誰もが知ってる釣り漫画、「釣りキチ三平」の中で
竿の釣り味=魚の引き、を最大に堪能するために、
ススキだか、葦だかの茎という、

あえて、一番弱々しい材料を使って、竿を作り、
それでヤマメ釣りを試す、というような話があって、
いざ現場でヤマメがかかって、
最高の釣り味を楽しむが
ススキ竿がすぐ折れちまって、しょんぼりかと思えば
実は、それを最初から想定していて、
そんなこともあろうかと、
替えのティップのススキ竿も用意していたのさ、
なんていうオチの、エピソードが多分あったと思う。

それを自分が、何時ごろに、マンガで読んだのかは、
かなり昔のことで、はっきり思い出せないけど、
すごく印象的で、ずっと記憶に残っていた。

(実際はこのエピソードはアニメオリジナルで登場するのもので、

 釣る対象のサカナも、フナかヘラブナが相手だったようです。)



要は、釣り師にとって、その釣り竿が、
デザイン良し、性能良しでも、
肝心の魚を釣った時の、「釣り味」が良くなければ、

意味がないという事で、
その3つが揃って初めて「理想のロッド」になるのかも。
そして、「ススキの茎」の竿は
その3つの大事な要素の中で、
「釣り味」を最優先した極端な例なのかも。


そして、川の中流、清流域で
オイカワやカワムツなどの小魚相手に、

フライフィッシングをやる時は、
だいたい長さ8~9フィート前後で、
低い荷重の番手の、2番~4番の竿を使うのが普通だが、
でも市販の9フィートの2~4番のフライロッドは、
バッドは、ほどよく曲がっても、
先端のティップ部分は、エサ釣り竿などに比べると、
どうしても、硬く作られていて、ガイドも多いので、
先端部は突っ張りがちで、
小物相手だと、魚がかかっても、
一発で抜きあげて終了、という感じが多く、
いまいち釣り味のなさに、ちょっと不満だった。

最近はかなり軽量で細めに柔らかくして、
引きが楽しめるようなロッドも、たくさんあるみたいだけど、
そうすると、竿のカーボンのブランクの肉厚が、極端に薄くなり、
芯のない、ごく細の、ストローで投げてるみたいな感触で、
使い込んで愛着が沸いた頃に、あえなくポッキリ、という事も多い。

それで、今回は、9フィートで
清流の、オイカワやカワムツの10~12cmくらいの
小物を釣っても、充分楽しいフライロッド、のコンセプトで
竿を作ってみようと思った。

そして、またしても、振出式で作ることに。
素材も前回のルアーテレスコピックロッド同じく、
格安エサ釣り用のグラス竿、VSやすらぎをブランク素材にして作成。
今回は、前回のルアー用としての場合とは違い
ティップの先端は一切カットせず、
途中のガイドも極力減らして、釣り味を追及。
エサ釣り竿をフライロッドに改造したというより、
エサ釣り竿に、ガイドとグリップをつけただけ、
というシンプル構造に。


(メインのブランクと、トップカバー用の2つの短いブランクと

 遊動ガイド用の細い中空ブランクを用意。)



もし、フライ、ルアー、エサ釣り竿、の3つで
同じ15cm以下のヤマメを釣ったとしたら、
たぶん、釣り味=魚のヒキ だけは、エサ釣りの竿が一番になると思う。
だから、今回は、

エサ釣り竿を、フライ竿に改造するのでなく
フライ竿の方を、なるたけエサ釣り竿に、近づける、
というコンセプトwww


それで、作ったのがこんな感じ


9フィートの5番のグラスの振出竿。
小物が相手なのに、なんで5番なんだよ!
しかも、この太すぎるバットは何なんだよ!とツッコまれそうだが、
(5番のフライラインの先端9mは、ほぼ9グラムの重さ、
 9グラムのミノーを投げるような負荷とだいたい同じ。)
しかし、川の中流域は、山の渓流より、風が強く激しい時もあるし、
遠くでライズする魚には、どうしても遠投が必要になるときも多い。
細すぎるティップでも、グラスの柔軟性で、5番の重さをいなして、
ぶっといバット部で反発してぶん投げ、遠投力もかせぐもくろみ。
そして、ティップと、2番目の、グラスの柔らかさで
小魚の釣り味を、たのしめれば、いいなあ、なんて考え。
もし9グラムの重さに、あえなくティップが折れても、
元が量産品の格安グラス竿なので、替えティップは簡単に見つかるので
落ち込むこともなし。

 

リールシートは、集積コルクの角柱を東急ハンズで買って来て、

ドリルで真ん中に穴をあけ、竿の尻に突っ込み、

それを円柱状に削り、一液性ウレタンでコーティング。

ウレタンは、ミノーをコーティングするために使われる

オフィスアクセルのウレタンコートで、

湿度に感応して硬化するタイプでなく、

溶剤が揮発して硬化するタイプの物を使う。

そこに、直径30mm 厚さ1mmのアルミパイプから15mmの幅で切り取った

リングを2つをかぶせて、それでリールフットをはさんで

リールをセットするようにした。

2つのリングは、必ずその内側の円周の角張りを、紙やすりなどで削って丸めて、

リールフットやリールシートを痛めないようにする。

 

