大昔に、ふとしたことから、ファンになったSTHフライリール。
ファンになった理由は、
他にはあまりない個性的なデザインが一番な訳だけど、
その中でも一番個性的なのが、STHジュニン。
金色の穴なしスプールが、なんともクラシックでカッコイイ。
ミッチェルのクラシックな408と同じくらいに、
味わいがありますがな。


フライリールでは、
ソルト用や、両軸受けのクラシカルなフライリールをのぞけば、
そのスプールは、ほとんどが、軽量化と
水にぬれたフライラインの、水はけと乾燥を良くするために、
スプール表面に、多数の穴が開けられているものだけど、
このジュニンは、スプールには全く穴がなく、
本体のリールフット側に、少し穴がある程度。
メーカーの意図としては、
ソルトウォーター用のフライリールにも、力を入れていたSTHが、
外見はソルトウォーターっぽい、クラシックなデザインで、
機能はフレッシュウォーター向けの物を出したかったという感じなのかな?
ソルトと違って、淡水用は、やっぱり軽さが一番なのに、
あえて自重の増す穴なしにして、
しかも、スプール本体の素材は、アルミでなく、
アルミより重たい真鍮みたいなので
ソルト用みたいに、スプールの剛性、丈夫さと、デザイン重視という感じ。
実際、重さをはかってみると、
5~6番のラインが合う、ジュニン6で約138グラム。
これは削り出しのリールで、淡水用の6番としては、ちょっと重い方で、
ちょっと個性が過ぎる感じもして、買うのをためらっていたが
大昔の渋谷のキャンベルで、

このジュニンの6番が、いつまでも売れ残っていて、
値下げをしばらく待っていたが、
レアものなので、待ちきれず、店頭価格のまま買ってしまった。
当時、淡水向けで低い番手のSTHフライリールで一番高かったのは、
エアーウェイトゴールドか、フォークゴールドあたりで、
その店頭小売り価格がだいたい3万円ぐらいだったが、
このジュニンも3万円ぐらいして、
本体のディスク方式も、廉価版STHのニューケンのディスクより、
ちょっと高度で凝った機構なので、
その頃の淡水用STHリールのラインナップの中では、
ハイエンドな部類だったみたい。
ちなみに、ジュニンの約半額というSTHのニューケンの6番ももっているが、
スプールと本体、そっくりそのまま互換性があり、
どちらに入れ替えてもつかえるので、
ニューケンの高級版が、ジュニン、といった位置だったのかも。
メーカーとしては、生産ラインを共有して、コストを抑える意図もあるだろうが、
違う機種との、互換性があるというのは、外国リールのよい所で、
ダイワやシマノも、いつもそうであってほしい所。

 

(↓上段がジュニン、下がニューケン)



ニューケンとジュニンのディスク機構の、
おおざっぱな能力を比較すると
ジュニンのほうがニューケンの3倍くらいの圧力の
ディスクブレーキになるみたい。

(↓ニューケンのディスクドラグ)

 

(↓ジュニンのディスクドラグ)



しかし、このジュニンのディスク方式が、実は曲者で、
ディスク機構の、ドラムの形状を、上から俯瞰して、◎ とするなら
それに外側から接触して、圧力をかける樹脂が、C の形で、
外から、ドラムの ◎ をくるんでいるのだが、
その圧力の調整は、
C の形の樹脂の空いている口の片方を、引っ張って広げて
緩めるようになっている。
これがどういうことになるかというと
普通のディスク方式は、
ドラムに圧力をかける、補助の役割の、樹脂やカーボンの負担は、
圧力が強くするほど、負担が増えるのに対して
ジュニンのディスクは、その効きを、一番弱くしたい時に、
圧力をかける役目の、樹脂のC型のリングの端を、下に引っ張って、
その形状を、外側に拡げて、ディスクドラムへの接触面を減らして、

その圧力を、減衰させるようになっていて、
ドラグが最弱の設定の時に、樹脂のC型のリングには、一番の負担がかかっている。
ドラグの効きがMAXの時に、圧力をかける樹脂の形状が、原型に戻って、
ドラムとの接触面が増えて、締める圧力も最大になるが、その状態が、

