ある釣り師に対して、
鷲のマーク、と言ったら? という質問を投げかけて、
ある製薬会社の名前の答えが返ってきたら、
その人は、釣り師としてはきっと、モグリ、である(笑)

鷲のマーク といったら
やっぱり、フェンウィック、と答えるのが、
釣り師の義務だべさ(三平くん談w)

 



リールについて、ずっと自分のあこがれは、ミッチェルだったけど、
ロッドに関しては、フライ用でも、ルアー用でも

フェンウィックのグラスロッドがそうだった。
あのバットのコルクグリップ付近の、クロス巻きの飾りと、

まるでプロレスのチャンピオンベルトのような、
あの鷲のマーク、のあるロッドは
ミッチェルと同じく、
自分にとっての、永遠のグッドデザインで、
そのロッドで、ヤマメやイワナをガンガン釣ってみたい、
なんていうのが、ずっと憧れだった。




だが自分がフライ釣りや、ルアー釣りに熱中し始めた1991年ころは
アメリカのフェンウィックは、衰退していたみたいで、中国製に移行していて、
フェンウィックのロッドの設計の中心人物だった、
ジム・グリーンという、フライ業界ではかなり有名らしい人も、
フェンウィックから、セージの方に移ってしまっていたらしくて、
釣具屋での、フライ用品のコーナーでは、

新品はあんまり店頭に見かけることも少なく、
他の有名メーカーより、少し影の薄い感じがしていた。
カーボンのフェンウィックは、少数置かれていたが
それだと、「鷲のマーク」はあっても、
グリップ上のクロス巻が、カーボンではなくなってしまっていて
フェンウィックらしさが減って、なんだか寂しくなった感じ。
そうなると、中古のヴィンテージものしかないが
これはこれで、高価なものが多くて、なかなか手が出せなかった。


しかし、2000年ごろに、
主にフライロッド中心で、
なぜか、ひそかに「グラスロッドのブーム」が起こって、
フェンウィックも、フライ竿やルアー竿で、
日本向けのグラスロッドを、台湾製か、中国製で復刻した。
その値段がカーボンよりも安めの設定だったこともあり、
早速、フライロッドで、数本を買って使ってみた。
それはそれで、充分よかったのだが
全盛期のアメリカ製のフェンウィックも、

フライロッドでも、ルアーロッドでもいいので、
一度は手にしてみたいなあ、などと思っていた。



それから、また時間が経って、とうとう、
フェンウィックの古いグラスの、4ピースロッドのルアーロッド、
ボイジャー Voyageur 5フイート9インチ シリアルNo.459052 を
ヤフオクで、14000円の安値で入手できた。
古いフェンウィックでは、3~4ピース以上のマルチピースロッドを
トラベルロッドとして「ボイジャー」という名称で
いろんなバリエーションで出していた頃の、一品と思われる。

(中古なので、その頃のフェンウィックの定番の三角プラケースは

 ついてなかったが、

 4ピース用の緑のソックスはオリジナルと思われる。)


届いた品は、さすが全盛期の品と思えるような、
しっかりした作りこみで、
過去に使い込まれている感は、結構あるが、
ワイアーガイドの糸溝もなく、ロッドの曲がりもなく
ガイドのエポキシのコーティングにヒビが入っていたのと、
グリップのリングが緩くて、新しい時代のリールをセットするのに
ブカブカで緩すぎるので、
やむなくゴムシートを張り付けるしかなかった、とかの
ちょっとした難点はあったが、
他に目立った不都合はない立派な品。


ただし本来バットのグリップ上のクロス巻の近くに、
「鷲のマーク」が位置するのが普通だが
この竿は、バット上の3番目のフェルール上に
「鷲のマーク」が離れて位置していて
それだけは、ちょっと寂しかったが、
それ以外は、十分現役で即使える感じだった。
その鷲のシールにも、ちゃんと「made in USA」の文字が入っていた。

(ほぼまっすぐで、グラスにしては、かなり力強い感じ。)

(ガイドのスレッドのエポキシには、通年劣化のひび割れが)

(リールシートが、ブカブカだったので、泣く泣くゴムシートを貼る…)

(グリップ上のクロス巻と、鷲のマークが離れ離れなのが

 ちと、寂しい…)


