猫が帰って来ないんです


こんな言葉を耳にしたら


心中穏やかでいられるはずもなく

何とか見つかります様に
どうか帰って来ます様に

そう願わずにはいられません


けれど

もしその猫が

自分が保護し
家族として暮らし始めた

猫だったとしたら…


泣きたくなりますえーんえーん





外で暮らす猫と出会えば

その日からその仔のことが心配になる
暑い日も寒い日も雨の日も

お腹を空かせてはいないかと
毎日ご飯を用意して
1日来ないだけでも
何かあったのではと心配する


いつしか心が通い始めれば


保護という言葉がちらつき出す

保護を決心した頃


けれど
保護するということの重さを思うと

悩みもするし葛藤もする


サスケは

そんな日々を乗り越え
やっとの思いで保護した仔です
サスケを玄関に誘い込むことに成功



でも もし本当に
サスケが飼い猫だったとして

うちの仔だから返して欲しいと言われれば

お返しせねばなりませんタラー


あんなにつれない男だったサスケは

今ではお膝にも乗ってくれるほど
心を許してくれる様になりましたが

裏を返せば


サスケは
私と出会う前から
人の手や膝の温もりを知っていた


そういう事になるのかもしれません


サスケの変化が
嬉しくて仕方ないはずなのに
素直に喜べない

ボランティアさんから
電話をいただいたあの日から

心の中に
言いようのない不安が

黒い霧の様に
重くじわじわと広がり始めました






猫が帰って来ないんです

ボランティアさんのところに
そんな相談があったのは

7月も後半に差し掛かった頃


その頃私は
胸の痛みが続き通院していました

その日も
検査のために病院を訪れており
受付も済ませ
検査室に向かおうとしていた
まさにその時

ボランティアさんから携帯に着信

慌てて外に向かい 電話に出ると



猫が帰って来ないっていう
相談があったんですよ

みーゆさんが置いてるご飯を
もしかしたら食べに行くかもしれないので
ちょっと気をつけて見てもらっても
いいですか

そのお宅の
番地だけ聞いてるので
お知らせしますね

○丁目○番地○号です


一応
わかりましたとお返事はしたものの

その番地を聞いても
全くピンと来なかったし

自宅から近いのか遠いのかも
わかりませんでした


それで その猫なんですけどね

毎日午後3時頃外に出して
夜になると戻って来てたらしいんです

戻ってからはずっと家で寝てて
また翌日3時になると出て行くっていう
そういう生活だったみたいなんですけど

今まで帰って来なかった事は
一度もないのに
6日の夜から帰ってないそうなんです

肝心の猫の特徴なんですけど

大きめのキジ白

だそうです


特徴を聞いた瞬間
衝撃雷が走りました

大きめ?
キジ白?

サスケは
大きいし キジ白じゃんかーえーん


私は咄嗟に聞いていました

その猫ちゃんがサスケかもしれない
そういうことでしょうかっっアセアセ

あっ 違います違います
流れ流れてご飯を
食べに行くかもしれないと思ったから
それで電話したんです

サスケちゃんとは違う猫だと思います


それらしき猫ちゃんが来たら
ご連絡します 失礼します

電話を切り しばし空を仰いだ

うそでしょタラータラー

サスケーータラータラータラー


タラータラータラータラータラー



そうだ

検査室に…行くんだった


つづく