この話は続きものです。
BLです。
苦手な方はお気を付けくださいませ。
「うおお!着いた!」
「やっぱでけぇなー!」
悠と並んで、
ドキドキしながら展望台へのエレベーターを待って。
開いたドア。
たくさんの人が一度になだれ込む。
ドンッ!
後ろから誰かに押され、軽くよろめく。
「恵、だいじょぶか?」
悠に支えられ、何とか無事乗り込むも。
この状況は・・・
俺の背中は壁側で、目の前に悠がいて。
支えられた状態のまま、彼の両腕に囲まれて。
しかも満員だから、密着してしまう。
これ、あれだ。
満員電車で彼氏に護ってもらってる彼女か、
あるいは・・・壁ドンってやつだ。
ちらり 視線を上げると、すぐそこにある悠のくちびる。
そんな体勢なのに、悠と来たら。
「背中痛くね?平気?」
なんて、俺の心配ばかりしてくれて。
きっと目一杯腕突っ張ってんだよな。
こりゃ、世の女子たちがトキメク訳だ。
触れる胸から鼓動が伝わる。
前髪に悠の吐く息が当たるのまで分かって。
不意に目の前の肩に頬を預けてしまいたい衝動に駆られる。
何だこれ?一体何なんだ?
いや、いかん・・・それはいかん。
己と必死に戦う事、たったの50秒。
長かった、尋常じゃなく長かった。
やっと止まったエレベーターを降りると。
そこはまだ第1展望台で。
「ふー!キツかったな」
そう言う悠の顔を何となくまともに見られない。
伏し目がちになってしまう俺に気付いて、
「気分悪い?ちょっと休憩するか?」
気を回してくれるんだけど。
俺は途轍もなく自己嫌悪に陥ってしまって。
だって悠はこんなに優しいのに。
俺の事気遣ってくれてるのに。
それなのに、何考えてたよ、俺?
サイテーだ。
きっと軽蔑される。
「何でもねーよ、早く行こーぜ」
自分への苛立ちばかりが募って。
顔も見ずに、吐き捨てる様に言ってしまう。
「・・・・・うん」
後ろから静かについて来る悠。
何も話さない。
誤解・・・させたよな。
どうしよう・・・
ほんと俺、ダメなやつだ。
黙ったまま次のエレベーターに乗って。
また向かい合わせなんてもう堪えられないから。
つい顔を背けてしまう。
第2展望台までの30秒は。
さっきの50秒の何倍も長く感じられた。
まるで波が打ち寄せる様に。
エレベーターを降りた人々から感嘆の声が上がる。
そしてそれは悠も俺も例外ではなく。
「・・・うわぁ・・・」
時刻は18時を少し過ぎた辺り。
空一面の茜色のグラデーション。
悠は既に窓に張り付く様にその光景に見蕩れていて。
うん、いい顔してる。
俺まで嬉しくなるような。
思わず微笑んだその瞬間。
悠がこっちを見る。
笑った顔を見られて恥ずかしかったけど。
俺はその場から叫んだ。
「キレーだな!」
悠が満面の笑みで大きく頷く。
こっちへ来ようとするから、手で制して。
俺が彼の元へと歩む。
「な、恵?暫く時間もらっていい?」
「ん?いいけど何で?」
バッグから彼が取り出したのは、スケッチブックだった。
あぁ、当たり前だ。
悠は絵を描くヒトなんだから。
こんな絶景、描かなくてどうするって。
「いくらでも、気の済むまでどうぞ?
その代わり、出来たら見せてくれよな?」
そう告げて、俺は悠から離れた。
出来上がりが楽しみだ。
さっきまでのイライラは、何処かへ吹っ飛んでいた。
展望回廊をひとりゆっくりと歩いてみる。
地上451mだって。
ふ、と悠と俺との距離を思い出す。
455km・・・こっから地面1000倍より遠いんだ。
何か胸の奥がきゅう って痛くなった。
みるみる色を変える空を、ずっと見ていた。
眩い光を放っていた太陽はもう半分ほどその姿を隠していて。
空は少しずつ、藍色を帯びてゆく。
悠はこの空を、どう描くのだろう・・・
見に行ってみようか、悩んでいたら。
小さな女の子が走ってくる。
幼稚園に入るには少し幼い?
それぐらいの女の子。
俺はメモに走り書きを残して。
その子に話しかける。
「ねぇ、あそこで絵を描いてるお兄さんにさ、
この手紙を渡して来てくれないかな?」
女の子は鈴の転がる様な声で、
「うん、いいよー!」
そう言って、悠の元へ一目散に駆け出す。
メモを受け取った悠が振り返る。
女の子も俺のいた場所を指さして、首を傾げている。
その様子を、少し離れたところから見届けて。
悠の表情が和らぐのを。
また鉛筆を走らせるお前を確認して。
俺はそこからずっと。
景色でも、空でもなく。
お前だけを、見続けたんだ。
to be continued・・・
Love you all xxx ![]()