前回の投稿で、私の初めての海外旅行では前年の交換留学で実家に滞在した米国の友人を訪ね、アイオワの農場に招待されたお話をしました。今回はその続きです。

 

素材は素朴ながら贅沢に新鮮なランチに舌鼓をうった後はリビングで談笑。友人とその親戚ご家族と日本のこと、友人の日本滞在のことなどを拙い英語でなんとか会話ししていました。しばらくすると農場主が犬の散歩から帰ってきたらしい小学校低学年くらいの――8歳くらい?の――娘と現れ、「ちょっと見せたいものがあるからついておいで」と言いつつ地下室に降りていきます。地下室の一角は雑然とした工具置き場。農場主は「今からこの子shellを作ってくれるよ」とのこと。え、シェルって貝殻?でも私の当時の英語力で分からない単語をいちいち聞き返していたら会話になりません。とりあえずはこの女の子が貝殻で何か作ってくれるんだと思って拝見させていただくことにしました。

 

その子は私が見たこともない工具の前にくると小さな円筒形の容器をセット。慣れた感じでそれに黒っぽい粉を注ぎます。そしてシャキンシャキンと手際よく工具のレバーを操作した後、今度は仁丹よりちょっと大き目くらいの銀色のつぶつぶをざらざらーっとその円筒形の容器の中に。えっ、まさか。まさかこの子が作っているのは……

 

その子はさらにシャキンシャキンと工具のレバーを操作して「はい出来上がり!」と作品を私に見せて渡してくれました。この間わずか1分足らず。私の掌にあるのは直径約2cm、長さ7-8cmほど、円筒形のショットガンの実弾(シェル)。簡単すぎ、当たり前すぎなのか得意げな表情すら見せていない女の子には「ありがとう!すごいね!」というのが精一杯でした。いえ、すごいと思ったのは本当なんですが、それ以上にただ唖然。

 

考えてみたらこのアイオワの地、貝殻なんてあまり見かけません。海や山を見たことのない子供たちがいっぱいいるところです。でもこの家庭、小学校低学年の娘に地下室で弾薬作らせてる!?驚きを隠せない私の様子を見てニコっとした農場主は私に「外にこれ撃ちに行こうか?」   ええええまじ!?

 

農場内の砂利道をトラックに乗ってすぐ、右手に雨ざらしの木製ピクニックテーブルが並んでいるところで下車。農場主は一緒に来た相棒?とトラックの荷台から空き缶を数個取り出し、水で満たします。「水を入れとくのは大事なんだ、すぐわかるよ」と言うとその空き缶をピクニックテーブルに接した空き地、30mくらい離れたところに並べました。空き缶の並んだ後ろは申し訳程度に盛り土がしてありましたがその後ろは小さな林。これは射撃場?どう見ても単なる空き地だけど。ライフルなんてうっかり上向きに角度をつけて撃ったら弾丸は少なくとも数百m確実に飛ぶだろうからとなりの農場まで簡単に届きそう?隣の農場がどの位離れているのかはわかりませんが。

 

こちらの心配をよそに農場主とその相棒は持ってきたライフルをつかむとまずは試し打ちです。それまで本物の銃なんて(きっちりホルスターに収まっている日本の警察官の拳銃以外には)見ることが全くなかった私なのにライフルの実弾射撃をごく間近で目撃することに。射手の後ろから息をのんで眺めていると、パーンと乾いた音がして標的の空き缶のひとつが水しぶきを上げて破裂!わ、命中!思わず歓声。

 

空き缶を水で満たしていたのは命中したときの視覚効果のためでした。空の空き缶だと弾丸が突き抜けてしまうだけなので命中したかどうかは着弾時の缶の微妙な動き、弾痕の有無でしかわかりません。いまいちドラマチックじゃないのです。農場主とその相棒は続けて10数発撃ったと思いますが、水入りの空き缶を3,4個破裂させた後は以前から放置されていたらしい空っぽの空き缶を狙っていました。私の視力だと空の空き缶には命中したかどうかはわかりませんが、水入りもまだ3-4個残っているはず。

 

あとでわかったことですが試し打ちでは照準器の調整、確認もしていたみたいです。アイオワの太陽の下、とうもろこし畑の中で(本物の)銃声が響いているのは東京の学生生活の日常からあまりにもかけ離れた世界。ま、それが旅行の醍醐味なんですが。

 

「Are you ready?」 ふと気が付くとピクニックテーブルに座って雰囲気に浸っていた私のそばに農場主が。 「Good, it’s your turn!」というなり銃を私のほうへ差し出します。わわわわわ…… 心の準備をする間もなく私は実弾が装填されたライフル銃を手にしてピクニックテーブルの傍に立っていました。もしかして(撃たせてくれるかも)と思ったけどやっぱりこういう流れ?

 

次回に続きます。

 

にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 性同一性障害(MtF・MtX)へ
にほんブログ村