この話は続きものです。
BLです。
苦手な方はお気を付けくださいませ。
悠の世界は、鉛筆1本から拡がる。
それは、黒と白とで構成された無彩色の世界。
だけど俺はそこに、いつだって無限の彩りを感じるんだ。
見る者に雄弁に語りかける悠の絵は。
目で見る以上の、心で見る豊かな色彩に溢れている。
だから、この素晴らしい夕暮れが。
悠の手によって、どの様に描かれるのか。
すごく興味があったんだ。
だけど、俺はそれ以上に。
悠と言うヒトそのものに。
興味を持ってしまったらしい。
一体どれぐらい俺は見蕩れていたんだろう。
首を傾げながら近づいて来るお前の姿。
遅いよな、それ確認してやっと気付くって。
あぁ、もういいや。
「あんまり楽しそうに描いてるからさ、見蕩れちゃったよ?」
そう言って手を差し出すと、渡されるスケッチブック。
「えっ、いいの?」
「今更じゃん。いいよ」
全身の脈が集まったみたいに震える指先で。
白いページをめくる。
そこに拡がる、艶(あで)やかな夕暮れの景色。
思わず目を擦った。
何度も瞬きをして、もう一回。
何だ、これ?
俺がこの目で見たはずの空よりも。
天空回廊から写メった、さっきまでの空よりも。
スケッチブックの中の空は美しくて。
強くて、大きくて、優しくて。
あ、ヤバい・・・俺ダメだ。
悠の生み出した空がぼやけてゆく。
濡らしちゃいけないと思って、
慌ててスケッチブックを返して。
「えっ?恵っ?何でっ・・・」
「悪い、ちょっ・・・トイレ・・・」
そこから逃げ出すので精一杯だった。
「はぁ・・・どうしよう」
まさか絵を見て泣くなんて。
思わず逃げて来ちまったけど、
絶対変に思ってるよな・・・
バシャバシャ 顔を洗って。
深く深く、深呼吸して。
早く戻らないと、また心配掛けちまう。
うしっ!って。
ほっぺたバチバチ叩いて。
変な気合いを入れて。
トイレから出ると・・・
すぐ前に悠が待ってて。
まさかこんなとこにいるなんて、不意打ちじゃん!
なんて事も言える訳なくって。
さっき込めた気合いはどこへやら、忽ち弱気な俺。
俯いたままとぼとぼ、悠の元へと歩いて。
されるがままに、ポスッ と懐へ収まって。
ん・・・?
何か、あったかい。
ポン、ポンと刻まれる背中のリズムが心地いい。
そのままその柔らかさを、
あたたかさを、全身で受け取って・・・
・・・じゃねーだろっっ!!!
何で最初の、ん・・・?の時点で気付かねーんだよ!
ってか、何で悠もこんな事っ・・・
慌てて突っぱねるものの、上手く言葉が出てこない。
悠はそんな俺を、少し眉を下げた困った様な笑顔で見ていて。
「ごめん。嫌だった、よね?」
なんて聞いてくる。
いや、さ・・・
嫌とかじゃ、全然ないんだ、けど・・・
わざわざそう言うのも、何だか躊躇われて。
「何でこんなとこ、いんだよ?」
そう聞くと。
「お前が泣いてトイレ行くからじゃんか」
そのまま返される。
いや、確かにそうなんだろうが。
暫く返答に困ってると・・・
何だか朱い、悠の顔。
何か言おうとして・・・戸惑ってる?
「・・・悠?」
「勘違いなんだ、多分。ほんと恥ずかしいんだけどさ・・・?」
「うん?」
「恵、もしかして俺の絵に泣いてくれた・・・の・・?」
バレてた。
うん、そりゃあのタイミングはバレるわな。
「あー・・・・・ん・・・かな・・・」
消え入るような声で、渋々応えると。
暫くの沈黙。
今度こそ引かれたか、そう思って見た悠は。
顔中を朱に染めて。
必死で笑顔を抑えているようで。
「・・・・・マジか・・・」
なんて、時々呟いて。
そっか。
そんなに変な風には取られてないみたいだ。
「悠みたいだ、って・・・思ったんだ」
「えっ?」
「優しくて、大きくて、あったかくて、さ?」
あー、くそっ!照れんじゃんか。
居た堪れなくて、窓の方へ逃れる。
景色を見る振りをしながら、必死で顔の熱を冷まして。
すぐに追い掛けて来ると思ったのに。
いつまで経っても悠が来ない。
何気なく振り返った視線の先・・・
触れると溶けそうな程柔らかい眼差しで。
悠はただまっすぐに、
・・・俺だけを見ていたんだ。
to be continued・・・
Love you all xxx ![]()