米国とイランが戦争終結の「覚書」に調印しました。今後60日間で詳細、具体的な部分を詰めて正式な同意書に署名する予定とのことです。今回の「覚書」に目を通してみましたが、主要な点はホルムズ海峡の封鎖を解くこと、レバノンも含めて戦闘行為を終結することが主眼となっています。肝心の核開発関連は全て今後60日間の交渉で詰める、つまり先送りですね。イランの経済制裁解除や復興関連も今後の交渉で詰めることになっています。
トランプはホルムズ海峡封鎖を解くためかなりの譲歩をせざるを得なかったようです。 ここまで譲歩するとは予想外でしたが、やはり米国経済、特に原油高に起因する物価高に国民の不満が高まってきているのを無視できなくなったということですね。秋口までやせ我慢するかと思いましたがそれではさすがに11月頭の中間選挙までに物価が沈静化しないということを認識したということでしょうか。
元々トランプの戦争の目的がイランの現体制打倒、濃縮ウランのイラン国外への移送にあったのは明らかでしたが、空爆だけでは到底達成不可能。結局圧倒的な軍事力による一方的な破壊と殺戮の結果得たものはイランの軍事力とインフラの弱体化、そして世界的な物価高の進行だけ。敢えて加えれば米国・イランの相互不信、特にイラン側からの不信と憎悪が増大したこと。核開発関連については交渉中だった2月時点となんら状況は変わっていないというあまりにも当たり前の結果です。超大国が〇能で独裁的なリーダーを持つことの恐ろしさを如実に歴史に刻み込んでしまったわけです。
結局復興資金と凍結資産・経済制裁解除というアメで濃縮ウランのイラン国内で査察下での希釈を実行させるということのようですが、そんな豪華なアメを含んだ提案は戦争開始前の交渉中、2月にしておけば同じような覚書が戦争なしで署名できたはず。呆れてものが言えません。
米国ではトランプの身内の共和党内からも、譲歩しすぎ、これでは米国の敗北だという声が上がっています。でももしトランプが共和党内からの突き上げに屈して「覚書」に記載されている以上の要求を持ち出すようなことになれば、60日間の交渉は暗礁に乗り上げるでしょう。そしてもう一つの不安定要因は完全に覚書の交渉の蚊帳の外に置かれたイスラエル。イスラエルとしてはこの「覚書」の内容で最終同意になってほしくないのは明らかなので、交渉の妨害の最も効果的な方法――レバノンのヒズボラ攻撃を再開する可能性大です。
と書いていたら早くもイスラエルはレバノンのヒズボラ攻撃を再開し、イランがホルムズ海峡再封鎖宣言。今のところ海峡再封鎖は口先だけのようですが、先が思いやられます。トランプがネタニヤフに対してどの程度本気で脅しをかけられるかにかかっているなんて。60日間で同意に達しなかった場合は延長されると思いますが、そうするとさらに中間選挙に近くなってくるのでトランプは国民の目を物価からそらすために姑息な手段を繰り出しそうです。イランと戦争になったのはオバマ、バイデンのせいだとかいいだすかも。
中間選挙まであと4か月半。 世界をこんな状況に引きずり込んだ人物への怒りとそれを支持する人たちへの失望は大きいのですが、 とりあえずは戦闘終結の同意があったことを肯定的にとらえたいと思います。