前回今年は米国中間選挙があるというお話をしました。政治の話が絡む投稿をするとどうしてもブログのアクセス数が落ちるようです。でも私は大事な話だと思うので敢えて予定通り投稿します。特にLGBTQ・女性の権利関連に関しては共和党強硬派・トランプ支持者、宗教保守派を中心にここ50年程の進歩を覆す動きがじわじわと進んでおり、当事者としてはかなりの危機感と恐れがあるのです。
今回の中間選挙、特に上下院の結果はもちろんバイデン政権の後半の政策実行能力を左右するという意味で極めて重要です。そしてあまり注目されておらず日本では報道もされてないようですが、州・市レベル(州知事、州議会議員等)ではここ数年共和党の強い各州でマイノリティの投票を難しくするような政策を進める動き(州内の選挙区割り、投票所の設置場所、身分証明要件、不在者投票のルール、投票集計方法などは国政選挙であっても各州政府の管轄です)やなりふり構わないゲリマンダリング(党利優先の不自然な形の選挙区割り)が急速に進んでおり、米国民主主義の根本を揺るがす事態になっています。
ロシア、イラン、香港など例をあげるまでもないですが「選挙がある」ことイコール「民主主義が機能している」ことにはならず、その違いの基盤は意外に脆弱なのです。私は80年代以来無党派なのですが、ここ15年程の共和党の変貌ぶりはあまりにもひどい。選挙に負けた場合は(根拠も無いのに)不正があったと強硬に主張するのもそうですが、公然と民主主義の基礎を攻撃するやり方に共和党支持層が反対しないひとつの要因は情報源となるメディア、そしてそれがどの程度陰謀論に影響されているかにあると思っています。でもそれについてはいずれ別な投稿で触れたいと思います。
残念ながら今回の選挙の結果はかなり悲観しています。中間選挙では政権担当側の(大統領の出身)党が議席を失うのが常ですが、今回はそれに加えてもうひとつ大きな理由―ー中低所得者層を中心に生活が苦しくなっていること――が大きな影響を与えそうです。経済の状況は市場経済が発達しグローバルに各国のビジネスが直結している現在、大国といえど一国の政権にコントロールできることはかなり限られています。それにもかかわっらず有権者は経済状況が悪いと現政権にNoを突き付ける傾向があります。
つまり政策のせいであるかないかにかかわらず大統領の出身政党が票を失うということですね。特に今回は大多数の国民の生活が苦しくなっているので影響は大きいはずです。経験したことのないような昨今の食料品の値上がりに対する米国民の苛立ち、苦境は民主主義の土台を揺るがす危機でさえ上書きされてしまうほどなのです。そうであってはならないのですが。残念ながら。
今回の選挙で民主党が「経済面のでの苦境を救えるのは共和党ではなく民主党である」というメッセージを有権者、特に低所得者層に伝えられていないのは破滅的な戦略の失敗だと思います。銃規制、中絶の問題、民主主義体制の死守は確かに経済より重要な問題ですが、食料品の高騰にあえぐ庶民にそんなことを考える余裕はないのに。
民主的なはずのヴァイマル共和政下なのにナチス躍進を招いた90年前の世界恐慌の頃と同じようなことににならなければいいのですが。6年前のトランプ当選以前はここまで見通しが暗くなるなんて思いもしなかった。日本の皆さんも選挙の時はよく考えて投票してくださいね。民主主義を当たり前と思わないように。