263年20日
今年も星の日がやって来た。
当たり前なんだけど。
去年の星の日に産まれた第三子ヒューブが1歳の誕生日を迎える。
妻の髪の色と困ったような眉と、僕の目と口とを受け継いだヒューブが、今日から外の世界へと出て行く。
子供が外の世界へと出て行くという経験は3度目ではあるけれど、やはり毎回心配でたまらなくなる。
娘たちは全く問題もなく友達を作り、楽しげに学校へと通っているけれど…

まずは家族でお祝い。
子供たちが仮面を付けていたら何だかお祝いムードがないかなぁと、あえて昨夜仮面を渡さなかった。
真ん中に大きなケーキを置いて、ヒューブには我が家の伝統“カレー英才教育”を施す。
他の家族には僕がラゴステーキを用意した。
娘たちがヒューブのために“ハッピーバースデー”を歌ったり、ヒューブが言った「もうすぐおとなかな〜」という言葉に、流石にすぐに大人にはなれないかなぁ〜などと突っ込んだりしながら和やかに朝食を食べ終えた。
朝食後、妻から仮面を貰ったヒューブにお小遣いをあげようかと声をかけたら「買いたいものがない」からいらないという。
娘たちは喜んで受け取っていたけど、堅実な子だなぁ。
子供が1歳になったら先ずは親が一緒に外へと連れ出す…というのが我が家のやり方。
ヒューブもお出かけに連れ出した。
この国でなにか困ったことがあれば頼ることになるウィアラさんに合わせるために酒場へ。



酒場へ入るとウィアラさんがいらっしゃいと声をかけてくれ、僕が連れているヒューブに目を向けた。
僕が「息子のヒューブです。1歳になったので」と言うと、ウィアラさんは合点して「困ったことがあったらいつでも来ていいのよ。それにお腹が空いた時もね」とヒューブにひとつウインクを投げて寄こした。
仮面を付けていたのでヒューブ合点どんな顔をしたのか見れなかったのは残念だ。
もしかしたら、歳上の綺麗なお姉さんからのウインクにドギマギしてるのかも…なんて考えたらにやけてしまった。
ウィアラさんが料理を運んでくれて(それにしてもウィアラさん、何故ヒューブには季節の魚料理で僕にはサラダなんだ?)先程朝食を食べたばかりなのに、再びご飯を食べ始めた。
ヒューブくん美味しい?
「うん、おいしー」
ウィアラさんの料理は美味しいからねぇ。
「カレーもおいしかったよ」
ヒューブくんカレー好き?
「うん、すきー」
そっかぁー、じゃあいっぱい食べて大きくなろうね!
「うん、ボクはやくおっきくなってガッコ〜いくんだ」
学校…は、すぐには行けないけども…
「ねぇ、パパ〜」
ん?どうした?
「きょうはおかしもらえる日でしょー?」
そうだよ。
「ウィアラさんにもおかしもらっていーの?」
…どうだろうねぇ?
そういえばパパは子供の頃、ウィアラさんにお菓子ねだったことないなぁ。
くれるのかなぁ?
「くれなかったらどろだんごぶつけていい?」
絶対ダメ!
なんか分かんないけど、分かんないけど、パパがすっごい怒られる気がする。
「ん〜、わかったー。こちょこちょするだけにするね」
…いや、それもダメな気がする。
パパがいっぱいお菓子あげるから、ウィアラさんにはねだらない方向にしない?
「ええ〜…うん、わかったー」

その後は、知り合いの子供たちにお菓子をあげつつエナの子コンテストを見学。
今年は知り合いがたくさんノミネートされてて、誰に投票するか迷ったなぁ。
昼にヒューブの居場所を調べたら、何故かエルネア城にいたので、再びのお出かけに誘いに行った。
今度はせっかくの星の日ってことで、水源の滝でワフ虫を見ることに。
「パパ〜、ここいっぱいワフ虫いるねぇ〜」
そうだねぇ。
綺麗だねぇ〜。
「つかまえてもいい?」
お家で飼うことは出来ないから、手に乗せるだけならいいよ。
まあ、乗ってくれないとは思うけど。
「…すぐにげちゃう」
うん、パパもワフ虫捕まえられたことないねぇ。
「ええ〜、つまんなーい」
滝の壮大さを楽しもうぜぇ。
「…みずがいっぱいだねぇー」
………君にはまだ早かったようだね。


去年はそれこそヒューブの出産で妻はあまり外に出られなかったし、僕も出来るだけ妻のそばにいたかったのであまり星の日を楽しめなかった。
特に毎年星の日に行っているニヴの丘へのデートが出来なかったのが残念だった。
なので妻は、今年のニヴの丘デートは殊更嬉しそうだった。
「やっぱり星の日のニヴの丘って綺麗ねぇ」
うん、やっぱりリカちゃんとニヴの丘に来ないと、星の日って感じがしないなぁ。
「そうねぇ。特別な日には必ずニヴの丘に来てるものねぇ」
お気に入りの場所だからねぇ。
「ここの眺めは最高だもの」
特に星の日はね。
「そういえば、ヒューブくんとのお出かけはどうだった?」
あの子は大物になりそうな気がするなぁ。
「そう?」
物怖じしないね。
ウィアラさんに泥団子投げようとしてたからね。
「ええ?!まさか、本当に投げちゃったり…」
大丈夫、ちゃんと止めたから。
「ああ、良かった。…これから目が離せなくなるのかしら?」
うーん、大丈夫じゃないかなぁ。
ダメって言ったら渋々だけど止めたし。
言えばわかる子だと思うよ。
「ならいいんだけど」
3人それぞれ個性が出て来ていいじゃない。
賑やかになってさ。
「そうねぇ。家族が増えて楽しいわよねぇ」
じゃあ、4人目いっちゃう?
「………流石に体力きっついわ」
………ですよねぇ。






