日本を追い込む五つの罠 |  ヒマジンノ国

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長谷磨憲くんち


カレル・ヴァン・ウォルフレン著「日本を追い込む五つの罠」。井上実、訳。角川書店。

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オランダ生まれのジャーナリストによる現在の日本に対する批評と警告の書。

新書なので簡単な本だが、なかなか面白かった。


テーマは政治と経済に対するものでアメリカやユーロの現状と行く末を眺めながら、日本がとるべきであろう態度を五つの項目から考察する。


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日本人がこういう本を書けば日本人特有の、閉鎖的な見方で日本国内の事情ばかり並べ立てることが多いが、本書はアメリカ、ユーロ、日本という三極面から全体を眺めているので分かりやすかった。


またこの人物はよく日本のことを観察していて外国人が書いたにも関わらず決して奇異な印象はなく理解しやすいものだったことにも驚いた。


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確かに現状の世界の政治と経済は先行きが暗く、暗澹としている。


市場経済が発達しすぎたせいで、大企業や銀行などの力が単一の国家より増しつつある今、世界は放っておけばどんどんその方向へと加速していくだろうと思う。


そのためにはどうしても既成権力への理解が必要だが、日本人はこういうことに対して特に盲目だという。


著者はこの本の最後の章で日本人について次のように述べている。


「日本が警戒を怠りがちなのは、ひとつには人々が無関心であるためだ。世界情勢の変化に対して無関心であるのにとどまらず、日本人の無関心さはさまざまな領域にまでおよんでいるようだ。」


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著者は今回のユーロ危機は、実は銀行の無責任な貸付を国家の失敗という形に責任転換することによって起こったといい、マスコミが単純に報道しているものとは内容が違うという。


またもう一方の雄、アメリカでは軍産複合体の権力が強くなりすぎ、かつての日本軍のようにやや暴走気味になっていることも述べている。

そして彼は日本の電力10社についても次のようにいう。


「彼らを上回る既得権者はアメリカの軍産複合体を除いては、世界に類を見ない。」


その外、この人物はTPPにひそむアメリカの思惑などを描きながら、日本のとるべき道筋について何とかヒントを与えようとしているように思える。


多分かなり日本に対して思いがある人物なのだろう。


アメリカ、ユーロを中心とする世界が疲弊していく中で著者は現状、日本はまだましだといい対策次第では間に合うといっている。

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大方、日本では単純な経済指南の書ではなかなか物事の本質が分からず、他方、だからといって安易に物事を見極めようとしてトンデモ本に走れば、その著者のあまりの思い込みの激しさにうんざりする。


この本の描く権力に対する描写の内容は、考えてみれば日本だと「トンデモ本」みたいな扱いをされそうな感じさえするものだと思う。


なぜならそれは権力や経済の裏にひそむ陰謀を思いおこさせるものがあるからだ。


それは俗にいう「陰謀論」というものだ。


しかしよくよく考えてみればあらゆる権力が陰謀を持つことは何も珍しいことではないし、そこから経済や政治を描き出すことは何らおかしいことではない。


実際、この本はトンデモ本でもなんでもないし、色々検証すべきことはあるかもしれないが、かなりの程度まで真実を書いていると思う。


こうした本は「書き手の質」が問題なのであって、書き手次第ではちゃんとした本になるのだと今回改めて実感した。