おらが村、新国立劇場でプルミエのオネーギンを観てきました。
 
とても面白かったのでおもいつくままに
ナチュラルに演出のネタバレします。
 
タチヤーナのムラーヴェワすばらしいです。
出てきた瞬間から輝いてる容姿、ふくよかでよく伸びる声です。
 
 
前半がタチヤーナの誕生会で決闘を申し込むとこまで、
休憩後、後半が決闘の場面から。
 
前半終わってこれは良さそうだぞと。

表現せよと指導されるあまり(推測)、品のないかしましいおばさん化したオリガ、

を愛さねばならない可哀想なレンスキー、

突然の突風にTMレボリューション化するタチアーナ(濃い演出)。

よく群舞にあんだけ演技つけたー。

だから異邦人のオネーギン。

レンスキーを殺すのは誰?

足し算しかない余白なんかないぐいぐい進むロシアを見せつける前半ここまで好プロダクション。

 

 

 
全編タチヤーナがハートのある優しい良き人物として描かれたのが好印象。
タチヤーナとオネーギンは変人なのではなく、
あくまで周りのみんなからみたら変人という位置付け。
田舎のタチヤーナパーティの場も
サンクトペテルブルクの社交界の場も(オネーギンに聞き手のご婦人がいる!)
その他大勢の慇懃無礼な様子が、美しく醜悪で、とてもうまい描き方。
対立点と共通点を繰り返し、エッセンスを散りばめていく、
んまーー本当によく作られてて隙がない。
それを見た目もお歌も役どころも完璧に美味しい
グレーミン公爵が大きな情熱で綺麗に回収していく素晴らしいプロダクション100点!
そのタチヤーナとオネーギンの別れ!いいぞいいぞ!
オネーギンはここで幕切れに爆発だーのがっつりのスタミナ。
 
音楽とプロダクションの一致がすごいの。美しい。そして極まっている。
チャイコがきっとこうしたくてかいたんだ…と思ってしまうほどにすごい。
 
特に3幕の手紙の場面が震えたわねー。
オネーギンが…タチヤーナと同じ旋律で、
同じテンションでお手紙を書いたんだ…!
わーーーーーこれだ!決定!
 
細部もリアリティあって、レンスキーが決闘の前に書いたお手紙燃やして
一瞬手を温めるマイムにぐっと来てしまう雪のおロシア。
 
そうそうレンスキーを思うタチヤーナにもぐっとくるんです。
本来ならこの2人が分かりあう恋仲になっていてもおかしくない。
レンスキーを殺したのは、2人を決闘まで追い込んでしまったのは、慇懃無礼で噂好きのひとたち。
 

フランス人(トリケ→ひどい酔っ払いでタチヤーナの名前も覚えていない)を

ああ扱う素晴らしいチャレンジ。そこへ持ってくんだ!傍若無人で無関心なフランス人。

これをロシア人が作ってるというのがまったくもって素晴らしい。

 

オネーギンは決闘の場で高笑いするんですわ。

若気の至りがすごい。いやすごい。

からかったら大変なことになってしまった。

(演出家談:チャイコフスキーもなんとか決闘を避けようとして、

オネーギンを遅刻させたりしている…!

…諌める正しい年長者がいない悲劇だったんだな。)

 

オリガは妹という位置付けよりも、いわゆる想像する林家パー〇のよう。

品のないオバちゃん。芝居の引き出しがなくてうまく表現が乗らないなら、

演出家的にはどちらかといえばそれでゴーだったからゴーしたんだな。

タチヤーナの部屋の外から盗み見、部屋に入って手紙の書き損じを盗み見、

野次馬的に現れる決闘の場に納得。向こう側のひと。

 

なんだかけっこう全員とは言わなけど

ステージの傷になりがちいつも通り日本人ソリスト陣が、まーそんな傷もあるさー、

おっきい歌劇場でもそういうことってあるわよねー

って大きなきもちになるくらいの素晴らしいプロダクション。

冒頭の重唱で、あぁ今シーズンも…と暗澹たる気持ちになってしまったのは正直なところ。

 
毎回舞台の人物になっているのかあなたたちは?という合唱団もはにかみながら頑張った。
そりゃ芝居は下手だ。
イモ洗いだ。だけどイモ洗いに演劇的な心が入った。
ストップモーションもっとうまくやってよーとおもいつつも、ストップモーションは好きとおもえた。
だからいつになく頑張ってた。
 
 

日本でこんなにワクワクしながらオペラみたのって

いつ以来かわかんないレベルでワクワクが止まらないオネーギンだった。

日本でオペラ公演もっかいみたいなんて、ほんとうに久しぶりに思った。

 

おらが村にはここんとこ、不甲斐ないプルミエを幾度となく見せられ、

シーズン初日から幾度となくすでに終わってしまっていたんですが、今年のオネーギンは違ったということ。

 

ロシアの知性と情熱をこんな極東、日本で生きた舞台にして、
ハートを客席に届けてくれた演出家、制作チームが本当にブラボー。

面白かった。

ドミトリーベルトマンありがとう。

ヘリコンオペラにオレは行く。

 

 

新国立劇場オペラパレス 2019年10月1日 1階11列