私の幼少時、朝は大抵トーストだったような気がします。トーストと言っても時々バゲットーー当時はフランスパンといえばこれでしたが――が登場。私はこれを斜めにスライスして軽くトースト、バターを塗って食べるというのがお気に入りでした。
月日が流れ、東京で一人暮らしをするようになり、やがて渡米。渡米早々気が付いたのは「日本のパンはおいしい」ということ。日本のベーカリーのパンと比べてたわけですが、当時(バブルの頃)既に日本のベーカリーはかなりのレベルだったんだと思います。当時の米国のパンは(ベーグルは例外としても)全体的にいまいち。パンは欧米の食べ物だから米国の方が日本よりおいしいだろうと単純に考えていた私は日本のパンを大いに再評価したわけです。
特に米国の「バゲット」はがっかりでした。バゲットっぽいのは外見だけ?というか形だけ?外側もそれほど固くないし、中身は堅めでやや密度あり。気泡もかなり小さくそろっています。今でこそベーカリーで好みにもっと合ったバゲットを見つけましたが、当時米国では一般的にバゲット型のパンはサンドウィッチ用が主流で、パンそのものを味わう人は少数派だったのかな?
そんな折、10年近く前に南フランスに数週間滞在する機会がありました。もちろんこれで本場のバゲットが食べられる、とテンションも大いに上がっていたのですが、現地で食べてみて…??? 米国のバゲット型パンより遙かに日本のものに近く、おいしいことはおいしいのですが、私が好きだったあの「フランスパン」とはちょっと違う… (でもほぼ毎朝食べてました)
私の好きだった日本の「フランスパン」と同じく外側はパリっと固く、内側は大小様々な気泡があるところまでは似ているのですが、内側の弾力性が全然違いました。私の記憶にあった日本の「フランスパン」はものすごく弾力性があったのですが、本場のバゲットはそうでもありません。気泡の大きさも私の好きだったものより小さいみたい。別なお店も試しましたが基本的に同じでした。地域差があるんだろうか。でもそしたら日本のあれは何だったんだろう?
早速ネットで調べてみたところ、日本のフランスパンは本来のものと違って日本人の口に合うように小麦粉以外にも材料を足しているとのこと。つまり本場のものとは違う「邪道のバゲット」ということらしいです。つまり私はこの邪道のバゲットが好きだったわけ? というわけでその次に日本に一時帰国した時は勇んで日本のバゲットを食べてみました。ところがこれも私の探していたものとは違う…… 外側はパリッとしてますが気泡の大きさは小さめで、内側はどちらかというともっちり。本場フランスのものによく似ています。でも私が好きだったのはもっと大きな気泡がぼこぼこあって内側は引っ張るとぷにゅーんとものすごい伸縮性があるやつ。
(三越伊勢丹のバゲット各種。外見だけだと左から2番目と右から3番目が近い感じです)
以来一時帰国のたびにちょこちょこ試していますが、私が昔好きだったバゲットは見つかっていません。短いフランス滞在時にはお目にかからなかったので日本特有の邪道バゲットの一種だろうとは思いますが、あのバゲットは一体どこで食べられるんだろう?50年以上も前のことだからフランス本場タイプのものに駆逐されてしまったのかな?もしお心当たりのある方いらっしゃったら教えてください。因みに酸味は全くありませんでした。今でも酸味がないほうが好みです。
