「 よく頑張りましたね。」
「 へ?」
思いもしなかった先生の言葉に、変な声が出てしまった
「 えーっと、なんのこと? 」
ますます混乱するあたしを尻目に、先生は机の引き出しから一冊の本を取り出した
それは今日の試験で使った魔法書だけど、その皮の表紙には黒く焼け焦げた後がある
「 合格条件は、この魔法書にかかった封印を解くことでしたね。」
今日の試験は、パティ先生によって開かなくなった魔法書の封印を、生徒が一人ずつ教卓の前に出て解くというものだった
でも最後だったあたしは封印を解くどころか、間違えて火の魔法を唱えて魔法書を燃やし、あやうく灰にしてしまうところで…
てっきりそのことで怒られると思っていたのだけれど、パティ先生はとても怒っているようには見えない
「 確か合格したのはカイだけだったと思うけど。」
「 ええ、あの子は封印を打ち消す魔法で見事合格しました。ですが実はもう一人、合格者がいます。」
「 もう一人? 」
あたしが見ていた中では、封印が解けたのはカイしかいなかったけど…
カリンもチトセも封印を解くことはできなかったし
あたしが首を傾げていると
「 この魔法書には元から不思議な力が備わっており、本来ならば多少のことでは傷つきません。
しかしあなたは火の魔法でその力をしりぞけ、さらには私のかけた封印魔法まで業火で消し飛ばしてしまったのです。」
パティ先生はそう言って、手に持っていた魔法書をパラパラとめくってみせた
それって…っ
「ってことは…もう一人の合格者って、あたし!?」
思わず声がうわずってしまった
そんなあたしの様子をみてパティ先生は静かに頷いた
まさか、間違えて使った火の魔法で封印を解いていたなんて…
考えてすらいなかったことに、喜びと驚きが入り混ざって頭が真っ白になる
「 そういうわけで、あなたたち二人は追試験を免除します。
課題も居残りもありませんよ。」
「 ほんと !?」
思わず椅子から立ち上がると、パティ先生に静かに!と一喝された
でも、追試も課題も居残りもないなんてまるで夢のようだ
( たまたまだけど合格したことに間違いはないんだし、素直に喜んでいいのかなぁ!)
今まではテストは赤点だわ宿題は忘れるわで、いつも三者面談のあとは怖くてママの顔を見ることができなかったけど…
ママの嬉しそうな顔が頭に浮かび、自然と顔がにやけてしまう
パティ先生はそんなあたしを見て、表情を少し引き締めた
「 ただし、あなたたちには手伝ってもらうことがあります。」
「 うんっやるやる!なんでもやる!」
嬉しさのあまり心の中で小躍りしながら返事をすると、先生はメガネを光らせて言った
「では、しっかり頼みますよ。」