先日ミネアポリスのカトリック系の学校で無差別銃撃事件があり、礼拝中の児童のうち10歳と8歳の2人の子供が死亡、18人が負傷という痛ましい事件がありました。銃社会の米国ではこのような悲惨な銃撃事件が後を絶たないわけですが、今回のミネアポリスの事件の犯人はトランス女性でした。4月13日の投稿で述べたように大きな犠牲が出る事件があると反トランス派はすぐに犯人がトランスジェンダーであるという偽ニュースをSNSで拡散するのですが、今回はそれらとは違って信頼できるメディアよって銃撃犯がトランスであることが確認されています。
犠牲者への哀悼の意はもちろんですが、その上にトランス攻撃の激化を心配しなくてはならないのかと気持ちが重くなりましたがミネアポリス市長の言葉に少し救われています。(以下かなり意訳)
「このような非道は絶対に起きてはなりません。……今回の事件をトランスジェンダーあるいはそれ以外(のマイノリティ)を攻撃するために使うのは人間性の欠如であると言わざるを得ません。我々は憎悪の視点で物事を見るべきではないのです。……今日、子どもたちが殺されました。今は(憎悪ではなく)犠牲者とその家族への哀悼といたわりが必要なときなのです。」
(ちなみに原文です)
"This kind of evil should never happen," Minneapolis Mayor Jacob Frey said.
Frey stressed at a second news conference, "Anybody who is using this as an opportunity to villainize our trans community, or any other community out there, has lost their sense of common humanity. We should not be operating out of a place of hate."
"Kids died today," he continued. "This needs to be about them. This needs to be wrapping our arms around these families."
トランスが殺人の罪に問われた凶悪犯であった事件はこれ以前にも2、3件記憶にありますが、専門家によるとトランスジェンダーの犯罪率が高いという信頼できる調査結果はありません。それでもトランプ支持者はトランスジェンダーに対して犯罪人、テロリストというレッテルを貼るために徹底的なSNS攻勢を続け、残念ながら米国ではそれに影響される人が増えてきています。
犯罪率のデータに関してはそれを解釈する際に重要なことがあります。ずっと以前から米国では人種別の犯罪率のデータを示して黒人は白人に比べて犯罪率が高いと主張する人たちが多数いました。確かにデータの上辺だけ見ればそう見えるかもしれませんが、黒人が犯罪を犯しやすいというのは本当でしょうか。いまでは犯罪率は貧困と高い相関があることがはっきりしています。つまり犯罪率が黒人で高いように見えたのは黒人の貧困層の割合が白人に比べて多かったことが主要な原因でした。黒人だから犯罪を犯す確率が高いという言説は間違った結論だったわけです。
日本でも同様な議論が起きているようです。「外国人の犯罪率は高い」「外国人が増えると治安が悪くなる」などというコメントを最近よく見聞きするようになりました。人々を人種、国籍、性別など属性別に分けたデータを解釈するときはその属性そのものが原因なのか、そうではなくほかの要因、例えば経済的な事情や教育の機会が本当の要因なのか、慎重に見極める必要があります。犯罪率、安全な社会に関して言えば、貧困対策と犯罪対策は表裏一体の関係であるという専門家の提言を私は支持します。
日本文化の継承を担う将来の世代は日本人のDNAを持つ人たちというわけではありません。日本語を話し、日本の文化に愛着を持ち、日本のコミュニティで暮らす人たちです。日本人のDNAを色濃く受け継いでいても日本語を解しないうちの子には(少なくとも今のところは)務まらないわけです。韓国・朝鮮などをルーツに持つ日本で生まれ育ったの2世、3世に対して差別意識を持つなんて論外。怒りを禁じえません。
長期滞在・永住外国人の受け入れとそれに伴うあらゆるコストは日本そして日本の文化の将来のための必須の投資だと私は考えています。外国出身だから日本にはなじまないと決めつける前に、どうやったら馴染んでもらえるのかを考えるべきだと思っています。人口減対策として女性の社会進出を逆行させ、家庭に戻らせ女性に産ませることしか考えつかない政治家・政党が票を集めるような国はもうだめなのかもしれませんが。