クマ子は澱みなく答えた。
「マニュアルの方はどうですか?」
「マニュアルはなかなか進みませんね。。。
でも、試行錯誤しながら頑張って進めています。」
「そうですか。先週も言いましたけど、
あまり時間も無いですし、本当に、私が協力出来ることがあれば遠慮なく言って下さいね。」
「ありがとうございます。」
手伝うことを申し入れても、クマ子は大丈夫だと言って、
俺の申し入れを拒否した。
稼働まで1週間を切った。
「マニュアルのチェックをしたいので提出をお願いします。」
俺はクマ子に声を掛けた。
「え?チェックがあるんですか?」
クマ子は驚いた様に聞いて来た。
「勿論、そちらのエリアも私が責任者になりますので、
確認はしておかなければと思います。」
「そうですかぁ。あまり進んでないので、
まだお見せする状態ではないんですが。」
クマ子は申し訳なさそうに言った。
俺は、
「足りない部分は私が補いますので、
出来ているところだけで結構ですので、
今日中にデータで貰えますか?」
とお願いした。
その日の夕方、クマ子はUSBにデータを入れて持って来て、
「本当にあまり進んでないのですが…。」
そう付け加えた。
俺はお礼を言って、業務終了後にクマ子のデータを開いた。
「?」
データを開いてみると、
俺がクマ子に渡した時とほぼ同じ状態のデータが開かれた。
ん?これは受け取る物を間違えたのか??
翌日クマ子に確認することにしてデータを閉じた。
つづく。