トランス女性のスポーツの参加はご存じの通り炎上必至のトピックです。でもトランスジェンダーを語るときに避けては通れない話題。このブログを始めたときからそのうち私の考えをまとめたいなとは思っていたのですが、ちょっと難しいトピックなので下書きを始めたままぐずぐずしていました。でもトランプが大統領に返り咲き、トランスジェンダー標的の――排斥、排除、差別容認、存在否定の――大統領令でここ20年あまりの進歩を徹底的に帳消しにするに及び、声を上げられるうちに投稿しておかなきゃ、と思うようになりました。
トランプの憎悪の矛先はトランジェンダーだけではありません。ここでは詳しく述べませんが、有色人種、移民にも向いています。私は移民であり有色人種であり、かつトランスジェンダー。米国は私のような人間が存在否定され、差別される国になっていくようです。移民に寛容な国、民主主義・人権で世界をリードしてきた国のはずですが、残念ながらものすごい勢いで実情が変化しつつあります。
というわけで、前置きがちょっと長くなりましたがトランス女性のスポーツの参加について、私の現時点での考え方を述べてみたいと思います。私はトランス女性が女性としてスポーツに参加することの是非を議論するにあたっては、3つの要因を考慮すべきだと思っています。その3つは (1)そのスポーツ活動(スポーツ大会、競技会・試合)の主目的、(2)トランス参加者の身体的な性別移行の開始時期、参加時点での進行度、そして(3)各競技種目における優位性の男女の身体差による影響――です。もう少し詳しく説明しますね。
(1)スポーツ活動の目的
スポーツに参加する意義はもちろん多様です。エリートレベルの公式競技会なら順位、勝敗、記録の意味は大きいでしょう。でも世の中の多くのスポーツイベントは教育目的やレクリエーション・親睦目的。こういった活動の目的は勝敗、記録以外の部分が大きいと思います。同好会やコミュニティイベントについては最終的に主催者の裁量なので千差万別かもしれません。米国には白人のみOKのゴルフクラブとかまだありますので。
議論を巻き起こしているのは教育機関でのスポーツ活動です。私は基本的に教育機関でのスポーツは若者の心身の健康と教育が主目的なので、トランスジェンダーを性自認と合致した性別のチームから排除するのは趣旨に反するという意見です。これには部活、学校内の大会などが含まれます。
グレーゾーンにはいってくるのは部活の一部としての対外の公式の試合・競技会の場合。特に技能の秀でたアスリートの場合、高校総体レベルになってくるとエリートレベルの登竜門なのでルールの適用は厳しくなります。更にチームスポーツとなると参加選手のハードルはぐっと低くなります。これに関しては次回の投稿で改めて触れたいと思います。
(2)トランス参加者の性別移行の開始時期、その時点での進行度
トランス女性といっても身体的な性別移行の開始年齢、性別移行内容は個々人で大幅に異なります。第二次性徴発現前にホルモン治療をした場合とそうでない場合、ホルモン治療とSRSで体内のホルモン状態が女性になって何年もたっている人もいればホルモン治療すらしていない人もいます。第二次性徴発現年齢もホルモン治療への反応も個人差があるので簡単な問題ではありません。この点はホルモン治療をある程度の期間医療機関の指導下で行い、ホルモンバランスの値がシス女性と同等な状態を維持していることを提示できることが不可欠になると思います。ただこれも勝敗、記録が目的となる公式の競技会レベルの場合です。
次回に続きます。