ドラムを締める外側の樹脂には、一番負担のない楽な状態になる。
同じSTHのニューケンや、
他のメーカーのディスクとは、真逆の構造になっている。

とすると、淡水用のフライリールというのは
通常は、ドラグは、最弱から、少し上くらいの、
フライラインをリールから引き出すときに
バックラッシュしない程度の強さにドラグをセットしておくのが普通だが
ジュニンでそうしてしまうと、
ドラグの圧力機構の樹脂には、一番形をゆがめる負担がかかるので、
樹脂の強度の劣化が、逆に進みやすいという事。
そして、最弱のドラグの効きの設定で、そのまま置いておくと
ドラグのドラムを締める樹脂が、
原型から、すこし外側に拡げて、ゆがめられたままの形状になるので、
常にそのままで置いておくと
ドラグの圧力がどんどん通年劣化していく事になる。
このジュニン6のドラグの効きが、
なんだか、昔より弱くなったなあ、と感じたのは、
ひょっとして、そのせいなのか??(笑)
そのため、STHリールの中で、このジュニンだけは、
使わないときは、ドラグのつまみを最強の状態にして保管しておき、
釣りで使う時だけ、最弱のレベルにドラグを調整することにしている。

穴なしで、真鍮スプールというだけでなく、
ディスク機構も、通常のものとは正反対の所を行くというのは
さすがSTHリール、
他社とは違い、常に、ナナメ上を狙っている(笑)


そしてこのジュニン6。
初期エアーウェイトや、フォークと同じで、
ハンドルがぐらつく欠点も、いつもどおりで、
やむなく、ハンドルの根元と外周フレームの隙間に
アルミの短いピンを挟んで、かためて補強する羽目に‥。


しかも、リールフットが、どのリールシートにも、あまりフィットしない形状で、
特に、木のピラーで、ニッケルリングで固定するリールシートには、
相性が非常に悪くて、
泣く泣く、リールシートを削って、塗装をはがすことになった(涙)

(↓オリジナルのリールフットは、黒)


そして、真鍮スプールという事で重くて、、
3~4番の、軽いカーボンのフライロッドに乗せると、
手元だけ重くなってギクシャクして、あまりフィットしない感じ。
バンブーに乗せると、見た目は、すごくバンブーとマッチするのだけれど、

全体が重すぎて、手首に負担がかかって、すぐ疲れてしまい、
これもあまりピンと来ない…
昔、フライ関係の雑誌で、
『重いバンブーには,重いリールの方が合う。』といった意見を
目にしたことがあるが、自分が一度
バンブーに、重いジュニン6と、軽いCFOⅢを乗せて試してみたけど、
軽いCFOの方が、ぜんぜん使い勝手がよかった気がする。

自分のバンブーが、安物だったせいかも知れないがwww

結局、3~4番のカーボンやバンブーロッドを使う釣りでは、あまり出番がなく、
7番の9フィートで使うには、ラインキャパシティがいまいち足らず、
5~6番の9フィートのカーボンに乗せるのが一番かな、という感じだが、
でも最近、自分は、川の中流域や湖で、
カーボンで、5~6番の9フィートを使う機会が、あまりないなあ…

(↓ジュニン6を小渓流で使う時は、7~7フィート半くらいの

  カーボンより重く、バンブーよりは軽い、

  グラスロッドと組み合わせるといい感じ。

  見た目も、ジュニンの個性的なデザインが

  グラスロッドのオモチャっぽさにマッチする感じw)

 


このジュニン6、いろんなロッドで組み合わせて、
いろんなところで使ってみて、傷だらけで、
見た目は、歴戦の猛者なのだが、
なんだか、記憶に残る戦果の思い出が、そんなにない気がするw
それでも、暇なときに、これを手に取って、眺めたくなり、
手にとっては、無意味にハンドルを回して、
カタカタと音を鳴らしてみたりもする。
開高さんの「花終る闇」に出てくる女性の『さびしさの石』が
自分にとってのジュニンなんだべか…
でもこのジュニン6で、
一度はでっかい虹を掛けてみたいものだがwww