 

 

グリップ上部にも、集積コルクをつけて、ウレタンでコートして、

グリップ先端部のカケ落ち防止。

フックキーパーは、ステレンスの安全ピン(大)の

シャフト部分を切り取って整形して自作(笑)

 

 

バットから、2番目セクションまでのガイドは、

ブランクの先端部にスレッドで、

格安ガイドを、巻き付留めてコートするだけなので簡単。

 

 

 

ティップ部は、トップガイドと2番目の遊動ガイドのみ。

ワイアーガイドの材料は、フックキーパーと同じく、

ステレンスの安全ピン(大)の

シャフト部分を、切り取って整形して自作。

43cmの長さのティップに、

遊動ガイドがひとつだけとは、無謀な感じで、

あっさり折れるリスクはあるが、

これでティップが突っ張らず、

小魚の引きを楽しめるのでは、と思う。

ソリッドの穂先で、

カーボンでこれをやると一発で折れるが

グラスならなんとか踏ん張ってくれるのでは。

 

 

そもそもフライロッドのティップのガイドは

数が少し多すぎるような気がする。

フライラインを投げるのに都合よい、スローアクションにするためと、

ティップの強度を上げるためだが、やっぱりティップが突っ張りがちになる。

上から、スコット グラファイト2番のティップ

2番目、オーヴィス グラファイト3番のティップ

3番目、チャイナ格安グラファイト 4番のティップ

4番目、今回の自作ロッドのティップ

ぱっと見ても、4番目以外は、

荷重の番手が、2番から4番という風に違うのに、

ティップの太さはほとんど変わらない感じ、

ティップの太さは変えないで、

バッドの強さと太さを調整して、番手を変えている感じがする。

 

 

ティップの、トップガイドと、2番目の遊動ガイドは、

ティップを極力軽くするために、ワイヤーガイドにする。

ワイアーガイドの材料は、ステレンスの安全ピンの

シャフト部分を切り取って、整形して自作するが、

普通のペンチだと、針金を曲線に曲げられず、角ばってしまうので

ほんとはそこで、ループワイヤープライヤーを使う所だが

自分は持ってないので(笑)、百均で安く買ったペンチを改造して使う。

ペンチの先端の片側の左側だけを、右側との接触部をわずかに残すくらいに

表も裏も、板やすりなどで周囲を削って、内側の角ばった箇所を丸く削って

円形の棒状になるように丸める。

それで、針金をはさんで、角を削って丸くした

左側に巻き付ける様に沿って曲げて行くと、

円に近い曲線で、針金を曲げることが出来る。

これは、スピナーを自作する時にも使える。

簡易で安価な、ループワイヤープライアーの代用となる。

 

ちなみに角ばったままのペンチではさんでまげると、

こんなに角ばったものになってしまう。

(フックキーパーなんかも、これで自作できる。)

 

 

このループワイヤープライアーの代用を使って、

トップと2番目のワイヤーガイドを、2個作成。

ピンが指に刺さらないように、ピンの先端をカットしておいてから作る。

トップガイドの径は、大きめにした方がいいと思う。

フライラインがずり落ちるデメリットはあるが、

フライラインが、トップガイドに引っ掛かった時に

ムリにラインを引っ張って、ティップを折ってしまうという

痛いことをした事があるので、自分は大きめの径で作る。

 

作ったワイアーガイドを、

短く切った細い中空ブランクの上に乗せ、

スレッドで止めてコーティングし

ティップに通せば、トップ下の2番目の遊動ガイドが完成。

 

トップガイドは、ティップの最先端部を、

左右からはさむような形でセットし

スレッドで巻いて固定しコーティング。

 

 

それから、トップガイドのワイアーの輪っかの根元の、

ティップの最先端部の所に、

百均の、十分間で固形化するエポキシを垂らし、肉盛りして、

ゆっくり整形しながら固める。

こうしてトップガイドを通過するフライラインが、

ガイドの根元に接触しても、ラインが傷んだりしないようにする。

 

後は、トップカバーで

市販のものを用意するか、自作する。

 

これでとりあえず完成。

 

 

 

 

さっそく、ぶらりと、いつものY川に行き、

小1時間ほど釣りをして、試してみた。

 

自作ロッドは、中華安物フライラインでも充分にキャストできて

釣りに目立った不都合はなかった。

 

オイカワは、2匹ほどしか釣れなかったが

その引きは、かなり良くて、楽しめた。

あまりにも、小気味よく暴れるし

ネットも持って行かなかったので

写真をとることもやめたくらい。

 

自作のロッドが釣り味が、想定通りよかったのは、

竿が狙い通りに、作れていたのか

ただ今回のオイカワが、元気すぎるだけだったことによるかは、不明ww

 

今回作った竿が、自分にとっての、

「三平君のススキ竿」になったかどうかは分からんが、

しかし、「理想のロッド」を求めるのは

けっこうな努力が要るもんだべさ…