ドストエフスキーの「白痴」。木村浩訳、新潮文庫。
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19世紀ロシアの作家、ドストエフスキーの長編小説。
あの有名な「罪と罰」の後に取り掛かった長編小説で、シベリアのオムスク監獄から帰ってきた後に書かれた、5大長編の中では第二作目に当たる。
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学生時代、僕はトルストイやこのドストエフスキーの小説を貪る様に読んだ事がある。
トルストイの誠実で真実を冷静に見つめる能力、そしてドストエフスキーの人間性に対する熱心で深い洞察・・・は沢山の小説家の中でも特別だと思う。
特にドストエフスキーの小説にあるのは「人間らしさ」とは何かと言う難しいテーマに対する一定の答え、と言っても良いと思う。
人を内面から説得するような彼の小説と彼の存在は、まさに純文学に対する確かな存在理由と言得るものがあると、僕は言いたい。
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「白痴」は「罪と罰」や「悪霊」、「カラマーゾフの兄弟」と比べるとやや哲学的要素が薄く、情緒的で詩的な要素が多いと感じられる。
それもそのはずで、彼はこの小説の中で描こうとしたのは、本人曰く「無条件に美しい人」と言うもの。だからこそ、そこにはあまり理屈が前面に出てくる余地がないのだろう。
さらに、彼は続けて「この世にただ一人無条件に美しい人がいる。・・・それはキリストである。」とも語っており、事実それはこの小説の主人公ムイシュキンに具現化される。
ムイシュキンの持つ純朴で敵愾心のない同情心に溢れた性格と不貞の女にならざるを得なかった、ナスターシャに対する愛・・・等はキリストを想像させるものがあるのは確かだ。
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やはり、ドストエフスキーを読んだことがない人は「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」等の主要な作品をまず読むべきだろう。
だが、「白痴」もまたそれらの作品に負けない魅力があり、彼の主要な著作を読む気があるなら一度はトライするべきだと思う。