しかし、部屋でつないで振ってみると、かな~り硬い。
アクションは、全くウルトラライトでなく
カーボンでのライトアクションぐらいに硬い。


かなりの不安が、頭をよぎったが、
まあグラスロッドなので、
魚を掛けさえすれば、きっと曲がってくれるだろうと考え、
とりあえず現場で使ってみたら
不安は的中。


8寸ほどの、鼻曲がりが少しあるような、
立派なオスヤマメを掛けたのだが、
これがなぜか引き味がない。
まるで10cmのカワムツ君を掛けた感じ。
その時は、台風後の増水時で、
普通は8寸のオスヤマメがかかったら、結構な引き味のはず。
その後、同サイズのニジマスを釣るも、同じ感触。

これでは、1本5000円のカーボンテレスコピックの竿の方が

まだ釣り味がある感じ。

(これらを釣っても、カワムツ君の10~15cmサイズの感触)

もともとこのロッドは、

アメリカのひろ~い川で

30~40cm以上のニジマスやバスが
平均的に釣れるような場所で使うべきロッド、なのでは?

 

‥‥自分がよく行く小渓流で、

チビヤマメたちと戯れるような釣りには、

オーバーパワーすぎるロッドだった。
湖や下流の大川で、8~10グラム前後のルアーを使うのがちょうどいい感じ。

うむむ、困った。
自分がよく行く、島田湖での、大物ねらいには、いいかもだが、
普通の小渓流で使いたいなあ…
でも硬すぎる。


そして、考え抜いたあげく、
ティップと2番目だけを自作して、オリジナルの3番とバットとつないで、
「ウルトラライト化」をめざすことにした。


早速ヤフオクで、古いワイアーガイドを多数購入。
肝心のブランクは、今回は振出ではなく、並み継のロッドなので
テーパーの緩やかなブランクが必要だと思い、
近所の「キャスティング」で、渓流竿より仕舞寸法が長い、
仕舞寸法1m前後のグラスの安いのべ竿を数本買い、
またヤフオクで、グラスの古い「へら竿」5本で5000円なんてのを
買い集め用意。

(昔懐かしワイアーガイドを用意)

(ブランク素材もできる限りかき集めて…)

 

 

 

 

とりあえず、ティップと2番目のみ自作して、

オリジナルとそこだけ差し替えて、ウルトラライト化をねらう。

ティップと、2番目めの、フェルール=竿のつなぎ目、については
ティップがチューブラー(中空)の穂先だと、
2番目との接続が、フェンウィック伝統の、
「フェラライトフェルール(逆並み継)」で作れたのだが、
それ以外のソリッドで作るティップと、

2番と3番とバットとのセクションとの継ぎは、
テーパーの問題で、フェラライトフェルールにするのは、
かなり難しいのが分かった。

特に、今回は4ピースのマルチピースなので

もともと、最初からフェラライトフェルールにする予定で

各セクションが、かなりの急テーパーで、

設計されたブランクでないと、

フェルールの形状まで、コピーするのは難しいと思う。
(どうしても4ピースでグラスでフェラライトフェルールをやるとすると
 かなり超小継の渓流竿でテーパーが急なものを探して
 そのブランク同士を、前後逆で、つなぎ目も外側で組み合わせて
 ブランクをつなぐような必要がでてくるが、
 そうすると継ぎ目の合う組み合わせのブランクを

 たくさん用意する必要があり
 ブランク自体も肉厚の薄いものになり
 トルク感のないロッドになってしまいそう…)


そのため、継ぎ目は、昔のオーヴィスのロッドのように、
短いブランクを、ブランク下部の末端の外側に1本追加して、メス側とし、
それでオス側の先端部を、外からかぶせるようにメス側でつなぐという、
スリーブフェルールにした。
オス側の内側に細いペグを挿入し、メス側と連結する
スピゴットフェルールに比べると
アクションはモッタリした硬めになるが、スピゴットより強度はある。

(一番上が、2番目セクションの先端部

 真ん中が、フェルールに段差のある、スリーブフェルールのティップ

 一番下が、フェルールに段差のない、フェラライトフェルールのティップ)



ブランクの塗装は、
下塗りに、アスペンのラッカースプレーの赤・黄・黒を
ペットボトルの下部を切り取って作った、コップの底に吹き付け、
気に入った色になるまで調整して混ぜて、
ハケの手塗りで、ブランク全体を塗装。
色の混合比は、黄色が多いと濁った感じになり
黒が多いと、暗いブラウンになりフェンウィックらしくない色に、
赤が多めだと、フェンウィックらしい
「ミルクチョコレート的な、赤茶色」になる感じがした。

