クナッパーツブッシュのマイスタージンガー |  ヒマジンノ国

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ハンス・クナッパーツブッシュによる「ニュルンベルグのマイスタージンガー」全曲(1950)。
 
LXT2659-2664。
 
 
ハンス・クナッパーツブッシュがスタジオ・レコーディングで残したワーグナーのオペラ全曲はこれ1曲のみです。ワーグナーの大家である彼は、スタジオ録音を好みませんでした。
 
ところが、この録音はあまり評判が良くないですかね。しかし自分は「マイスタージンガー」をこの録音で覚えた、感慨深い録音です。これをアナログ盤で聴けるという嬉しさは何物にも代えられません。
 
 
↑、愛聴したCDです。英国製のCD。これもかなり面白い音がします。カルショーなどが関わったといわれている録音で、モノラル録音ながら、デッカ特有の重い金属を思わせる質感と、明確で透明感ある音の感触が魅力です。
 
デッカの名録音がクナッパーツブッシュ独特の、濃厚でマスな質感の音響を、これでもかと捉えています。特にLPの方は音のコクと、響きの有機的な雰囲気が増しており、素晴らしいです。
 
自分の所持しているのはバラ6枚組(全12面!)。別のバージョンで集めると7枚組になりますが、自分のは6枚組です。
 
クナッパーツブッシュのマイスタージンガーは、トスカニーニのような溌溂としたテンポではなく、音楽の中に沈滞し進行する指揮ぶりで、聴き手はワーグナーの音楽の中にどっぷりとつかっていきます。
 
楽曲は、前奏曲からノンストップで教会の合唱につながっていきますが、味の濃い瑞々しい展開などクナッパーツブッシュならではです。
 
音楽なのに香りの話を書くのは妙なのかもしれませんが、このマイスタージンガーは音楽内に馥郁と香る魅力があり、そこここからニュルンベルグ市の情景が花の香りのように漂ってきます。
 
クナッパーツブッシュはその様子を細部まで沈滞しつつ、じっくりと描き込んでいきます。ワーグナーの思い入れあるこの指揮者ならではの表現です。今後こういう表現をする人はもう出ないでしょう。
 
ザックスを歌う特徴的なパウル・シェフラーなどは現代では聴けぬ声質、クナッパーツブッシュの指揮と相まって、ドイツの伝統的な雰囲気を醸し出していきます。
 
デッカに録音されたクナッパーツブッシュの魅力的な音にノック・アウトされる音源です。
 

 
↑、最終幕で、主人公ヴァルターが歌う、「朝は薔薇色に輝きて」の初めの部分。楽劇全体に融けこんでいる、美しい歌です(ノイズあります)。
 
 
 
↑、4時間以上になる、超巨大な音楽の終結部です。賢人ハンス・ザックスがニュルンベルグ市に起きたひと悶着を、丸く収めて終わります。
 
「神聖ローマ帝国はもやの如く消え去り、聖なるドイツの芸術が、われらの手に残るでしょう!」
 
と歌う、永遠なるドイツ芸術の賛歌であり、記念碑的な作品です。この音楽は、当時のドイツ国民の心の支えでしたが、後にナチス・ドイツの、ゲッベルスが悪用したのでした。