263年29日



今日は愛娘ベアトリスの5歳の誕生日だ。

5歳…
つまり2日後には成人するということだ。


…早くないか?
もう成人してしまうのか?
つまり成人したら異性との、その、出会いとか…


いやいや、うん、僕自身がね、娘にはボビーを紹介しているわけだけども!
だから出来ればボビーと付き合って欲しいなぁとか考えてたけど!
いざ、それが現実味を帯びてくると動揺するなぁ。
しかも可愛い姪っ子アニータもベアトリスと同じ歳だから、アベラルドとの仲人も本格的に…やらなきゃダメだよなぁ(o´Д`)=з


ベアトリスにしてもアニータにしても、まだまだ子供だと思ってたのに。
子供だと思ってたからこそ、やれ許嫁だやれお見合いだってはしゃげてたんだなぁ僕。
現実感がなかったんだ…


とはいえ仲人はやるからね!
うん、他の男に取られるのは癪だもの!
ボビーにアベラルド、そしてアイーダちゃんとフェランドくんのお見合いも本格的にやっていくからな!


その前にベアトリスの5歳のお祝いだ。
食卓の真ん中に大きなケーキを置いて、家族みんなでベアトリスを祝う。
家族の誰かが誕生日だと、子供たちがハッピーバースデーを歌うのが我が家の祝い方なので今日はジェニファーとヒューブが歌った。


だが…
ジェニファーは一体誰に似たのかというくらいの音痴だ。
しかも全く自覚がない。
ヒューブはまだ歌自体を覚えていないので、大きな声を張り上げるだけ。
今朝のハッピーバースデーは惨憺たる出来だった。


僕も妻も、歌は上手くも下手でもない。
ごく普通だ。
なのに子供たちはまさに個性的だ。
ベアトリスはとても歌が上手い。
まさに天使の歌声だ。
でもジェニファーはとてつもない調子っ外れだ。
ヒューブは未知数…ということにしておこう。
どういう遺伝の仕方をしたのだろうか…


まあそれはいいとして、朝食後にプレゼントとしてベアトリスに花束を渡す💐
5歳といえども女性だからね。
喜んでくれたようで良かった😊








本当はすぐにでもベアトリスと誕生日デートしたかったんだけど、29日は仕事納めだからね。
納剣式が終わるまでは、デートはお預け🥺


あ、そうか。
隊長だったサナさんがハンクさんの所へ行ったから、姉のジュリアが隊長代理やってるのか。
待て、だから僕が副隊長代理ってわけ?
ああ、副隊長なんて面倒なだけなんだけどなぁ。


でも…
サナさんとも約束したしなぁ。
来年はトーナメントで本気出してみようかな。
授業も評議会もほんと面倒なんだけど、そろそろ上に立ってもいい歳だよな。


なんてことを納剣式の間考えてて、国王のお言葉をさっぱり聞いてなかった。
ごめん、アンブローズ。
明日ご飯に誘うからさ。
それで許してよ。









納剣式が終わったので、ベアトリスをデートに誘おうとしたら先を越されて森の小道探索に誘われてしまった。
まあいい。
デートが終わったらこちらから誘おうと思ってたからね。
順番が逆になっただけさ!


探索はといえば、もちろん楽勝。
ベアトリスに全て任せたけど、森の小道の魔獣はベアトリスにとっては赤子の手をひねるより簡単だったようだ。
ちょっと…その…強くなりすぎたような気がしなくもない。
カレーを2年間食べ続けたからなぁ…










探索が終わったら、今度こそ酒場デートへと誘った。
毎年誕生日には酒場でデートしていたが、成人してしまってはそうそう父親とデートはしてくれなくなるだろうから、この誕生日酒場デートは今年で最後かもしれないなぁ。
少し憂鬱な気分になるが、今は今日を楽しもう。


トリスちゃん、誕生日おめでとう。

「ありがとう、パパ」

5歳になった気分はどう?

「そうね…、あと2日で成人するって思うとワクワクするわ」

ああ、その、成人したらやりたいこととかあるの?

「そうねぇ…、神殿で働いてみたいし、奏女とかいいかもね」

あ、ああ、でも…そんなに急がなくてもいいんじゃない?
ほら、奏女になったら神殿に住まなきゃならないしね?
トリスちゃんだって、家族と離れて暮らすのは寂しいだろ?

「そうねぇ…でもいずれは家を出てくんだし」

それは、確かにそうだけど。
“いずれ”は“いずれ”であって、ほら10歳くらいになって結婚する時とかさ。
それまでは家にいればいいじゃないか!

「10歳まで結婚させないつもり?」

パパが結婚したのは11歳だった。
別に遅すぎるってわけじゃないさ。

「まあ何歳でもいいけどさ。素敵な人と出会えたらね。それも成人後の楽しみよね」

ああ〜、それは別に急がなくてもいいんだけどね?

「パパ?わたしにボビーくん紹介してるの誰だっけ?」

それは…だから…

「“選択肢のひとつ”でしょ?必ずしもボビーくんを選ばなくてもいいけど、って前に言ってたもんね」

そう。
ただ、ボビーはパパが気に入ってる男の子ってだけだ。

「そうね、成人したら一緒に採取に行くのも悪くないかも。もちろん、他の男の子ともね?」

他の?

「だって、色んな人と仲良くなってみなきゃ、誰が運命の人なのか分からないじゃない?」

ああ、それはそうかもしれないけど…。
例えばさ、例えば成人式の翌日にボビーが告白してきたらどうするつもり?