そして、このラッカーの下塗りの後、

その上にウレタンを塗り重ねることになるが、

そうすると、色合いとツヤが少し変わってくるので

それを想定に入れた上で、色を調整した方がいい。


 

下塗りが済み、十分に乾ききったら
ガイドをスレッドで止め
その後は、一液性ウレタンのアクセルのウレタンコートを使って、
ガイドの金属部と、フェルールのオス側の接触部を除いて、ブランク全体を
全塗装する(お前は、ラス・ピークかよ!…笑い)
全塗装は、一回を薄く、なるべく気泡が出ないように、慎重丁寧に塗り、
それを4~5回重ねる。
そうすると、塗装はぶ厚く、固まりかけのエポキシみたいに、
表面がフニャフニャして、爪をたてるとフニャリと食い込むような、
あまりいい感触にはならないのだが、
強力な固めのビニールで、ブランク全体を覆った感じで、
キャスト時に、ブランクにルアーが当たった時でも、塗装が欠け落ちにくいし、
塗装の完全乾燥後の、ひび割れもやや起きにくい、と思われる。

(いろいろ試したが、一液性のウレタンコートは

 オフィスアクセルのウレタンコートが、一番だと思う。)

 

そうして、とりあえず、完成した、自作の2番目と、自作ティップ2本。

(真ん中から下の2本が、オリジナルの2番とティップ)

 

それで、自作ティップ+2番目と

オリジナルの3番目とバットの組み合わせで、

実戦で試してみたが、まだまだ硬い!

 

‥どうやら、3番目のセクションが、一番硬く突っ張っているので

アクションが、どうしてもライトアクションぽくなってしまう感じ。‥

 

 


そこで3番目も作成。
これはバットとの継ぎ目にかなり苦心。

オリジナルの3番目は、ブランクのテーパーがかなりキツイので

(フェラライトフェルールで、短い長さのマルチピースとなると、

 このような急テーパーのブランクになってしまう…)

オリジナルのバットに合うように作るには、
継ぎ目のスリーブを2つ重ねての、テレスコピック状態になってしまったが、
これでも、オリジナルよりは充分柔らかい3番目になった。
しかしこれでは「鷲のマーク」がなくなってしまう!

(一番上がバット

 上から二番目が、オリジナルの3番目セクション

 上から三番目が、自作の3番目

 上から四番目が、自作の3番目の塗装前の状態。

 フェルール部が、スリーブ2本のテレスコピック状態になってしまったが、

 それでもオリジナルの3番目よりは柔らかい。)

 


そして、自作のティップ+2番目+3番目と

オリジナルのバットをつないで、現場で使ってみたら

やっと、自分が小渓流で使いたいような、

ウルトラライトのアクションになった。

 

しかしここまで作ったのなら

あとはバットだけじゃんという事で、
「鷲のマーク」だけ売っているのを探して、
「フェンウィックプチティギャル」を入手。

 

そして、結局、最終のバット部も自作。
グリップは、すべて良質のコルクで作り、
リールを乗せる側面のみ、グリップを平らに削り
そこにリールフットをのせて、

アルミパイプから切り出した2つのリングで、はさむ形に。

 (アルミパイプは、直径25mm、厚さ1mmの物から

  17mmの幅で、2個を切り出してリングを作る。

  リングの内側の円周は、いつものようにやすりで角をとって丸めて
  リールフットや、リールシートのコルクを痛めないようにした。)

 

写真上が、オリジナル。下が自作のバット。

「鷲のマーク」も3番目でなく、めでたくバットの

コルクグリップ上部の、クロス巻の上に収った。

 

鷲マークと同じく肝心な、クロス巻については、

ユザワヤで、クロス巻の糸の材料になる、白と茶の編み糸がないか探したが、

どうしても見当たらなかったので

日輪の補修糸の、中サイズの、白と茶を組み合わせて、作ることにした。

この補修糸は、ウレタンでコーティングしても

色が変色しない加工のものであることが大事。

 

 

日輪の補修糸の中サイズで、適当な長さを、白糸を2本、茶色を1本、切り出し、

白+茶+白、の順で横にならべて、その端をセロテープで止める。

 

