台風が近づいていることもあり、
雨が降ったり、
止んだりの繰り返しです。
さて、今日から夏休み!!
「学校の宿題は早めに終わらせるのが私です」
(ある魔法少女の真似)
気合い入れていきます!
さて今日も小説を・・・
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
江戸時代――商いが栄えているこの時代に町の少し外れの方で店を構えている一人の少女がいました。彼女はいつも左の手首に地面に付く位長い紐を結んでいました。
彼女の店には、月に一度彼が来ます。いいえ、彼しか来ませんでした。この店「蜜織-みつおり-」にはある時から客が一人しか来なくなってしまっていました。そんな店のたった一人の店員と彼のお話です。
自己紹介
まず、自己紹介をしますね。私の名前は沙織【さおり】。布屋さんを営んでおります。私が作っておりますのは、すべて手づくりですので、とても良いものが仕上がっております。お店の宣伝はこれ位にしましょう。今日は少し心が高鳴っておりまして…不愉快な思いをされたなら申し訳ありません。昨日も一昨日もその前も彼は来ませんでしたので、六月も終わりである今日は来て下さるはずなのです。さて、一日を始めましょう。
ちゅんちゅん、と小鳥が鳴き始める前の静寂を破って、沙織は店を開ける準備を進めていた。
「今日もいい天気です。こんな日は麻布の天日干しをしなくてはなりませんね」
沙織は外に出て、水をまいた。パシャッと音を立ててはじけて、そのまま隣にただずむ、花が咲いていないあじさいに降り注ぐ。沙織が下をのぞくと、小さなかたつむりがゆっくりと葉に上ろうとしていた。ふと視線をずらすと左手首に結んであった紐まで濡れていた。
「はわぁ…急いで乾かさなくては、縮んでしまいます。扇子はどこに仕舞いましたっけ?心当たりがありません。どうしましょう」
沙織がわたわたと店の中に入っていくと、中に一人の男の人がいた。彼は優雅な仕草で立ち上がった。
「どうしたんだい、沙織。そんなに慌てて。沙織?」
沙織はそんな彼の言葉に目もくれず、箪笥の中をあさろうとした。しかしその行動は、彼によって阻まれた。彼は沙織の手を後ろから捕まえて、ささやいた。
「どうしたの?落ち着いて僕に話して?」
沙織はそこで一瞬我に返ったが、また気が動転してしまった。
「わっかりましたから、手は離してください、手は!そういうことするなんてずるいです、道貴【みちたか】様。紐を早く乾かさなくては、いけないのです!」
道貴は紐に触れてから困ったような顔をした。
「この位ならすぐに乾くから大丈夫だよ、沙織」
そう言うと、沙織は顔を赤らめた。
「そうなのですか?」
すると、沙織はすぐにまだ手を握られていることに気付いてさらに顔を赤くした。
「み…道貴様、お手を放して…いただけ…ませんか…?どうか、お願い、します」
道貴は失態をさらしたような顔をした。
「ごめん、ごめん、つい…ね」
「つ…ついなのですか?一番酷いですよ。そんなことを〝つい〟でやってしまうなんて」
道貴は苦笑交じりに笑った。
「それにしても、その紐をそんなに大事にしてくれているなんて思ってもなかったな。あの時はとても嫌がっていたから、すぐに捨てるのかと…」
道貴は独り言のように呟いた。
「そんなことありません!人様から、しかも道貴様から頂いたものを乱雑に扱うなどいたしません」
沙織はそれに、と続けた。
「私のお傍にいてくださる人は道貴様だけなのですから」
そこで沙織は話が暗くなっていることに気付き、話題を変えた。
「そういえば、道貴様は私にこの紐を下さった時の事を覚えておいでですか?」
