3か月ほど前のこと。夕方スーパーでの買い物のついでにポケモンGOのレイドを画策。ご存じの方には説明不要ですが、レイドは他のプレイヤーと協力してボスモンスターを倒すプレイです。実際にレイドを行う場所にいないプレーヤーも5人まで「招待」することができます。この日は一番強力なクラスのボスモンスターのレイドに友人三人を招待すべく事前準備をしていました。
レイドの場所はうちとスーパーの間からやや外れたあたりにある公園の池のほとり。周囲1キロ程の人口池に雁や鴨がのんびりしていて、ちょっとした散歩には恰好の場所です。現地へ行くのは私一人。つまり私が友人3人を招待するわけで、池のほとりで私は景色を楽しんでいるふりをしながらスマホで忙しくチャットをしていました。
ところがその忙しいさなか70前後と思しき男性が私に声をかけてきました。
男性: 「ここ(公園)きれいだね。よく来るの?」
私: 「ええ、時々来ます」
私は女性の姿の時はきらきらした石のはまった(いかにもな婚約)指輪をこれ見よがしに左手薬指にしているのでナンパではありません。でも今はレイドのカウントダウン中。招待した友人達がちゃんとリモート参加できたかどうかの確認、バトルの準備とかで忙しいんですけど。
男性: 「ああ、池の写真を(スマホで)撮っているんだね」
私: 「ええ、そうです」 (全然違います。そもそもスマホのカメラは地面向いてます)
男性: 「出身はどちら?」
私: 「日本です。でもだいぶこちら長いので」 (ちょっと今ほんと忙しいんですけど)
男性: 「私はルーマニア出身。エンジニアでした」
私: 「ああ、そうなんですか。ルーマニアは行ったことないけどぜひ一度行ってみたいですね」 (ああ、どこの訛りだろうと思ったらルーマニアなんだ。でもレイド始まったからバトルに集中させて!)
レイド中ふらふら歩くといわゆる歩きスマホになってしまうので、池のほとりから動けない私は恰好の話し相手になってしまったようです。いろいろ話かけてくるのを私はいかにも興味なさそうに、スマホばかり見て上の空で適当に相槌を打っていたのですが、その人かなり暇だったみたい?バトルに首尾よく勝利してモンスター捕獲段階に入ってもまだ話しかけてきます。
男性: 「家では日本食食べてるの?旦那様も日本人?」
私: 「いえ、米国人です。日本食も時々食べるけどパスタの時もパンの時もよくありますよ」 (旦那さまじゃないんだけど。パスしてるのは嬉しいけど伝説ポケモン捕獲中なんで気を散らさないでほしいんですけど)
男性: 「でも前から疑問なんだけど、アジアの人って未だに箸を使っているの?ナイフとフォークという遙かに優れた道具があるのになんでまだそんな原始的なもの使っているわけ?」
これにはさすがに参りました。フォークが箸より優れているなんてマジで思っているわけ?箸がフォークより原始的?箸文化圏の名誉にかけてここはいかに箸のほうが優れているか論破してやる!と息巻きかかった私ですが、はやる気持ちを抑えて 「日本では食べるものによってそれぞれに合ったのを使うんです」と大人の回答をしました。
この頃やっとポケモン捕獲に成功。いまだに「でもステーキを食べるときなんかフォークとナイフの方が絶対いいし…」とかぶちぶちこだわっているそのおっさんをしり目に、
「日本でもステーキの時はナイフとフォークです。お話楽しかった。ではお気をつけて」
強引にかつ不自然に会話を切り上げて早足でその場を離れました。
でもここまで面とむかって箸は劣っている道具なんて言われたのは初めて。優劣なんて考えたこともなかったけど、そう見る人もいるんだ。あのおっさん寿司屋でフォークとナイフを要求して思い切り恥かいたのを根に持っている、とか?そうだったらおもしろいんだけど。