ロシアのヴァイオリニスト |  ヒマジンノ国

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ダヴィド・オイストラフによる、ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」(1958)。
 
SAXO2315。
 
 
ロシアと書きましたけど、旧ソヴィエトといった方が良いでしょうか。冷戦時、鉄のカーテンの向こう側の演奏家たちが西側諸国に次々に現れた時、資本主義の人々は、彼らの卓越した表現力に驚き、歓喜しました。
 
エミール・ギレリス、エフゲニー・ムラヴィンスキー、ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ、スヴャトスラフ・リヒテルなどの演奏家たちは、西側の人々に驚きを持って迎えられました。
 
ダヴィド・オイストラフ(1908-1974)にしても存命中から、その安定した表現力とスケールの大きさで、20世紀の偉大なヴァイオリニストの1人と目されていました。突飛な表現をしない、楷書風の演奏をする人で、ソヴィエト時代、ロシア最大のヴァイオリニストであったことは論を待たないでしょう。
 
 
↑、録音が残っているヴァイオリニストで、最も偉大といわれるのはフリッツ・クライスラーかも知れません。後にハイフェッツが現れて、世界は新たな時代を迎えました。そのハイフェッツ以後、世評で1番偉大だと思われているのが、このダビィデ王こと、ダビィッド・オイストラフでしょうか。
 
彼らは鉄のカーテンの向こう側で、資本主義の世界から隔離され、独自の成長を遂げ、確実な技術と堅固な精神性を備えていました。
 
彼らの演奏が、そう簡単には崩れやゆるみを見せていないのは、暗い共産主義の中、芸術家にとっては大変に厳しい環境で育ってきたからなのかもしれません。
 
オイストラフのヴァイオリンは、強い気持ちによる表現(テンペラメント)や、即興性などは少なく、人によっては面白みがないという人もいます。しかし、常に安定した表現をするので、万人には受け入れやすいヴァイオリニストともいえるかと思います。
 
1958年に録音されたクリュイタンスとの共演盤は、昔から名盤といわれているもので、UKのSAXオリジナルは非常に高価です。
 
自分の所持しているのは、そのオーストラリア盤です。価格的にはUK盤の10分の1から5分の1ぐらいでしょうか。この演奏の、UK盤を聴いたことがないので、はっきりとはいえませんが、他に聴いたUK・SAX盤と比べると、オーストラリアSAXO盤はやや音が固い気がします。少し豊かさに欠けるかもしれません。
 
ただ音は悪いともいえないと思います。SAX特有の爽やかな透明感は健在で、オイストラフのヴァイオリンも美しく響くと思います。
 
べ―トーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、時折ヴァイオリンの線が細く感じる場面がある曲で、ヴァイオリニストによってはやや聴いていて不安になる時もありますが、さすがにオイストラフは安定した技術で弾き切っています。
 
 
 
↑、クリュイタンスの豊かで実りあるサポートに支えられて、オイストラフはいつも通りの安定した演奏をしています。破綻がなく、曲調をくっきり表現していきます。ヴァイオリンの音色は豊満な色彩を発揮します。
 
そこに落ち着いたヒューマンな演奏家の魅力が加わっています。
 
割と重厚な演奏ともいえますが、「魔法のSAX盤」(青銀)レコードによって清澄な雰囲気を留めています。まさにベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲にふさわしい音色です。何度でも聴きたくなります。
 
 
ナタン・ミルシテインによるチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」(1972)。
 
2530 359。
 
 
オイストラフがソヴィエトの文化大使のような役割を担ったのに対して、ミルシテインはロシア出身ながら、一度西側に出ると生涯故郷には戻らず、米国などで卓抜したヴィルトオーゾとして活躍しました。
 
オイストラフに比べると完璧な技術を誇っているのは変わりないですが、ナタン・ミルシテイン(1903-1992)の方がずっと洒落ており、美意識も強いように思われます。柔軟で、自然な表現が破綻のない技術によって支えられている、非常に優秀な演奏家といえます。
 
詩的で貴族的な歌いまわしが、卓抜した技術と重なり合った稀有な存在です。
 
 
↑、メンデルスゾーンとの組み合わせの有名な音源です。この演奏で、世評が高いのはメンデルスゾーンの方だと思います。個人的にはチャイコフスキーの方に惹かれるものがあります。
 
ミルシテインのしなやかで無駄のない、自然な歌いまわし、そこから引き出される洗練された美しい感情、聴いていて「聴き惚れる」という感じです。グラモフォンの音質も優秀です。