以前の投稿でも触れたとおり、40代後半の私の顔つき、そして肩幅、胸幅などの骨格は20代前半のころより格段に男性的になっていました。20代で移行開始したMTFの方はもっと早く始めていれば完パス楽勝だったのに、第二次性徴が発現する前にホルモン摂取できたらどんなに良かったか、と思っておられると思います。その気持ちはよくわかりますが、30代で始めた方は20代で始めていればパス度ずっと上がったろうに、と思ってますでしょうし、40代の方はせめて30代で始めていればこんなに苦労はしなかったのに、と感じておられると思います。

 

すべてその通りだと思います。55歳で移行開始した私にはその気持ちがそれぞれ痛いほどわかります。でも私からみたら40代で移行開始したMTFのみなさんのパス度の高さは羨望の的なのですよ。たとえそれが20代の方からみたら「パス度低すぎ」であったとしても。逆に60代以降で移行開始した場合は私以上にこの点に関して辛い思いをしている方もいらっしゃるのだろうと思います。

 

MTFに関して日本では特にそうですが、年齢が上の方で性別移行を考えている人たちについて、「もう遅すぎ」とか「今更もう女性にはなれない」といった暴言をシスジェンダーの方、あるいは若いMTFの方から聞くことがよくあり、そのたびに胸が痛みます。高齢で性別移行を開始した私たちにとって、若くてキレイな女性になれない、あるいはなれなかったことは非常な苦痛であり、性別移行後、やれることはやった後で絶望する方も少なくありません。しかし女性とは若くてキレイな存在である、あるいはあるべき、そうなれないんだったら性別移行する意味がない、というのは間違いです。

 

「トランス女性でもキレイだったらOK」というのは「女性はその美しさだけが価値」という差別的な考え方の裏返しです。性別違和に苦しみ性別移行が必要であるならばその決断は年齢にかかわらず尊重されるべきであり、体格、顔つきのパス度、キレイかどうかでその決断の是非を論評することではありません。

 

トランス女性はキレイな女性になりたいから女性になるわけではなく、もともと女性なので女性として社会に認識してほしいというのが本質的な願いなのです。(全員とはいいませんが多くの方がそうだと思います) 当人が女性的な容姿かどうか、キレイかどうかは関係ありません。もちろんその上で女性的な容姿でありたい、キレイになりたい、という願望はごく自然なものであり、シス女性なら当然のように受け入れられている気持ちだと思います。

 

街で見かけたトランスジェンダーをリードして(トランスであることをわかることをreadする、あるいはclockする、と言います)得意になっている方、私たちは自分の身体の「欠点」は痛いほどわかっているのですよ。他人の身体の粗探しをするよりも他人の心の痛みをわかるようになってください。ネット上でパス度の低いトランスジェンダーや高齢で移行を開始することに批判的なコメントを公開してしまったユーチューバーやブロガーのみなさん、早く気が付いて。ネットに公開された情報を完全に消し去るのは難しいかもしれませんが、修正は効きます。まだまだ若いのですから。

 

徐々にであっても社会の多数派の理解が進んで「パス度の低い」MTFも女性として受け入れられる社会になることを願っています。女性への性別移行は若い方、素質のある方だけの特権ではありません。「どうせキレイになれないから」とか「もう遅すぎ」と移行を諦めるMTFが少しでも減りますように。

 

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