E・クライバーによる「フィガロの結婚」(1955)。
SXL2087-2090。ドイツ初版。
歴史的なレコードなので、詳しい説明はいりませんかね。モーツアルトの傑作オペラ「フィガロの結婚」の、歴史的名盤。デッカが商業用ステレオ録音に乗り出した時の、本当に初期のものです。優秀録音。
正直、自分はUK盤に比べてもこちらの方がデザインは好きです。淡い水色とピンク色の色合いで、品の良いセンスが大変に素晴らしい。
UK盤ほどではないですが、貴重盤です。あまり気楽にレコード棚から出せません(汗)。レコードは次の世代に伝える必要があるんですね。公共の財産といっていい代物ですので、取り扱いに気を付けないとな~・・・などと考えてしまいます。
ちょっとだけ複雑な気持ちです。
ドイツの名指揮者、E・クライバーの唯一のステレオ録音であり、ウィーン風のフィガロとして、もうこれ以上の録音は出ないと思われます。モノラルですが、E・クライバーのオペラ録音として「薔薇の騎士」と双璧です。
「フィガロの結婚」はカラフルな色味が出る音楽ですが、ここではほとんど地味ともいえる色調で通しています。しかしウィーン・フィルがE・クライバーによって、とてもしなやかにドライヴされ、音楽の角が一切立ちません。音楽の内面に宿るのは、繊細な感性と独特の親密さ。まるでクリーム状に溶かされているようなオーケストラの響きは、これをウィーン風といわずして何といえば良いのでしょうか?
そういう意味では非常にローカルな演奏ですが、それが魅力です。
最近の演奏に見られるようなギラギラしたところが一切なく、無理なく流れる美しさはちょっと他では味わえません。人間の営みによる美しい音楽です。表現そのものに溺れなくとも、こういう雰囲気が出る、ということ。時代が違いますね。
E・クライバーの演奏としても、モノラルではここまでとろけるようなオーケストラの音は出てないですね。ステレオであってこそ、と思わせる録音です。
↑、モーツアルトのオペラを得意としたチェーザレ・シエピ(1923-2010)声域はバスなんですが、しんねりむっつりせず、軽めに歌えるので、フィガロやドン・ジョバンニに定評があります。
演者もチェーザレ・シエピに加え、当時の名歌手、特に女性陣が揃います。ギューデンとデラ・カーザ以上のものはあり得ないキャスト。こういう人たちももう揃いません。
↑、リーザ・デラ・カーザ(1919-2012)。お嬢風の役といえばシュワルツコップかこのデラ・カーザ。
CDでもそれなりのものが味わえる録音だと思うのですが、レコードであればより、まろやかさが増します。ところどころ溜息の出るような美しさを堪能できます。
うーん贅沢。
↑、第3幕、デラ・カーザの歌う伯爵夫人のアリア。抜けきった甘美な美しさ。心の余裕がなければこういった品の良さは出ないと思います。いつも表情豊かなギューデン、シエピも格調高く歌い上げていて、最高です。
これを手に入れる前はドイツで作られたUK盤そっくりな、重量復刻版(UK盤と同じマトリックス番号で、1990年代につくられた)を聴いていましたが楽器のソロの部分など、音がにじんで仕方なかったです。オリジナルは復刻版ほどの音の厚みはないですが、無駄のない音で実に素晴らしいです。
エリカ・モリ―二とアルトゥール・ロジンスキーによる「ブラームスのヴァイオリン・コンチェルト」(1956)。
WST14037。
エリカ・モリ―二(1904-1995)のレコードを1枚だけ所有しています。ナポレオン王妃の王冠をあしらった、このジャケットのものです(モリーニは生前ボウイングのプリンセスといわれた)。
ウィキペディアにはウィーン生まれとしてありますが、おそらくはオーストリア=ハンガリー帝国領のトリエステ(現イタリア領)で生まれたようです。音楽教育の方はウィーンで受けました。1916年にウィーンでデビュー。ナチスがオーストリアを併合後は米国に移住し、市民権を得ました。
演奏スタイルは完全に旧時代に属していて、こちらも音楽の角が立たないヨーロッパの古風なスタイル。ウィーンのエレガンスとも形容される、たおやかで懐かしい味わいのある演奏です。一般には、20世紀のメイン路線じゃないので中々聴かれませんけどね。忘れられている感じですね。
しみじみしていますが、心落ち着く名演なんですよね。心温まります。
↑、もったいぶらない、ロジンスキーの堂々とした伴奏も素晴らしいです。ロマン派、古典派の音楽は機能性を追求した最近の演奏よりも、演奏家の「心の声」を大事にした、昔の演奏の方が好みです。ノイズがバチバチします・・・申し訳ないです(;^ω^)。