「もちろん。沙織が僕を嫌っていたこと位覚えてるさ」
沙織はギクッとした。
「そういう事ばっかり覚えていらっしゃるのですね」
道貴はにこっと笑うと、沙織の背後にあった絹の布に手をかけた。黒と濃いめの赤で仕立て上げてあるものだった。
「これ…」
沙織は後ろを見て、商品の説明をした。
「そちらの品は一流の店、施秀【せえい】で調達した絹を使った物になっております。肌触りも良く、長くお使いして頂ける様に仕立てております」
それだけ言うと沙織は下がって他の商品のお手入れをしに行った。沙織はできるだけお客様に気に入った物を買ってもらおう、と考えているからである。
商品を半分程並べ終わった時、からからと店の戸が開いた。そこにいたのは、白猫だった。沙織は迷い込んでしまったのかしらと思い、猫を抱きかかえようとした。
「そこの女人、わが主がどこにおるか知らんか?」
「…猫さんがお話に」
そう言うと、猫は肩を落とした。
「そうか、我のことも知らぬか。では我はこれにて、」
「待って下さいませ。猫さんの主のお名前は?」
身をひるがえし始めていた猫はそのままの姿勢で答えた。
「龍智【りゅうち】、と言う男だ」
「え…お父様が?」
「なにっ!では左遷された娘と言うのは其方か!」
猫は心底驚いたような顔をした。それもそのはずである。流されたはずの人間が今目の前にいるのだから。
道貴は沙織が立ちすくんでいる事に気付き、慌てた。
「何かあったの?沙織?」
「お父様に仕えていらっしゃる方がお見えになって」
沙織がそこまで言うと道貴は前に出て言った。
「沙織がここにいる事をばらすなら容赦はしないよ」
白猫はそんな脅しにすました顔で答えた。
「はっ。主に進言しなかったら我の首が飛ぶわ。それに、容赦などいらんわ。我の力を見くびってもろうては困るのう」
すぐに猫はその場を去ろうとしたが、道貴が行く手をふさいだ。猫は怪訝そうな顔をした。
「なぜ主の娘を庇う?貴様には関係無いであろう。娘に関わるとろくな事はないぞ。今なら間に合う、手を引け」
道貴は真っ直ぐに相手を見つめた。
「僕の大切な人だから守らなくちゃいけないんだ。後悔しないためにもね」
「…」
白猫は押し黙って、後ろにいた沙織を振り返った。猫は何も言わなかった。
「あ、あのう。猫さん?」
「猫ではない。嗣鬼【つぐき】じゃ」
独り言のようにうつむきながら、小さくそう言った。辺りがだんだん暗くなり、しばらく静けさがその場の空気を満たしたが突然、嗣鬼が顔を上げて言った。
「来てしまうかもしれんの」
「え?何がですか?」
「わが主とそのお付の者じゃよ。娘は見つかったらよくないのじゃろう?建物の中に入っておれ」
沙織と道貴は二人とも首をかしげた。
「なぜ助けるんだい?進言するなら…」
道貴が、助ける必要がないじゃないか、と続けようとした時、嗣鬼が言った。
「助けてやる気になったのじゃ。おぬしの大切な人を守りたいのであろう?光栄に思え」
すると道の奥の方からざっざっと言う足音が聞こえた。道貴は咄嗟に沙織の腕を引っ張って店の中に入った。すぐに足音は店の前に来て、嗣鬼と二言三言話していた。
「大丈夫でしょうか」
沙織はハラハラしていた。
道貴は黙って戸の方を見ていた。しばらくすると話が止み、また足音が響いた。そのまま足音は遠ざかった。
「助かったみたいだね」
「ばれなくてよかったです」
空にはまだ太陽がいた。
嗣鬼は帰る道中で一度だけ振り向き呟いた。
「我は後悔しっぱなしだったのう…若雪【もゆき】」
まだまだ恋愛(?)モノは
上手ではありませんが、
これからたくさん書いて行きます。
多分・・・。
いや絶対!!
(PS>よかったらコメントをください)