それを、クロス巻の、始点と終点になる所の、バットのブランク下側の

フックキーパーを固定するために巻くスレッドが、

ティップ側に対して、巻き終わりになる予定の位置に、

先の補修糸を、テープで固定し、

まず往路をらせん状に、巻きあげていく。

 

往路を5回ほど巻きあげたら、

今度は折り返して、復路のらせんを巻き下げていくと、

クロス状の模様が出来ていく。

 

巻始めの始点まで、糸を巻き下げたら、テープで固定し、

つまようじの先で、形を整える。

フックキーパーをつける位置の、直線上に、クロス巻の糸がクロスする各点が、

全てきっちり直線に並ぶように、形を整える。

 

巻きあげたクロス巻を、真上からみた感じはこうなる。

 

クロス巻を、真下からみた感じはこうなる。

真横からの状態。

クロス巻を、上から見ても、下から見ても、横から見ても

きれいに見える様に、きっちり仕上げるのは、意外と根気のいる作業。

何度も、巻きなおしたり、巻いた後、楊枝の先で修正したり、と

フェンウィックのコピーは、けっこう大変。


結局、別の竿が1本、出来てしまいましたw。
ぽんこつ作、Fake Fenwick。

5フィート6インチ。4ピース。ウルトラライト。

(一番上の、竹色のブランクがなぜ写真にあるかというと

 それぞれのセクションが、無計画に、逐次作られて、長さがバラバラになり、

 バッドが短すぎるので、この状態で竿袋から出し入れするとなると、

 竿袋に手を突っ込んだ時に、長いティップの先を折る心配があるので、

 竿袋収納時のトラブル回避用のブランク。)

ついでに、ティップも、最初作ったチューブラー穂先の物と、
太いソリッド穂先のティップのほかに

軽量スプーン用の細いソリッド穂先も作成。
ソリッド穂先の太い方を使うと、ブランク自体の重さで
竿のアクションがよりスローになり
これぞ「グラスロッド」という、
ぶよぶよの、腰抜けアクションになった(笑)

ただし、ソリッド製のティップは、

最先端がソリッド、中間がチューブラー、フェルール部にチューブラーの

3つのブランクの組み合わせの、テレスコピック構造になってしまうので

境目に段々ができてしまい、ちょっと見栄えは劣るw




それからさらに、ついでに、自作のバットとは別の、

細い直径のブランクを使ったバットと、短かめの新しい3番目セクションも作って、
それを最初に作った自作ティップと、2番目とつなげると、
5フィート3インチの、スーパーウルトラライトのロッドに変化。



ついでに、そのなかで、短い3番目のセクションだけを外し、
細いバットと、元の2番目とティップを連結させると
4フィート6インチの、3ピース、スーパーショートウルトラライトに変化。



また元の自作の太いバットと3番目のあいだに
エクストラのセクションを追加して、
ティップをソリッド細ティップにして
グリップの下部に、フライリールをセットすると、
6フィート8インチの、5番で、5ピースのフライロッドに変化。

ただグリップは、リールフットを置く面は平らに削ってあるので、

フライロッドとして使うときは、

グリップ中央あたりの握りぐあいが、あんまりよくないのが欠点。




ちょっと、やりすぎだろ、って感じだが
全盛期のフェンウィックは
フライとルアー兼用のコンポジッドロッドを、色々と出していたので
これはこれで、正統的な、
Fake Fenwick(笑)

思えば、オリジナルの5フィート9インチのロッドと
自作したオプションロッドを合わせれば、
川の源流から、下流部、湖までほぼカバーできるではないか。
これが本来の、理想のマルチピースなんじゃないだろうか?

さて、オリジナルのフェンウィックについては
今後は島田湖あたりで、

がらにもなく、大物を目指すときに使おうかな。
妄想でなく、一度50cm近いニジマスをばらしたことはあるのだが、
でも、今までで島田湖で50cm以上となると、
ニゴイ君しか釣ったことのない、
コイ科にしかもてない、

自分がそこにいたのであった(笑)

さて今夜は、
オリジナルの「鷲のマーク」のフェンウィックロッドと、
自分で作った、「エセのフェンウィック」を、

交互に手に取ってながめつつ
酒でも飲もうかな?
酒は、ビールで、サカナは、焼きうどんで(笑)

 

 

 

★作ったロッドを、実際の釣り場で試した記事は下記リンクです。