縦横無尽に地をはった太い木の根をまたいでしばらく歩みを進めると、道に沿うようにまばらだった木々がしだいに密集し始め、日光が遮られた周囲は昼間とは思えないほど暗くなっていた
終始無言だったあたしたちの中で、最初に言葉を発したのはカイだ
「 なぁちーくん。もうだいぶ歩いてるけど、本当にこの道であってんのかぁ?」
カイの隣ではカリンが額に汗を浮かべて、軽く息を弾ませている
森に入ってグループごとに分かれてから、もうかれこれ1時間以上は歩き続けていた
カイの言葉を聞いて、先頭を歩いていたチトセが足を止めてこちらを振り返る
「 地図では、まっすぐ進めばこの先に大きな谷があるはずなんだ。ほら。」
チトセは制服のポケットから丁寧に折りたたまれた四つ折りの紙を取り出すと、カイにそれを手渡した
カイが地図を広げたのをあたしとカリンが横から覗き込む
茶色く古びた様子の地図はところどころ端が破れているが、森の全体像を知るには十分なほど詳細に描き込まれており、左端には御神木が祀られている祠と思わしき目印が描かれていた
「 オレたちが今いるのはこの辺り。」
チトセの長い指がカイの向かい側から地図の右下を捉えた
10センチほど右にずらせば、先ほどあたしたちが入ってきた森の入り口と重なる
「 このまま進むと少し行った先に…ここだ。谷がある。」
チトセは指を道に沿って左になぞり、地図の真ん中あたりで止めた
目をこらすと、谷の形だろうか。うっすらとくすんだ水色の線が地図を両断するように描かれている
「 ずいぶんでかい谷だなぁ。」
カイが驚きの声をあげた
「 ああ、でもホウキを使えば渡れないこともないだろうし、谷の向こう側に着いたらあとは地図をたどれば御神木のある祠を見つけられるはずだ。」
チトセは自信満々に言うと、地図をたたみながらまた歩みを再開した
あたしの横ではカリンが良かったぁと胸をなでおろしているが、あたしの気持ちは複雑だ
( どうしよう…このままあっけなく御神木を見つけちゃったら、絶対パティ先生に怒られる。でも、どうやって邪魔をすればいいの…? )
考えを巡らせながらちらっとカイを見ると、なぜか悠々とした深緑の瞳と目があった
そしてその薄い唇が小さく動く
《 任せろ 》
カイはすぐに目をそらしてしまったけど、そう呟いたように見えた
( 任せろって…カイ、どうするつもりなんだろう。)
あたしが不思議に思っていると、カイがいきなり前を歩くチトセの肩を抱いて言った
「 ちーくん、おいらちょっと疲れちゃったよ~。少し休憩しよーぜ。」
振り向いたチトセは嫌そうに眉を寄せたけど、それはおそらくちーくんと呼ばれたことに対する嫌悪だろう
休憩に関しては賛成なようで、そうだな、と返事をして適当な大きさの石に腰を下ろした
あたしとカリンもスカートを押さえながら石に座る
座る時にカイと目があったが、カイはなにを考えているかわからないような顔であたしを見つめた
( ほんとに、何をするつもりなんだろ…。)
あたしにはまだカイの考えを読み解くことは出来ないみたい