物騒なタイトルになってしまいました。白状しますが男性時代の私が犯人です。もう15年以上前のことですが、上の子が幼稚園年少、下の子がまだおむつのころ。私は性別移行どころか自分の性自認に向き合えてすらいなかったころ。有名な自然史博物館に行く機会がありました。妻は仕事だったので一人でタンデムのベビーカーを駆って恐竜とか子供の興味をひきそうな動物系の展示を中心にまわっていたのですが、上の子がトイレにいきたいとのこと。

 

ベビーカーに乗せるくらいの幼子二人というのはひとりではちょっと大変ですが、トイレはもちろん想定内。手際よく必要なベビー用品をベビーカーのポケットからバックパックに移し、ベビーカーをトイレの入り口近くの通路反対側に「駐車」すると、下の子をベイビービョルンに、上の子の手を引いて男子トイレへ。そう、上の子はまだ一人で公衆トイレに行けるくらいの歳ではなかったのです。

 

男子トイレ?もちろん男子トイレです。自分の性自認を疑いだした初期だったと思いますが、育児に忙殺されていたこともあり、社会的にはそれまで通り完全に男性として生活していた頃でした。もちろん今と違って男性の服装でも「男装」しているという意識はありません。男子トイレ内で開いている個室を見つけてはいってドアを閉め、上の子――娘です――を便座に座らせたまではよかったのですが…… 

 

なかなかおしっこの気配がありません。かなり切羽つまってたはずなのに。でも娘の表情はみるみるうちに曇り「お父さんここ男子トイレでしょ?男子トイレやだ、女子トイレでおしっこする」「男子トイレ臭すぎ!」 うぐぐ… 確かに臭い… でも女子トイレ一人でいけないでしょ?「お父さんに女子トイレついてきてもらわないとやだ」 え、そんなむちゃな。ごめん、女子トイレは無理だからここでなんとか、と懇願する私の前で娘は半べそに。私の頑固さが遺伝してしまった娘はこうなったらてこでも動きません。

 

魔の3歳児?(こちらでは「terrible threes」と言われてます) 子供の泣きべそに私が弱かったこともあるかもしれません。他に選択肢がない、時間もない、娘のためだったら通報されて逮捕されても仕方がない、と覚悟をきめるまで一瞬でした。もれそうで泣いている娘をつれて男子トイレを飛び出すと、くるっと見回して躊躇せず隣の女子トイレへ。

 

速足で歩きながら「I’m sorry!  Emergency!」と言い訳しつつ開いている個室を探します。 洗面エリアには34人の女性がいましたが皆さん驚いて顔をしかめる余裕もなかったみたい。中にはクスっと笑った人もいたような。個室に入ってやっと事なきを得ましたが、用が終わって娘と一緒に手を洗ってるときはちょっと気まずかったです。その間下の子はずっと前向き姿勢でベイビービョルンの中。(便利なアイテムでした) 女性のみなさん、日本で男性が「ごめんなさい!緊急事態!」なんて言いながら女子トイレに乱入してきたらどう思いますか?幼児連れだったらOK?それとも即通報?

 

こういう事態だとファミリー・身障者向けのトイレはありがたいのですが(こちらではタンデムベビーカーでそのままはいれる大きな個室があったりします)、大きな施設だったにも関わらず男子トイレを飛び出した時には周囲に見つかりませんでした。ファミリー・身障者向けのトイレの新設はスペースもとるし配管から区画割までやり直しの改装になるでしょうからコストも高く、なかなか進まないのは理解できます。こんな貴重なスペースをトランスジェンダーは全員そちらを使うべき、というのは無茶ですね。

 

性別違和が頂点に達してどうしようもなくなったのはこの出来事から8年ちょっとあと。そしてHRT開始は10年近くあとのことでした。

 

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