20 主人と主人の母主人はその頃、日本橋でJAPANシアターという舞台中だった。近くのホテルで、昼夜の舞台の合間に会うことになった。「お母様にはなんて言ったらよいだろう。。。」1年半前に父團十郎を亡くしたばかりの母に、とてもでないけど、今度は私が癌だなんて言えないと思った。主人が電話をかけたら、主人の母は「私がなればよかったのに。。。!」と言った。その言葉のなかには、父を亡くした母の寂しさ、哀しさが同時に凝縮されているようで、涙が止まらなかった。