N病院での初診のお話の続きです。前回いよいよここの医療チームのスター、R先生とZ先生が登場したところまでお話しました。お二人とも気さくで話しやすい印象ですが、泌尿器科医のZ先生はどちらかというと寡黙。説明、質問等はほぼR先生です。

 

一通りの一般的なお話が一息ついたところで私はB病院でも話した例の20年近く前の手術の話を切り出しました。既に詳細は患者ポータルから送信済みでしたが、SRS界の有名チームだけあって多忙な両医師なので初診すらまだの患者(私)の資料に目を通す暇がない可能性も十分あります。

 

下腹部やや左側内部をかなり切っていること。もし通常の膣ありが無理なら仕方ないけどそれでも可能であれば多少の深さは欲しいこと。こういった身体の内部に関してのお話はZ先生の領域でした。Z先生は私の資料にはざっと目を通していたらしく、かなりあっさりと、実際に通常の膣ありにできるかどうかは内部を見てからでないと(つまり下腹部を切って開けてみないと)わからないので通常の膣あり前提で準備をしましょう、とのこと。私は手術から目が覚めた時点で結果を知らされるということです。うーんなんか余計なスリルだけど。

 

一方のR先生は外性器形成のエキスパート。つまり出来上がりがどの程度自然な感じになるかはR先生のメスさばきにかかっているわけです。R先生はここで

「どう、どんな感じになるか見てみる?」

 

R先生が初診の時に手術後の写真を見せてくれることは以前お話したN病院のSRS患者のディスコードで聞いて知っていました。病院選択の時点で術後結果(の写真)をしっかりチェックする人達も多い中で、全くそれをせず友人達の判断をうのみにしていた私は当然好奇心満々で、

「ええ、お願いします」

 

R先生は慣れた感じですちゃっと懐からスマホを取り出すと、

「これは術後6か月」 うわわわわ…  画面いっぱいにアップで写った女性器に完全に面食らっている私に構わず

「これは術後9ヵ月、これは術後1年」 R先生はしゃっ、しゃっと軽やかにページをめくります。いや、そんなに見せてもらっても出来がいいのか悪いのかさっぱりわからないのは経験の少ない私の不徳のいたすところ。もちろん出来のいい写真ばかりなんだろうと思いますが。

 

「これは術後1週間」 うーん、さすがにこれはかなり腫れがすごい。

「2週間後、3週間後… この時点でも傷口の腫れはまだまだ残るけど回復してきているのはわかるでしょう?」 はい、回復してます。ほぼ絶句している私に構わず先生はさらにページをめくります。角度を変えた写真とか、2年後、3年後の写真とか。大勢の患者のものなので見かけはかなりいろいろあった印象です。けれどどれもシス女性のものと外見上見分けがつかない出来栄えなんだと思います。たぶん。

 

黙っているとまだまだ続きそうだったので、私は途中で――恐らく20-30枚くらい見せてくれたところで

「大体わかりました。もう大丈夫です」

「そうね。何か質問ある?」

「あ… ありません。回復が順調になるように準備したいと思っています」

 

ここでやめときゃいいのに私は

「I.....  I hope mine will be added to your masterpiece collection some day」

(私のもいつの日か会心作として先生のスマホに加えてもらえたら嬉しいです)

誠実な賛辞のつもりでしたが言った直後にもしかして皮肉に聞こえたかもしれないとヤキモキする失言?をしてしまいました。
 

日本だと性器の写真が大量にスマホに入っているなんて顔をしかめる人が多いのでは。でも私は自分の「作品」にいつでもアクセスできるようにとのR先生の形成外科医としてのプロ魂、職人魂の現れだと思いました。こんなことで評価上げるなんて私結構変かも?

 

でもこの先生一体何枚こんな写真をスマホで持ち歩いているんだろう?友人と会った時とかに「今日の術後12か月の患者、去年の最高傑作だと思う。みてみて、ほらこれ」とか話題にしてたりして。

 

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