私が旅行好きというのは以前の投稿でお話したと思いますが、初めての海外の思い出を書いてみたいと思います。1983年、大学2年の夏休み――うわ、もう42年も前!信じられない――大学の寮に入れてやや落ち着いてきた頃でした。大学生協の旅行関連パンフを定期的にチェックしておいて夏休みの航空券価格が出たところで購入。ネットがない頃はこうやって旅行の情報収集をしてたんですよね。

 

初めての海外の行き先ですが、月並みながら米国。前年の夏に米国からの交換留学生を実家で迎えたのですが、彼女が来ていいよっていうことで(社交辞令かもしれないなんてことは考えもせず)アイオワ州の彼女のうちを訪ねることにしました。そう、初めての行き先が米国というのは月並みですが、中西部というのは当時としては珍しかったのでは。今でも初めて体験した米国はアイオワ、というとなんで?と怪訝な顔をされることが多いです。

 

ロサンゼルスまでの国際便往復と米国内の周遊券を組み合わせて3週間近くの旅。出発日、かなりワクワクしながら成田空港へ。当時は滑走路一本だけ、ターミナルビルは今の第一ターミナルだけ。それでもモダンで大きな空港(まだ開港5年だったんですね)、初めての海外、初めて一人で空の旅ということでテンションは相当高まっていました。南ウィングの(今はもうない)丸いサテライトのゲートからノースウエストのB747機に搭乗。ターボファン機も初めて。(それまでは全日空国内線のYS11とかF27フレンドシップとかターボプロップにしか乗ったことがありませんでした) 離陸時の加速にさえ感動したのを覚えています。

 

窓の外に初めてカリフォルニアの赤茶けた大地が見えたときも感動。それまで空から見ていた日本はいつも緑色だったというのはありますが。ロスに到着後、国内線に乗り換えてデンバーヘ。そこからまた乗り換えて目的地のアイオワです。今から考えると片言の英語でよくやったなあと思います。アイオワの第一印象はとにかく「だだっ広い平坦なところ」。日本だと関東平野でさえ丹沢が見えたり筑波山が見えたり丘陵地があったり、とにかくどこかに起伏が見えるものですが、それが全くなし。マインクラフトだったら究極の手抜き平坦地形。一直線に地平へ伸びるフリーウェイの両側は延々と続くトウモロコシ畑、大豆畑、牧草地です。一体何なんだこれは…   日本の景色とのあまりの違いに驚愕。米国がどこでもこうというわけではない事がわかったのは後の話です。

 

さてアイオワでの思い出はたくさんあるのですが、一番印象に残っている日のことです。滞在させて頂いた家庭の親戚が農場主で、ある日その農場に招待してくれました。もちろん観光用の農場ではなく専業の農場です。到着したらまず農場内の案内。牛舎にはたくさんの牛が並んでいましたが、いきなり「どう?乳搾りやってみる?」だって。好奇心満々の私は即答でOK。でも機械じゃなくて手で?そうです。大昔からのやり方でど素人の私が乳を絞ることになりました。もちろん初体験。手をよく洗っておそるおそる触ると「全然怖がらなくていいから。大丈夫だよ」  でも牛って結構大きいから暴れたら怪我するよね。「ここをこうやって握って押し出すように」言われるがままにやってみるとピューッと乳が。牛の方は全く平気そう。おとなしくしてるのですぐに慣れてきました。「あ、すごい上手上手!」おだてられて調子に乗った私はやがて超フレッシュな生乳で容器をいっぱいに。結構面白かったです。

 

その後農場内の住居に案内され、そこで農場主の奥さんに2リッター以上の容量がありそうなガラスの容器に入った生乳を渡されました。蓋のところにはハンドルがついていて、そのハンドルを回すと中の木製の羽根が回転するようになっているようです。何だろこれ。「このハンドル回しといて」と言われて回し始めましたが何のためにやってるのかさっぱりわかりません。聞いてみても「いいからいいからやっといて」、と言われてる?私の英語力が低いのでさっぱり分からなかった?

 

床に座って容器を両足で固定した姿勢でしばらく若さに任せてびゅんびゅん回していましたが、だんだん疲れてスピードが落ちてきます。一体これいつまでやらなきゃいけないんだろうと思いつつとりあえず続けていましたが、全く突然ハンドルが重くなった!まずい…乱暴にやっていて壊しちゃった?なんかハンドルもガラスの容器もかなり年季が入っているっぽいし…   申し訳なさそうに奥さんにハンドルが動きにくくなったことを伝えるとぱっと目が輝いて「あ、見せて見せて」。

 

容器をテーブルの上に置いてハンドルのついた蓋をゆっくり引き上げると木製の羽根には淡黄色の固形物がたっぷりついていました。「できたできた!ありがとう」  ようやく自分が何をやっていたか理解した私でしたが、壊れたんでなくてよかった。ランチでは分厚いステーキと農場内で採れたとうもろこし、それに今できたばかりの手作りバターが大きなテーブルに並んだのは言うまでもありません。

 

次回に続きます。

 

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 性同一性障害(MtF・MtX)へ
にほんブログ村