父の愛人と会う事になり、その約束の日、娘を夫に託し、わたしは一人地元へ帰ります。駅前のホテルの喫茶店で待ち合わせをしています。
わたしは、喪に服し、黒いカーディガンに黒真珠のネックレスを付けていきました。
直前から、すごくすごく本当にすごく緊張しました。もちろん顔なんてわかりませんから、喫茶店に入って、店内を見回し、どの人が愛人だろう、先に気づかれるだろうか、と心臓がバクバクしました。まだ来ていないようで、先に席に座り、待ちました。
するとそこへ、一人女性が入ってきて、真っ先にわたしの前に現れ、泣いていました。
この人が父の愛人なんだ。本当に存在していたんだ。遠く大阪から来てくれたんだ。その時点で、父への強い想いを感じ、言葉も交わさず、二人でしばらく手を握り合い泣きました。