「え?ああ、そういうこともあるかもしれないのかぁ…。それは…その時に考えるわ」

その時にって…

「少なくともボビーくんが告白してきたら、パパよりは勇気のある人ってことだもんね」

何故そうなる!

「だって、パパの場合はママから告白されたんでしょ?」

そ、それは!
あのね、パパだって告白するつもりだったの!
成人したら採取に誘ったり探索に誘ったりして、それから告白しようと思ってたのに、まさかママが成人式翌日に告白してくるとは思わなかったんだよ!

「ママってば、情熱的ね」

まあママ的にはさ、僕が、パパがモテるから早く告白しなきゃって焦ってたみたいなんだけどねぇ〜。

「ああ、わたしの王子様って誰なんだろう?」

え?スルーなの?
パパのモテエピソード聞かなくていいの?

「向こうからやってくるのを待つだけなんて性にあわないから、わたしの方からも積極的に探しに行かなきゃ!」

いや、別に積極的になる必要はないと思うってか、パパのモテエピソード聞きたくない?

「やっぱりわたしよりも強い人がいいのよねぇ〜。となると、武術職の人かしら?」

え?いや、トリスちゃんより強い恋人のいない男の子なんて、この国にはいないんじゃないかなぁ。
武術職の人なんて大抵既婚者だよ?

「そうなの〜?」

それに、ボビーだって十分強いと思うけど。

「まあ、同級生の中だったらボビーくんとアベラルドくんが強いよねぇ。ま、わたしの方が強いけど」

だから、自分と比べちゃダメよ。

「あ、ねえパパ。今度また水没連れてってよ!わたしそろそろ10層までは余裕で行ける気がするんだよね」

いいけどさぁ。
もう鍛えなくてもいいんじゃない?
武術職に就きたいならまだしも、神職やりたいんでしょ?

「パパがそれ言う?わたしを鍛えるためにカレー食べさせ続けたんでしょ?」

そうなんだけど、まさか2年も食べ続けるとは思わなかったし。

「いやいや、パパからの“食べろ”って圧が凄かったから」

そんな圧はかけてないよ!

「かけてますぅー。今もヒューブくんに圧かけてますからぁ」

いや、仮にかけてたとしても2年はさぁ…
ジェニーちゃんは1年で止めたよ?

「あの子は飽きっぽいから」

1年も食べ続けたにもかかわらず、飽きっぽいって…

「そういえばさぁパパ。今年は花束だけなの?プレゼント」

ん?

「いや、嬉しいんだよ。特に花束なんてさ。ロマンティックじゃない?でも、去年は花束だけじゃなかった気がするんだけど」

うん、用意してあるよ?

「ほんと?!」

朝に花束渡したけど、それは朝食後すぐに酒場デート出来ないからでね。
ちゃんと酒場デートの後に渡す用のプレゼントだって用意してあるんだよ。

「さすがパパ。そういマメなとこだけは凄いって思うわぁ」

…ん?
今、“だけ”っつった?
マメなとこ“だけ”はっつった?
他にも凄いとこあるよね?
これでもパパ龍騎士なんだけど?!

「それで?もうひとつのプレゼントってなんなの?」

無視ですか?
スルーですか?
そういうとこママに似てきたね!
はいどうぞ、人魚の絵本です!

「…ありがとう」

え?なんか喜んでなくない?

「そんなことないよ、嬉しいよ?」

ほんとに?

「ほんとほんと、あの〜、この話好きだし」

まあ子供っぽいって思うかもしれないけどさ、子供でいてくれるの今年が最後だからさ。
来年からはちゃんと大人用のプレゼント用意するつもりだし。
だから、子供でいるうちは子供っぽいっプレゼント渡したかったんだよ。

「パパ…。確かにもうすぐ大人になるけどさ。でも、わたしは幾つになったってパパの娘なんだから、そんな寂しそうな顔しないで?」


ベアトリスの方こそ寂しそうな顔して、テーブルに乗せていた僕の手をポンポンと優しく叩いてきた。
僕がその手をギュッと握ると、ベアトリスはふんわりと微笑んだ。


2日後に成人する愛娘は、いつの間にか対等に話せる子になっていて、子供の成長の速さには目を見張るものがある。
去年の同じ日は、確かまだ子ども子どもしてたような気がする。
元々おませな子ではあったけれど、この1年でグッと大人っぽくなってきたのだなぁと、嬉しいような寂しいような…

いつまでも子供のままでいて欲しいという感情と、早く大人になって色んな姿を見せて欲しいという感情は、同じくらいの割合で僕の中にあって、その相反する感情に整理をつけるのはとても難しい。
親である限り、ずっと抱えていく感情のような気もしている。


ベアトリスが成人したら、もっと色んな感情が湧いてくるのだろうと思う。
それでも、娘は日々成長していく。
待ってはくれないのだ。
ならば、僕も親として成長していくしかないのだろう。


ベアトリスが成人するということは、僕も“親として”成人を迎えるということだ。
ベアトリスがいつの間にかどんどん大人に近づいていっているように、僕ももっとしっかりしなければ!


とりあえず、親として尊敬して貰えるように、面倒くさいなんて言ってないで、真剣に近衛騎士隊長になることを検討してみようwww



















あ、これはオマケなんだけど、何度「大きくなったら何になりたい?」と聞いても「龍騎士!」と答えてた息子が、この日は「王様」と答えた。
…うん、龍騎士目指そうか?