トランプ政権は木曜、日本でもみんな知っている超有名大学、ハーバード大学の留学生受け入れ認可を停止すると発表しました。まだ詳細がはっきりしていない部分もありますが、それによると9月の新年度からハーバードで学び始めるはずだった留学生の資格取り消し、そして在学生に対しては他大学への転校を要求。もし従わない場合は在学生は米国滞在資格、つまりビザを剥奪されるとのことです。

 

名門校に合格して9月の入学を心待ちにしていた外国からの新入生も在学生も、このニュースを聞いたショックは想像に難くありません。滞在資格を剥奪されれば「不法滞在」。大学生に関しては既にカリフォルニア州の判事が全米有効の滞在資格剥奪の差し止めを言い渡しているはずですし、今回の件に関してもすぐにハーバード側が提訴。これを受けたマサチューセッツ州地裁は数時間でトランプの(留学生受け入れ認可取り消し)命令の差し止めを言い渡しました。

 

でもこの裁判所の差し止めは暫定的なもの。留学生にとってはまだ予断は許せません。ハーバードの留学生の割合は27%に達するそうなので、インパクトはかなり大きいです。そもそもこれって合法なの?もちろん非合法のはずですが、トランプ政権は非合法政策でも強引に進めて、相手側(州政府・機関、大学、企業、個人など)が訴訟に訴えてもどこ吹く風。うまくいけば政権に忠実な判事が事態の引き延ばしをしてくれて時間稼ぎ、だめでも最高裁までこれが行くまではもっと時間がかかるし最高裁の判事はトランプ派が牛耳っているのでひょっとしたら勝てるかもとの目算ですね。

 

何でこんな暴挙をということですが、背景にはトランプ政権の高等教育機関への不信があると思います。以前も述べたように大卒有権者は民主党支持が強い傾向があり(私は当たり前だと思いますが)、特に一流大学はリベラルの牙城、教育が偏向しているという強い思い込みがあるようです。そういった背景の中、昨年4月から5月にかけてガザ地区でのイスラエル軍の攻撃に抗議する大学でのデモが全米で激しくなりました。中には大学の建物占拠や暴力・破壊行為に発展する場合もあり、かなり不穏な状況でした。

 

トランプ政権になってから移民排斥がエスカレートする中で、トランプはこの時の、特に外国人のデモ参加者にターゲットに定め、各大学に学内の「反ユダヤ主義」を厳しく取り締まるよう通達を出しました。特にデモが暴力・破壊行為につながった大学には厳しく、デモや集会の映像・音声の記録、外国人留学生の行動、SNS投稿状況などあらゆる情報の提供を求めます。他校に関してはわかりませんが、ハーバードに対しては大学職員の人事まで政権の介入を要求したと報じられています。

 

これを受けて大学側はかなりの情報を提供したようですが、学問の府である大学としては当然全ての要求をのめるわけはなく、トランプはこれに対し回答不十分として政府からの研究費補助の全面凍結という信じ難い行為にでます。(これも既に地裁から差し止め令が出ています) 留学生受け入れ認可停止というのはこれを更にエスカレートさせたということで、いずれも狙いはハーバードを財政的に締め上げること。徹底的に。そして自分の権力をみせつけてハーバードを全米の大学の見せしめにすること。自分の言うとおりにしないとこうするぞ、というわけですね。留学生にはユダヤ系の人達もいるわけで、反ユダヤ主義を取り締まるなんて名目だけ。真の狙いは全米の大学を自分に服従させることなのです。

 

ある国が留学したいと思ってもらえるようになるのは大変なこと。一朝一夕にはできません。留学してその国の言語と文化に触れてくれる人は双方にとって長期的に貴重な人材です。米国も日本も留学生が来るのは当然だなんて上から目線の態度は慎むべきだと思います。残念ながら米国はトランプ政権になってから留学先としての魅力を恐ろしい程急速に失いつつあります。日本はどうでしょう?

 
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