前回、前々回の投稿で3年半ちょっと前に母にカミングアウトした話をしました。理解には程遠くても母の反応は極めて好意的でした。最悪の反応にも心の準備はしていたのですが、

「男とか女とかわからないけどそんなの全然関係ないから。あなたは私の子供だから。どっちでもいいのよそんなの。」そう言ってくれました。

 

カミングアウトから2,3日後、私は母に滞在中に女性として1日過ごしてもいいか訊いてみました。母は

「全然いいけど。好きなようにやってくれて全然構わないよ」とのこと。文にすると投げやりに聞こえますがそんな感じではありませんでした。世間体とか気にしていない肝っ玉母さん、というわけではなく、私のことを信頼しているからこその言葉です。(母は世間体は普通に気にします) 都内のマンションにありがちですが、近所づきあいが全然ない(家族構成どころか隣人の苗字もわからない)ので私が目撃されてもどうってことはないのかもしれませんが、これにはひたすら感謝でした。

 

「じゃ〇曜日に本来の私をお見せしますね」ということでいよいよその娘デビューの日。朝食後、母が用事で出かけた後に着替えとメークにウィッグ。ちょっとした仕事を片付けながら母の帰りを待ちます。カミングアウトの反応はすごく好意的だったけど私の姿を見た途端豹変なんてことはないよね。

 

玄関ドアの鍵の音がしたのでやや緊張しながらそちらへ。ドアが開いて私を見た母の第一声は「ただいまー」私は「あー、お帰りなさーい」……  男装時とまるきり同じ。ああよかった、全然平気みたい。手洗いを終えてダイニングに座った母とちょっと会話を交わして落ち着いた頃訊いてみました。「あのさ、帰ってきて最初に私見たときどう思ったの?」

 

すると、

「うちに全然知らない女の人がいる!この人誰?て思った」「ついに娘がいることも忘れるくらいぼけたか、と思った」「こんな嫁がいたっけ?て思った」 …え?え?え?え?え? そんなに混乱してたの?全然普通の様子だったのに。見知らぬ人がうちにいたら普通はもっと驚くんじゃない?

 

「でもただいまー、お帰りなさーい、ていつも通りだったじゃん」私の疑問に母曰く

「身内だろうとは思ったけど誰だかさっぱりわからなかった。絶対よく知ってる人だとは思ったんだけど思い当たらなかった」 敢えて普通に振舞ってたわけね。さすが。

「あららそうだったの。で、どうして私ってわかったの?」

「話しているうちにだんだん。話し方とか同じだから。いろいろ(性別のこと)話してくれてたこと思い出したし」 うーん。母の脳内で大混乱からのリカバリーが起こっていたとは気が付かなかった。

 

でもこの母の反応はありがたいものでした。ごく近い身内、妻に続いて二人目のカミングアウトも受け入れてもらえるなんて。かなりの高齢なのに。親に受け入れてもらえないトランスジェンダーの人たちだってたくさんいるのに。

 

感謝の気持ちを伝えると母は調子にのって続けます。「昔中高生のころうちの学校女子が女子に憧れるなんてよくあったからレズビアンとか抵抗ないけど。」 ほえええ。そうなの? 1950年代に? ずいぶん進歩的。強がり言ってない? でも強がり?に乗じてダメ元でお願いしてしまいました。

「私のことこれからは娘と思ってくれるとすっごく嬉しいんだけど」

母は「うーん、私はどっちでもいいから。性別なんて関係ないの。」冒頭と同じ返答でした。私はどっちでもいい、てわけではないんですが。

 

数年前に他界した父だとこうはいかなかったかもしれません。かなり考え方の古いところがあったので。でも仏壇では女性の姿できっちり報告しました。「娘の○○です。今一時帰国で東京に戻っています。もうご存じだと思いますが、お母さんに私が娘であることを伝えました。お父さんにも受け入れてもらえたと思っています……(自分勝手な娘でごめんなさい。)」

 

皆さま、よいお年をおむかえください。

 

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