261年18日


4年前のこの日に比べると、今日はずっと落ち着いている。
やはり一度経験しているからだろうか。


4年に一度の白夜の年。
順調にエルネア杯を勝ち上がってきて、今日は決勝戦。
4年前は父キースとの対戦だった。
今回は親友ロドリゴくんとの対戦だ。


そして、ことしもこの日に試合があるのだなぁ…と、嫌な予感もしていた。
というのも、毎年18日はだいたい試合がある。
エルネア杯だけではなく、近衛騎士隊は毎年トーナメントがあるからだからだが、18日は親友エウヘニョの誕生日なのだ。


忘れもしない、4年前のこの日から誕生日に限ってエウヘニョが食事に行ってくれなくなった。
試合のある日は朝か夕刻からしか食事には誘えない。
昼からは試合の準備があるからだ。


朝は何かと忙しい。
家族からお出かけに誘われたりデートに誘われたりするし、今年は成人した友人の子供の婚活を見守っていたりもする。
だから必然的に夕刻から誘うことになるのだが、4年前からずっと断られ続けているのだ。


いつもではない。
誕生日の日以外は普通に食事に行ってくれる。
なのに誕生日だけはダメなのだ。


理由を聞くといつも答えは同じ。
“ちょっと忙しい”
確かに畑仕事は毎日のことだから大事だ。
家族との交流だって大事。


でもそれはいつもの平日だって同じだろう?
誕生日に限ったことではないだろう?
普段は大丈夫で誕生日がダメな理由にはならないだろう?


エルネア杯の決勝戦にも気合いが入っているが、今年こそはエウヘニョの誕生日を酒場で祝わせてもらいたいと気合いが入っている。


とりあえずは対戦相手である親友ロドリゴくんに宣戦布告をして退路を絶っておく。
絶対負けないからな!




その後、食事はともかく誕生日プレゼントだけでも先に渡しておこうとエウヘニョに会いに行く。
プレゼントは喜んでくれるんだよなぁ…











夕1刻。
王立闘技場。
観客席の万雷の拍手の中、僕とロドリゴくんは闘技場の中央に進みでる。


観客の拍手に手を突き上げて答えた後、2人向き合って胸元に武器を掲げて最敬礼をする。
いよいよロドリゴくんとの対戦だ。


ロドリゴくんは2回戦で父キースと対戦するはずだった。
しかし、父はその前にガノスへと旅立ち、親友と父の対戦を見ることは叶わなかった。


その時から、このまま勝ち上がったら決勝でロドリゴくんと戦えるかもしれないと思っていた。
それはそれで面白そうだと。
それが実現した。


もちろん真剣だ。
全力を尽くす。
でも、楽しみたいとも思っていた。
ロドリゴくんとは職業が違う。
近衛騎士の僕と魔銃兵のロドリゴくんでは、普段対戦することはまずない。
エルネア杯だからこそだ。
だから、この戦いを楽しみたい。


ロドリゴくんの顔を見ると、表情が硬い。
緊張しているのだろう。
この国に旅人としてやって来た次の年には魔銃兵へ志願して、エルネア杯は今回が初めてだ。
魔銃兵になって2年目でエルネア杯に出場するだけでも凄いのに、決勝まで勝ち上がったのだ。


ロドリゴくんと目が合った。
僕は“肩の力を抜いて”と伝えたくて、肩をちょっと上下させた後微笑んでみせた。
ロドリゴくんは少し目を見張ったあと、ふっと息をついてからぎこちなく微笑んだ。


さあ、全力で行こう!
そして、楽しもう!












先手を取れたのは僕。
ここはロドリゴくんには攻撃させてはいけない。
1回でも攻撃をミスれば終わりだ。
僕は深呼吸してから、慎重に狙いを定めた。


ドォォン、ドォォン、ドォォン、ドォォン…
4発の銃弾が、一度も外れることなくロドリゴくんに届く。


ロドリゴくんが膝を着いた瞬間、審判を務めている神官ジュリアンが「そこまで!」と、大きな声をあげた。
4年前はレナルドさんが務めていた神官が、親友ジュリアンに変わっている。
彼もエルネア杯の審判を務めるのは初めてだから気合いが入っているように見える。
そんなジュリアンが、勝者として僕の名前を誇らしげに叫んだ。


すぐに治療を受けたロドリゴくんと互いの健闘を讃えあって、続いて表彰式が行われた。










冷静に考えてみると、この空間は僕の親友だらけだ。
対戦相手も、審判も、そして国王すらも親友だ。
こんなことはもうこれきりかもしれない。
いや、4年後もこうであればいいけれど…


国王イェルシーから身に余るお言葉をいただいた。
21日の護り龍との戦いは全力を尽くすと、陛下に約束をする。










試合が終わり闘技場を見回す。
先程の試合の時には観客席で僕を応援してくれていたエウヘニョの姿が見えない。
導きの蝶を使って居場所を調べてみると北の森にいた。
移動が早いなぁ…


会いに行って食事に誘う。
しかし、やはり断られてしまう。

今年もダメなの?
なんで?

いや、畑仕事しないと。

今じゃなきゃダメなの?

だって、ユーリの応援のために畑仕事後回しにしてたからさ。

それは…ありがとう。
でも、1日くらい畑仕事しなくったって…

ユーリ…
畑仕事は毎日やらなきゃ。
それが上手に野菜を育てるコツだよ。

それはそうなんだけどさぁ…

ごめんね、また今度誘ってよ!

いや、別の日じゃ意味がないって…
ちょっ、まっ、、


エウヘニョは足早に農場通りに向かって行ってしまった…
はぁ、今年もダメかぁ…
来年………も、きっとダメなんだろうなぁ…🥺








夜家に帰ると、妻と娘がおめでとうと今日の勝利を祝ってくれた!
エウヘニョの件で勇者になった喜びが霧散仕掛けていたが、やはり家族はいい。
一瞬にして癒してくれるし、勇者になった誇らしさを蘇らせてくれる。
やはりうちの妻と娘は世界一だ!



次は龍騎士目指して頑張るぞー!!