〈次また地震がくるかも〉
10年前の経験から1度しか大きい地震が来ないなんて思えなかった
「〇〇〇だいじょーぶ!」
中学3年の娘の名前を叫んだ
何の返事もない
えっえっ!ちょっとパニックになりながら
もう一度
「〇〇〇だいじょーぶー!」
か細い声で
「だいじょーぶ」と聞こえた
娘はいつも声が小さくて自信無さげな感じなので
これが通常運転である
良かった!とりあえず今のところみんな命だけは大丈夫そうだ!
「危ないから靴を履いて来て!」
と叫んだ
遠くから「うん」と聞こえた
娘の部屋は玄関のすぐ隣だからその方がいいと思った
やっとの思いでドアを開けて息子が駆け寄ってきた
その手にはチワワをしっかりと抱き抱えていた
〈あーそうか、ちゃんと犬も家族だと思ってるんだ〉
〈私は人間の事ばかり考えていたのに
この子は犬も助けなきゃって思ったんだ〜〉
息子の優しさがうれしかった
でも私も助けてもらわなくてはならない
娘が遅れて来たのでチワワを娘に預け、犬用のクレートを持ってくるように言った
息子には私をいつものように起こしてとお願いした
ようやくベッドに腰掛けた状態になってビックリした
〈足の踏み場がない、車椅子いけるのか〉
そんな事考えている暇はない
「この辺の物を横に退けて!」
義母と息子は私が通れるように道を作ってくれた
車椅子に座ったはいいが
〈メガネがない、ベッドの横の棚の上に置いておいたはずだが〉
棚はありえないくらの位置まで飛ばされて倒れていた
「メガネ探して!」
壊れているかもと覚悟した
「あった!」
奇跡的に壊れていなかった
「スゴイね、壊れてなかったね」
そう言ったが余韻に浸る時間はない
もう家の中には戻れないかもと覚悟して
テキパキと息子に指示を出した
「車椅子の充電器と携帯の充電器を持ってきて!」
息子もテキパキと指示に従って
逃げる準備をしてくれた
ここで娘がクレートにチワワを入れて戻ってきたので
みんなで逃げるぞって気持ちで
「よし!」と声に出ていた
だが前には進むには難しかった