「…はぁー。」
あたしは今日で何度目かわからないため息をついた
朝からずっと、胸の奥に言いようのないモヤモヤが引っかかっている
「フウカちゃん、そんなにため息ついて、何かあったのぉ?」
机を挟んで座っていたカリンが、前からあたしの顔を覗き込んできた
「 いや~、また宿題忘れちゃってさぁ!あはは 」
カリンに嘘をつく罪悪感から目を合わせられず、あたしは顔を机に伏せた
ーーーーーーーーーーー
昨日パティ先生に頼まれたこと、それはシンプルかつ簡単なことだった
『 追試験の妨害をお願いしたいのです。』
パティ先生はすっかりいつもの厳しい表情に戻って言った
『妨害?それって、追試の邪魔をするってこと…?』
『 ええ、実は追試験ではさらに実践に近い内容を課そうと考えているのですが… 』
そこで言葉を切って、先生は困ったように眉を寄せた
『 想定していたよりも不合格者の人数が多いため、教師側の手が少し足りなくなってしまったのです。』
まぁ合格したのは各クラス二、三人しかいないし、不合格者が多いのはわかるけど…
『 それとあたしたちが皆を妨害することと、なんの関係があるの?』
あたしがそう聞くと、先生は質問には答えずにあたしの目を覗き込んだ
『 惑わせの森は知っていますね?』
惑わせの森…?
『………えっと、なんとなーく?』
あたしがそう返すと、先生は「 教科書に載っていたでしょう… 」と言いながらも、改めて説明をしてくれた
惑わせの森は私たちのお城があるこのエリニュエス大陸の南側に位置していて、切り立った崖や巨木が特徴の大きな森らしい
極めつけは、迷い込んだ者を惑わせたり、様々な幻影を魅せて森から出られなくするのだとか
森の存在は知っていたけど、まさかそんなにはた迷惑な森だとは思わなかった
なぜ先生はそんな森を話題に出すのだろう…
『 まさか、その森で追試をするとかじゃないよね~。あはは 』
そんな物騒な森なんて入ったら、追試どころじゃ…
『 残念ながら、そのまさかです。』
なんと、テストでは当たったことがないあたしの勘は見事的中した
『 な、なんで !?』
『あの森には命を脅かすほどのトラップはありませんし、悪くても幻を見る程度です。
何かあれば森で待機している先生方がかけつけるので、安心なさい。』
そんなことを言われても怖いものは怖いんだけど
びびってるあたしを無視して、先生は話を続けた
『 皆さんには数人程度の複数のグループに分かれてもらい、こちらで用意した課題を森の中でそれぞれ達成していただきます。しかし、』
先生はあたしの肩に手をおくと、諭すように言った
『 ただ課題を課すだけではいつもの実習と変わりありません。なにか困難な壁にぶつかり、それを乗り越えてこそ、追試験の意味があるのです。』
つまり、その困難な壁というのがあたしたちの妨害だと…
( 友達の試験の邪魔なんて、気が進まないどころかやりたくないんですけど! )
『 ほんの些細なことで良いのです。
あなたたちにはあらかじめ課題の内容を教えるので、簡単には達成できないようにさりげなく邪魔をしてください。
わかりましたか?』
パティ先生は“さりげなく”のところを強調し、念を押すようにあたしを見つめた
『 …は、い。』
そんな先生の視線に耐えきれなくなり、あたしはとうとう小さく返事をしてしまった